半年ぶりの投稿𓅮安城家の舞踏会(1947)
𓅮ご挨拶
ご無沙汰しております。皆様お元気でいらっしゃいますか。約半年ぶりの投稿です。ご返信やご連絡が出来ておらず、ごめんなさい。そして、いらしてくださりありがとうございます。ずっと書きたかったですし、書くことで元気が増します。中々投稿出来ないでいましたので、いつもの「後日、加筆修正します」パターンで投稿させていただきますね💧
【1】『安城家の舞踏会』(1947)
昨年の春より地味に続けている、日本映画の感想シリーズです。今回はネタバレを含みます。
昭和22年9月に公開された吉村公三郎監督の『安城家の舞踏會』は、没落華族の物語です。日本国憲法が施行されたのは昭和22年5月。まさに華族制度が廃止された年の作品なのですね。作中にも「新憲法では華族というものが消えてしまったじゃありませんか」という長女の台詞がみられます。
安城家は長男が森雅之、長女が|逢初夢子《あいぞめゆめこ》、次女が原節子という豪華キャスティングでございます。
お父さま役の滝沢修は明治39年生まれ、逢初夢子は大正4年生まれ、原節子が大正9年生まれ。そして森雅之の婚約者役の津島恵子が大正15年(12月25日から昭和元年)生まれです。明治大正生まれの役者さんがご活躍されている時代で、撮影・上映があった昭和22年は戦後2年という激動の年です。
かつて『安城家の舞踏會』を初めて鑑賞した際、原節子さんが出来すぎているからなのか、どこか物語を解説していく語り手のように感じてしまい没入感が得られませんでした。原節子は若さも美貌もあり、細身な家族たちの中で最も健康的な肉体に見えるため「確かに彼女なら生きていけるだろうけれど」と共感しづらかったのかもしれません。自分にやれやれです。
しかし改めて時代背景を考慮して鑑賞しますと見どころが満載でした。多分、家族会議をした日と、舞踏会当日〜翌朝という、ごく限られた日が舞台です。原節子の衣装が2パターンのみです。
原節子演じる次女敦子の新しい考え方や振る舞いは、当時の庶民の方だけでなく元貴族の方にとっても、必要な役柄だったのでしょう。綺麗事というより、安城家の皆様は何だかんだありながらも生きていけそうな救いのある設定で、華族への未練は手放した方が本物の幸せを得られそうと思える程です。初見の感想を塗り替え、繰り返し鑑賞したくなる作品となりました。
【2】ドラスティック、メロドラマ
冒頭の家族会議で、長女が次女へ「あっちゃまには何もかも分かっているようで、分かっているのはただ理屈だけなの」という台詞をぶつけます。これには確かに共感出来ましたが、しかしあっちゃまの「理屈だけではない」温かな慮りやタフさこそが、当作品の魅力なのでした。
一方、逢初夢子演じる長女昭子の、気高くも不安定な美しさも、ドラマティックで見応えがあります。鏡に白いお酒を浴びせるなど、まるで一条ゆかり先生の漫画『プライド』に出て来そうなシーンです。
逢初夢子が31歳くらいの頃の作品ですが、出戻りの憂いを帯びながらも貴族然としている姿はもっと歳を重ねて見えます。彼女は桑野通子と檀れいを混ぜたような美貌で、この静止画より動いている方が断然魅力的です。
衣装にも注目です。愛染夢子のドレスは艶やか。カラーで見たかったですね。一方、露出は控えめながら、どこかギリシャ神話を思い起こさせるドレスを纏う原節子は女神さながら。髪型に関しては…個人的に現代のヘアアレンジの方が好みかもしれません。
学生時代に聞いた話ですが「昔、子がつく名前は、高貴な育ちの方だけだった。天皇家の女の子はずっと、○子」とのことでした。少し検索したところ(家にいて検索できる便利な時代ですね)、やはりそのような歴史はあったようです。ただし、子がつく名前のピークは1930年から1940年代だったそうで、年号でいうと昭和5年から昭和24年くらいです。この映画の時代には、○子さんが既に多くいらっしゃったのですね。とはいえ、逢初夢子という芸名はやけにロマンティックでゆめかわいいです。
叔母さまの名も、正子。叔母さまが安城家の明治時代の栄華を語り、ことに若い娘たちが頷きながら聴くシーンが好き。大切に育てられたであろう乙女たちの純真な眼差しと、歳を重ねた者も重宝される安心感。そんな世界に憧れ、羨ましいのかも。
でもそれも束の間で、特に中盤から後半にかけて、しっちゃかめっちゃかな展開を迎えます。
【3】革命のエチュード
それにしても、使う側と使われる側の格差がとてつもないですね。以前から書いていますが、ここまで身分の差があるものなのかと感覚を掴むまでに時間が掛かりました。この時代、身分について抜本的な改革が必要だったことが分かります。
さて長男は放蕩息子ですが、根は家族思いです。舞踏会の日、父親の肩書きを利用していた無慈悲な男(新川)への復讐を試みます。新川の愛娘である曜子を、庭の温室で襲おうとするのです。しかし長男を愛する女中が石で硝子を破り、その音や人影により、事なきを得ます。
それでもなお結婚をせがむ曜子に対し、長男は露骨に冷淡な態度を取りました。舞踏会の場に戻ると、長男は曜子から両頬を平手打ちをされてしまいますが、笑いながらショパンの『革命のエチュード』を弾き始めます。直球の選曲ですね。サイレントからトーキーに移行し、まだモノクロだった時代、楽器やクラシック音楽が大変効果的に使われているのも印象的です。
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まだまだ感想を加筆したい作品ですが、今夜投稿したいため尻切れのまま投稿します。お仕事は引き続きお休みをいただきますね。不在の間も繋がっていてくださり、ありがとうございます。皆様もご自愛くださいね( ◠‿◠ )ゆりお