『笑ゥせぇるすまん』から学ぶ「マウントの心理」
幼少期から藤子不二雄先生が大好きで、A先生、F先生の作品を貪るように読んでいました。
子ども向けの作品を多数描いておられたおふたりですが、途中からA先生は路線変更をし、大人が楽しめるブラックユーモアを描かれるようになります。
A先生いわく「夜の街に繰り出し大人の遊びを覚えたら、だんだんと子供向け作品が描けなくなった」とのこと。
F先生も『異色短編集』という大変切れ味あるブラックユーモア集を出しておられますが、基本的に生涯に渡って子供向け作品を創作し続けました。
さて前置きが長くなりましたが、本日ご紹介するのは『笑ゥせぇるすまん』のシーズン1エピソード51 「見おろす男」。
子どものときTBSの『ギミア・ぶれいく』内で放送される『笑ゥせぇるすまん』のゾクゾクする感じが好きで、よく見ていましたが、大人になって鑑賞すると見え方がまた変わってくるので面白いですね。
「見おろす男」の主人公、宇和目和夫(うわめかずお)さんは、気弱なキャラで万物におびえて暮らしています。
家では奥さんの尻に敷かれ、会社では年下の上司に見下され、色々な人間からマウンティングし続けられる日々。
そこへ現れたのは、我らが喪黒福蔵。
宇和目さんのために、ビルの屋上を無料で用意しそこで暮らせるようにします。「高いところに住めば、下界を見下ろせるようになるので自信がつきますよ」と告げる喪黒。
今でいえば、タワマンの高層階に住むようなものですね。
宇和目さんの人格は一週間で激変。
堂々とした態度を身につけ、自分をねちねちいびっていた年下上司に「私はあなたの部下だが、年長者だ。くんづけは失礼だからやめていただきたい!」と言い放ちます。
それを見た同僚は「宇和目さんが、あの威張りんぼの上司を圧倒したぞ。スゲー!」と見直します。
宇和目さんの人相が、一気に悪相になっているのが興味深いですね。
抑圧されていた宇和目さんは、上司とのマウント対決で勝利したのです。
このあと、宇和目さんがどのようになったか興味がある方は、本編を見ていただくとして、さすがは人間の黒い部分を描かせると右に出る者がいない藤子不二雄A先生。
『笑ゥせぇるすまん』は、サラリーマンの悲哀を描いた作品が多く、当時から共感を集めていたのではないでしょうか。
最近ではなくなりましたが、HSP気質のせいか、僕はよく人からマウントされてきました。
HSP気質の人が、歪んだ自己愛の人から狙われやすい心理は、下記の一冊にまとめてあります。
さて自己愛の強い人は、繊細さんと呼ばれる人を見つける嗅覚に優れており、巧みに懐柔して支配下に置くことがよくあります。
年上部下である、宇和目さんに散々マウントする意地悪な上司ですが、「こういう人、たくさんいたな~」と思い返しました。
嗜虐性(サディズム)の強い人は、気弱な人のおどおどした様子を見ると、攻撃欲が刺激されてイジメたくなるのだとか。
こういうタイプの人は、攻撃しているときは強気ですが、他者からの反撃に弱く、虚を衝かれた途端「うっ…」となりやすいのです。
攻撃の大半は、不安からくる防御反応です。「やられる前にやれ」の心理で、人を攻撃してしまう人は驚くほど多いです。
藤子不二雄A先生は、「僕は幼少期にいじめられていました」と明かしていますが、クリエイターはこういう弱者や被害者ポジションの経験があると、人の暗部や心理を適格に掴みやすく、それは後に大きな強みになるはず。
子供時代は、怖いもの見たさで毎週鑑賞していた『笑ゥせぇるすまん』。
人間理解の一助になる作品が多数あるので、また時間があるときに、ちょいちょい見返してみようと思いました。