【読んだ】グロースハック完全読本

ずっと読みたかった本がようやく読破できたので、学びになった部分をメモとしてまとめました。
カスタマーサクセスを担当している身としては6章以降の内容がかなり参考になったので、サービス開発に関わる人にはめちゃくちゃおすすめの本だと思います。
(⬇︎Reproの方のnoteもとても参考になりました🙇‍♂️)


1.グロースチームの結成

グロースチームに必要人員は以下のメンバー。
各部門からプロフェッショナルを集めて様々な角度から分析・仮説・実行ができるメンバーを揃えることが重要。
グロースリード
グロースチームのリーダー
プロダクトマネージャー
エンジニアリングとマーケティングの専門家を交えると施策のアイデアが豊富になる(企業やプロダクトによって必要なマーケティング知識の種類は変わる)
ソフトウェアエンジニア
プロダクトの機能開発や実験用のページ・機能実装を中心に行う。
エンジニアのいないグロースチームなどあり得ない(らしい)
マーケティングスペシャリスト
マーケのプロ。
データアナリスト
顧客と事業のさまざまなデータを収集・結合してユーザー行動への洞察を導き出し、実験結果を素早く整理して洞察に繋げる。
プロダクトデザイナー
(ソフトウェア開発の場合)ユーザーがソフトウェアと通じて体験する画面や操作をデザインする。

2.プロダクトの渇望度を測る

アハ・モーメント=プロダクトの有用性がユーザーに刺さる瞬間
Yelpの例:
サイトの目立たない箇所に置かれているローカルビジネスのレビュー機能を利用しているユーザーが多いことがわかった
→レビューを全面に押し出し、レビュー機能をユーザー体験の中心に据えた。

マストハブ・サーベイ
プロダクトが顧客に愛されているかどうかの指標になる。
Q:もし明日このプロダクトがなくなったらどのくらいがっかりしますか?
a:すごくがっかりする
b:少しがっかりする
c:がっかりしない(あまり役立っていない)
d:該当しない(すでに利用していない)

「a:すごくがっかりする」が4割以上なら、そのプロダクトはマストハブの域に達している。
※4割のハードルを超えるプロダクトは少ないため、なぜもっと良い反応が帰ってこないのか検証することが重要。
また、追加の質問をして次のアクションを見定めるのも重要。

Q1:このプロダクトが使えなくなったら、代わりに何を使いますか?
a:代わりに何か使うことはない
b:以下のものを使う(自由記述)
Q2:このプロダクトから得ている最大の恩恵は何ですか?
Q3:このプロダクトを誰かに薦めたことはありますか?
a:ない
b:ある(どういうプロダクトだと説明しましたか?)
Q4:このプロダクトから最も恩恵を受けられるのはどんな人だと思いますか?
Q5:このプロダクトのどこが改善されればニーズを満たせますか?
Q6:ご回答について追加質問のメールを送らせていただいてもよろしいでしょうか?

それぞれの質問の回答からみえてくるもの
Q1:競合の特定
Q2:追加で実装すべき機能を明らかにする(実装済みの場合は宣伝方法と検討)
Q3:口コミマーケの有効性を探る
Q4:注力すべき顧客層の明確化と潜在顧客へのアプローチ
Q5:普及を妨げている問題を突き止める

3.成長のレバーをつかむ

グロース方程式
ebayの例:
総取引数量の成長 = 出品中のセラー数 x 出品数 x バイヤー数 x 制約率

具体的指標を見つける際には、プロダクトのコアバリューを体験しているユーザー数と密接な相関関係にある行動を探ると良い。
facebookなら:
友達申請数やサイト訪問頻度、投稿数、コメント数、滞在時間など
uberなら:
乗車予約数、再訪、再予約数、乗車予約頻度など

4.高速で実験を繰り返す

グロースハックのプロセスをメインで紹介。
分析→アイデア生成→優先順位付け→実験 の4段階で実験を繰り返す。

ICEスコアシステム
影響度、自信度、簡単度の3つの観点から10点満点でスコアリングし、平均値で優先順位をつける。

影響度:
チームの重要指標がどれだけ改善されるか。どれほどの影響が見込まれるか。
自信度:
効果にどれだけ自身があるか。単なる憶測ではなく、データ分析や業界内でのベンチマーク、ケーススタディ、過去の実験などの経験的証拠に裏打ちされていなければならない。
簡単度:
実験にかかる時間と資源を測る尺度。この項目で実験の実現性をチェックする。

5.獲得をハックする

顧客獲得を本格化させる2つの「フィット」

ランゲージ・マーケット・フィット
プロダクトの利点の説明が顧客にうまく刺さっているか
チャネル・プロダクト・フィット
想定顧客にリーチするために選択したマーケティングチャネルがどれだけ効果的か

6.活性化をハックする

フリクション

UXデザインでは目的の行動を妨げるものを「フリクション」と呼ぶそうです。(例:記事を読んでいる途中の広告や文字認証で画像が歪み過ぎて判別できないなど)
プロダクトの価値を正しく伝えることができなけえれば、少しのフリクションでユーザーが離れてしまうため、いかにフリクションを低減するかが重要になります。

欲求  -  フリクション  =  コンバージョン率

この方程式はプロダクトを欲しい気持ちが強いほど、ユーザーは大きなフリクションをでも許容しようとする、ということを示しています。
ただ、プロダクトの魅力を高めることは難しいので、ほとんどのグロースチームはフリクションの削減に注力しているそうです。

フリクションのバランス
Airbnbのグロースチームの事例を用いて解説されていました。
実例を交えて説明されているのでかなり参考になりました。


分析でわかったこと(事実):
ほとんどのサイト訪問者は予約直前まで会員登録していないことがわかった。
仮説:
早い段階でユーザーを活性化させ、なんとなく部屋を見て回っている段階から基本情報と興味のありそうな旅行先と部屋がわかれば、いずれユーザーが本当に予約するつもりで検索した時に、より適切な結果を表示できる
→予約率もAirbnbの全体的な評価も高まるのではという仮説
施策:
画面下部の目立つ部分にユーザー登録の利点を掲載した。(ユーザーが無視して次のページにいっても別の勧誘文が掲載される)
結果:
登録率は上がったが、予約率は下がった。
→勧誘文のせいでフリクションが生まれ、検索から予約に至らないユーザーがいる可能性があった。
さらに分析:
登録ユーザーの増加によって紹介数が増えるなど良い傾向も見られた。
次の施策:
予約と登録のどちらも増やすべく、フリクションを低減する施策として
勧誘文を表示するページの割合を調整した。
⬇︎
予約率へのマイナスの影響がみられなくなった 🎉🎉

6章は具体的な施策内容から分析、仮説をたてて実装することの重要性がよくわかる内容でした。

また、リテンションの実態を計測することが重要ですが、顧客維持率の測り方は企業・バービスによって異なるのも難しいところです。
以下のように提供するサービスによって測り方は異なるそうです。

例1:Yelpでレストランを探す頻度とZillowで不動産を探す頻度は異なる
例2:マットレスと靴でも買い換える頻度が異なる


行動(behavier)は条件が揃ったときに起きる
心理学者のB・J・フォッグが考案した行動モデル。(この本では携帯電話に着信があったときを例に以下のように説明しています)

モチベーション(motivation)
発信者の名前が表示されているか / その人と話たい気分か / その人から情報をもらう必要があるか 等

実現性(ability)

携帯に着信があったが所有者が近くにいない / 手が塞がっていて対応できない 等

トリガー(trigger)

電話の着信音 等

携帯電話の利用の例でいうと、
着信音(トリガー)によって、モチベーションとアビリティが高まると電話に応対する(behavier)という流れ。
アプリなどのサービスでいうと「プッシュ通知」がトリガーになりうるが、配信をし過ぎても迷惑がられる可能性があるので要注意。
(自分のiPhoneはいろんなジャンルのアプリがかなりの数入っているのですが、頻繁にプッシュ通知が来るのでほとんどOFFにしています)

トリガーに関しては、この章の中で「ハマるしかけ」↓も紹介されていましたが、まだ読めてないので読んでみたいです。


<補足>
モバイルマーケティング分析企業のKahuna(カフナ)という会社が業界別のプッシュ通知の許可率を公開しているそうで、本の中ではグラフ付きで説明されていました。

最も許可率が高いのがライドシェア、次いで飲食や金融系サービス。最下位はニュース&メディアとソーシャルという結果でした。
(このデータと照らし合わせて自分のプッシュ通知の許可率を見てみるのもおもしろそう😎)

習慣化
以下のような状態まで生活の一部となっていれば習慣化されていると言える。

・ご飯を食べながらfacebookをチェックする
・帰宅中にインストグラムを投稿する
・友達とご飯に行くお店をYelpで探す

hook modelについては下の記事がわかりやすい。


7.維持(リテンション)をハックする

evernoteは利用期間が伸びるほど、使い続けるユーザー数が伸びる。
グラフの形状で見ると微笑んだ口元にみえることから「スマイルグラフ」と呼ばれる。
→これはストアドバリュー(蓄積価値)によるものでノートに保存している情報量が増えるほど、アクセス頻度も増加する傾向にある。
(成功しているデジタルプロダクトに多く共通している)

(他にもリテンションの計測やコホートの定義などの分析方法が紹介されていましたが、詳細は割愛)

8.収益化をハックする

顧客が求めるベネフィットの追求や価格の最適化について詳しく解説。
ビットトレンドが実際にユーザーに実施した施策
1(あまり欲しくない)〜7(とても欲しい)の7段階で新機能に関するアンケートを実施。結果、アンケートで最も支持を集めた新機能によって収益を大きく伸ばした。

価格の最適化
アンケートで顧客に受け入れられそうな価格を推定する。

・この製品の価格がいくら以上なら、高すぎて買う気が起こらなくなりますか?
・この製品の価格がいくらまで下がれば、高くても買う気になりますか?
・この製品の価格がいくらまで下がれば、とてもお買い得だと思いますか?
・この製品の価格がいくらまで下がれば、安すぎて品質が不安になりますか?

このアンケートの回答から適正価格の範囲を割り出すことができる。
以下、Price Intelligentlyの参考ページ。

価格の相対性
以下の著書でも紹介されている有名な実験を紹介。

雑誌の購読申し込みページにて、3プランをMITの学生100人に提示してどのプランを選ぶか質問したところ、以下のような結果になった。

・デジタルプラン:$59/年 →16人
・雑誌プラン:$125/年 →0人
・雑誌+デジタルプラン:$125/年 →84人

また、雑誌プランを除いた2つのプランで再度質問したところ、低価格のデジタルプラン($59/年)が68人に急増した。
→中位価格があると選択肢の価値を比較しやすいため、デジタルプランが実質無料というお得感から高価格なプランを選びたくなる。
中位価格のパッケージは「デコイ(おとり)パッケージ」とも呼ばれ、顧客をより高価なプロダクトに誘導する手段になっている。

まとめ

参考になることが多すぎてまとめるのが大変でした。
自分の職種がカスタマーサクセスというものあって、6章以降の獲得から活性化→維持の流れは実際にトライしてみたいものが多かったです。

また、普段自分が利用するサービス(uberとかairbnb)の具体的な施策例や成長の過程を知ることができたことも良かったです。

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