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「マルスの夢」 本多裕樹 詩

「マルスの夢」

さりあらば、時と月の宵闇に
星の流れる空の万象は私たちに何を教える
影の中に、華の咲き乱れる桜の花びらの舞う
土に消える池の中に、
どこまでも湿原の奥に沈んでいく
終わりまでも、終わりを知る
終わりに死んでいく
死は消えて、また天に登っていく
時の終わりまで、
死のくるまで
花は生きるものでなく、朽ちる者のために
あなたの、血潮を吹き出して盃を酌み交わし
血に染まる影をいつまでも求める

月の深まる世界、黄金の夜に私たちはいる
神殿に跪き祈り
時に知る限りのある夢
詩の言葉もなかなか出ない時
月を眺め夢想をもって草むらに漂う
静寂に虫の鳴き声をささやき
ありし日の夢に浸るのだ

火の月
水の月
世界に火がもたらされ、水によって清められる
どこにあるゆえに
狭間の先に見える光よ
私は勝てるのか
私はそのまま負けのままか
それとも不敗か
勝たないけど、負けない
それがいいだろう月よ、

勝ち目はあるのか
負けるのか
月の女神も知らない
ただ、勝負しなければ
勝ちも負けもない
何もしないのがいいのか
ただ、時を待って勝機を狙うのもありか
しかし、時は待ってくれないし
いずれ老いる
そして、死ぬ
何も狩りもしないまま
英雄伝説も作らないまま市井の人に終わる
ならば、戦記を作る者は
負けていくし、
運よく勝つこともある
戦ってこそ英雄というものだ
何もしないで
何も業績もないならば、
いくら時を待っても尊敬も無い
ただし、最後に勝つなら別だ
月の女神はそれを知らない
ただ、神々の戦いに参加した者は
その絵巻によって知られるだろう
負けようが
勝とうとも
その生きた勲があるならば
参加してこその絵巻なのだから

ただ、弱さもあるし、どうしよもない
だが、勝つことがすべてでもない
花と散るのもまた美というもので
懸命に生きた記録が人の心に響くものだ
敗戦の将もまた美を彩る
君は将たるか
私は将になれるか
ならなければならない
さあ、人生の戦いは始まっている
人生はまさに戦場である
いつまでも呑気に生きてもいられまい
狩場に行き
戦場に行く
そして、人生という場で戦うのだ
戦わねば将ではない
男では無い
戦って生き死にの賭けに出てこそ男子たる生き方だ
勝つも
負けるも
また、時の運である
運に賭けるのが男の生き様である
さあ、戦いは始まっている
夢を追いかけて勝負し花になるのであった

現代は男が男でいられず
女が女でいられない
男が男の機能を失った
時代がそうさせたのか
誰の所為でもない
現代は不運な時代だ
誰もが生き方を見失っている
新しい時代なんて無い
何も新しくはない
人が人として生きられず
お金が一つの宗教になっている堕落さに
私たちは迷い
だまされて
心を失ったのだ
野生性を失ってしまった

今は、女子の時代なのか
それも違う
桜を失ったのだ
人は花を失った
桜を失った
道を失った

人が人でなくなった
時代ゆえか
滅びゆく世界で

また、月を眺め
マルスを夢を見るならば
赤き星のように燃え立つ炎を燃やし
戦いが血潮を抱くなら
現代の病を乗り越えられよう

ただ、月の女神は眺め見ている

令和6年5月5日 本多裕樹 記

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