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【勉強になる世界史映画】自由闊達な姿が美しい「宋家の三姉妹」
ワンポイント特徴
毛沢東が「一人は金と、一人は権力と、一人は国家と結婚した(一個愛錢、一個愛權、一個愛國)」と表現した、中国近代史の鍵となる三姉妹の物語
激動の中国政治の中でも三姉妹の堂々ととした生き様がスカッとする
話が進めば進むほど三姉妹が可愛く美しく思えてくる
歴史的事実は細かく説明されず、テンポよく物語を楽しめる、歴史を知っているとより楽しめる
あらすじ
新しい時代を見た3人の女性がいた。今世紀初頭の中国で、古い因習にとらわれずに育てられた宋家の三姉妹。アメリカ留学から帰国した彼女たちは、それぞれに全く異なるパートナーを選んだ。時代の奔流は、強い絆で結ばれた三姉妹を、国をも引き裂いてゆく……。辛亥革命、西安事件、日中戦争、国共内戦…彼女たちは愛し、傷つき、苛酷なまでの運命に翻弄されながらも、中国の激動期を、自ら偽ることなく、ひたむきに生きた。
時代の背景・内容
① 浙江財閥
主人公となっているのは、上海租界(外国人の居留が許された治外法権の地)で外国商人との取り引きを行って巨富を得た浙江財閥のひとり、宋子文の三人の娘たちです。
高校世界史での浙江財閥(宋氏)は、蔣介石と上海クーデターのあたりで登場しますが、宋家の長女靄齢は同財閥の孔祥煕、次女慶齢は孫文、三女美齢は蔣介石と結婚し、蔣介石が歴史の中心に現れるより前から辛亥革命や内線に関わっていました。映画の冒頭から宋子文が孫文を支援し、幼い三姉妹とも交流する様子が描かれています。
② 孫文の時代
清王朝を目指して辛亥革命が起こった際、清の実力者袁世凱が臨時大総統の地位と引き換えに宣統帝退位を実現しました。しかし、袁世凱はその後孫文たちの理想から離れて独裁を展開し、孫文たち(国民党員)は日本に亡命しています。袁世凱の死後は、軍閥と呼ばれる軍事集団たちが政権獲得を目指して対立し、国が安定しませんでした(軍閥政府)。そこで孫文はソ連の援助を受ける共産党と手を組み、軍閥共産党員はその資格を持ったまま国民党に入れることになりました(第一次国共合作)。
③ 蔣介石の時代
孫文の死後、国民党は「国民政府」として「軍閥政府」打倒を目指した戦いを始めます(北伐)。この時軍の司令官となり、後に国民党のリーダーとなるのが蔣介石です。彼は北伐とともに激化した租界への立ち入りや労働運動やストライキが米英・資本家を刺激することを危険視し、上海で共産党排除に乗り出しました。ここで共産党員や労働組合指導者を襲撃し(上海クーデター)国共合作は崩れます。孫文の妻慶齢は蔣介石を激しく非難し、共産党と行動を共にするようになります。
その後、満州事変など日本の中国進出が顕著になってきますが、蔣介石は頑なに共産党との協力を拒みます。共産党も武力をもって弾圧に抵抗し、内戦状態でした。
しかし、1936年に張学良(軍閥の有力者で国民政府に北京を明け渡して撤退する最中日本軍に爆殺された張作霖の息子。父の死後、国民政府に従うことを表明した)が蔣介石を誘拐し、共産党との内戦をやめ、日本と戦うことを認めるよう迫ります(西安事件)。蔣介石の妻美齢や旧知の周恩来の説得もあり、蔣介石は抗日民族統一戦線の結成を受け入れました(第二次国共合作)。
④ 戦後
日本との戦争が終わると、国民党と共産党の内戦が再開されました。結果は周知のとおり、共産党が勝利し、中華人民共和国が成立します。一方国民党の人々は台湾に逃れ、中華民国として独立を宣言します。
私の感想
① 三姉妹が賢くチャーミング
写真とか映画の始まりはそこまで「超美人!」とは思わなかったのですが(もちろんきれいですけど)、物語が進むごとにどんどん一人一人の賢さや溌剌として物おじせずに発言したり論破したりする姿が魅力的に思えて、すごく美しく、かわいく感じました!
私は浙江財閥の三姉妹の結婚について、男性(父や夫)側が主導して娘たちが従った、と思っていたのですが、映画ではそれぞれ考えをもって結婚した様子が描かれていました。また、政治的な場面でも積極的に発言して影響力が大きかったこともわかり(映画は史実に基づいてつくられているようなので)、自分の認識を改めました。
② 歴史上の人物像が際立っている
それぞれ性格が際立っていてとてもよかったです!
印象的だったのは
孫文→革命の理想を実現しようとする、実直、誠実な人物
蔣介石→政治の才覚がある、打算的なところもありそう
という対比。また、三姉妹についても
長女靄齢→財閥婦人らしく、鷹揚としている
次女慶齢→孫文の遺志を受け継ぎ、清廉潔白な印象
三女美齢→末っ子らしくチャーミング、現実主義的
という印象を受けました。
それに伴って
長女夫婦→朗らか、裕福、「香港に行くわ」が象徴する自由を求める姿勢
次女夫婦→慎ましく、理想や理念を純粋に追い求めている
三女夫婦→ビジネスライク、政治的な議論もできるパートナー
という印象を受けました。三者三様で、それぞれ魅力的でした。
個性的な人たちが多く、考えも時にはハッキリ対立していたのですが、全く不快感なく見ることができました。こんなメタ発言はよくないかもしれませんが、皆さんの演技が上手なんだろうな、と思います。
③ レトロな衣装がかわいい
これは授業で見せた生徒に言われたことなのですが、私もそう思います。
特に3姉妹のそれぞれの結婚式の様子がよかったです。
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歴史を知っていると「あ!今あの出来事の場面だ!そう描くんだ!」と気持ちよくなることが多かったです。
単純に家族や姉妹の絆の物語としても面白かったし、まとまっていて余計な要素のない映画だったと思います。
ぜひたくさんの人に見てほしいです°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°
例のごとく長々書いてしまいましたが…
こんなところまで読んでいただいてありがとうございました(^^;)
歴史背景を書こうとすると長くなります…
あまり長くならないよう端折っている部分もあるのですが、
もし明らかに間違っているところなどあったら申し訳ないです。
その時は直します。