広島にPICUを作る #未来のためにできること
PICUというのはPediatric Intensive Care Unitの略で、小児専門の集中治療室のことである。
人工呼吸管理が必要であったり、片時も目を離すことができなかったりする重症の患者さんは、ICUでの濃密な治療と管理が必要になる。
多くの病院に成人の集中治療を行うICUがあるが、PICUがある病院は少ない。
小児と大人では治療や管理が大きく異なる。
かかりやすい疾患、侵襲に対する反応、代謝、ケアの方法も、使うデバイスも違う。十分なコミュニケーションがとりにくいことも多々ある。
そして小児は、成人と比較しても緊急疾患に罹患することが多い。
先天性の疾患などから突然の臓器血行障害を来たすこともあり、呼吸機能が成人より未熟であることから呼吸障害も重篤になりやすい。急性腹症と呼ばれる腹部疾患も多い。
そして外傷も非常に多く、小児の死亡原因の第一位は不慮の事故である。
このような小児を守るためには、小児救急に習熟したDrが専門性の高い施設で、多くの専門医と共に治療にあたる必要がある。
広島では2030年の開院に向け、新病院構想が進んでいる。
広島駅近隣に1000床の大病院を作って病院統合を行い、治療の集約化を行う。
その取り組みの1つが、PICUである。
僕は現在広島県の小児医療を担う一員として、母校である九州大学病院のPICUを県庁職員とともに視察させていただくなど、PICUの構築に関わっている。
僕は2012年に地元である広島に帰り、2024年現在まで小児外科医として勤務しているが、まだまだ広島では重症の小児に対して最高の治療ができているとは言い難い。
それぞれの病院に得意分野はあるが、そのぶん「この病院ではできないこと」が多い。
小児心臓の手術のため、小児の透析のため…。リスクを抱えて転院搬送が行われる。
重症の小児の初療から集中治療を一貫して行うことができる場所。
術後管理を含め、ありとあらゆる治療を“患児を移送させずに”行うことができる施設。
それこそがPICUである。
PICUがあれば便利…ではない。
小児に対する医療を高い水準で届けるため、失わなくていい子供の命を救うためにはPICUがなければダメなのだ。
少子化の時代だからこそ、病気の子ども達に最高の医療を届けたい。
そのための場所作り、人材育成、治療の高度化…。
したいこと、すべきことは山積している。