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人事としての自分と向き合う事になった結果、10年前に出会った『十二国記』に戻ってきた
こんにちは!人事図書館のアドベントカレンダー12/3はnekoyanagiが担当します。
昨日はおもちさんによる「休職と人事図書館とわたし」でしたね。休職にいたる判断に程よい距離感の第三者の意見を取り入れたというお話、10年前の自分に言ってあげたい…という気持ちで読んでいました。
さて今日はつい先ほどまで「人事図書館と私とコミュニティ」というテーマで書いていたのですが、どうもしっくり来ずに全部消してしまいました(笑)。テーマを切り替え「人事として向き合う中で思い出した本」をぜひ紹介したいと思って『十二国記』シリーズの話をしたいと思います。
※想像がつくと思いますが、人事図書館の蔵書にはありません(笑)
簡単な自己紹介
私は人事アセスメントを提供するセールスとして11年間働き、2021年よりIT系企業の人事にキャリアチェンジしました。変化と混沌にもまれながらも、現在はデザイナーを含む3人のチームでコーポレートチームとして日々試行錯誤しています。
人事図書館は、日々環境が変化し社内に同職種が少ない私にとっては、ずっと求めていた環境で、自分にとっての「帰る場所」の1つとして大事にしたい存在です。
アセスメント談義を館長のよっさんとたまにするのがちょっとした趣味です。
それでは本題に入っていきましょう。
人事という仕事は「自分」をど真ん中に持っておくことが求められる仕事だと思い知らされた1年間だった
キャリアチェンジをする前、何を勘違いしたのか、人事の仕事は個人的にもう少し「正解」があるものだと思っていました。でも実際には、経営者、社員、候補者など、異なる立場の人々の間に立ちながら「最適解」を模索する仕事だとつくづく思い知らされる日々を過ごしています。
そんな中で、第三者が受けた痛みをそのまま感じてしまったり、自分の考えや意見がどこにあるのか全くわからなくなり、意見に振り回されてしまう自分がだんだん嫌になってきました。
自分という土壌を整えたい
「いったい自分は誰の立場で発言しているのだろうか?」
こんな自分じゃ、周囲からの信頼も得られなくなってしまうということも薄々感じていました。
遠回りに感じるかもしれないけど、「こういう時こそ自分という土壌を整えた方がいいだろう」と思い、最近は人の力も借りながら内省を始めています。
そして自分を見つめ直すヒントを与えてくれたのが、若手の頃に出会った小野不由美さんの『十二国記シリーズ』です。
思い出したくもないほどにツラかった頃、先輩から教えてもらった本
この本との出会いは、社会人4年目のころ。自信を持てず、周囲の指摘に怯えていました。まさに自分と他人の境界線がよくわからなかった頃です。時には相手に対して攻撃的な姿勢になる幼い自分に、ある先輩が「オススメだよ」と教えてくれたことがきっかけでした。
その中でも特に印象に残ったのは、『月の影 影の海』と『風の万里 黎明の空』です。日本人の女子高生の陽子がある世界に飛ばされ、そこで苦難を乗り越えていくストーリーです。
『月の影 影の海』より(ネタバレです)
物語の中で、陽子は何度も裏切られ、絶望を味わいます。誰も信じられず、すべてを疑い、孤独に押しつぶされそうな状況の中で、彼女はこの考えにたどり着きます。
「裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしの何が傷つくわけでもない。裏切って卑怯になるよりずっといい」
この言葉にはっとさせられたのを覚えています。「裏切り」という行為に傷つくのは、たいていその裏切りに対して、裏切った本人と自分をどこかで同一視しているからです。けれど、陽子はそこから抜け出しこう考えます。「裏切りは裏切った相手の問題であり、自分の価値を損なうものではない」と。
さらに、彼女は自問します。
「人からこれ以上ないほど優しくされるのでなければ、人に優しくすることができないのか。」
この問いは自分が人にどう向き合うべきかという大事な問いが込められていると感じました。
陽子がたどり着いた答えは、「他者がどう振る舞おうと、自分が誰かを信じたり、優しく振舞うかどうかを決めるのは自分の中にあるべきだ」と。
陽子は、自分がどう振る舞うかを他者の態度や評価に左右されず、自分で決める力を手に入れたと感じました。彼女がどれほど孤独な状況に追い込まれても、自分の心だけは卑怯にならないように守ろうと決意した瞬間だと感じました。
当時このシーンを読んだ時に、私は自分の行動や感情を他人に委ねすぎていたことに気づかされました。この本を読んでから、自分がどうありたいか、他人の意見や感情は脇に置いて、自分という人生を歩みたいという気持ちを強くもったことを覚えています。
自分のことちゃんと大事にできていますか?
ところでみなさん「自分のことちゃんと大事にできていますか?」最近色んな人からそんなツッコミを食らっている今日この頃の私。
前職のアセスメントで「忠誠」という価値観がやけに高かった私なんですが、先日ある方から「自分に忠誠を誓うといい」という言葉をもらい、また十二国記シリーズのシーンが思い浮かびました。
『風の万里 黎明の空』より(ネタバレです)
『月の影 影の海』から話は進み『風の万里 黎明の空』で、主人公の陽子は慶という国を治めることになります。その中で、彼女が「伏礼を廃す」という初勅を出す場面があります。このとき、陽子が民に向けて語るメッセージが印象的でした。
「わたしは慶の民にそんな不羈の民になってほしい。己という領土を納める唯一無二君主に。そのためにまず、他者の前で毅然と首を上げることから始めてほしい」
私は、「他者に虐げられる」ほどの状況にはないけれど、果たして「毅然と首を上げる」姿勢を貫けているだろうか――
そしていつの間にか自分のことと第三者のことを、また一緒くたに捉えていたようです。さらに自分に対しては「雑に扱ってもいい」という思い込みまでもしていたような気がします。
ただ陽子の言葉を借りるなら、「己という領土を納める唯一無二の君主」である自分を、誰よりも自分が大切に扱わなければ、誰かを守ることも、他者に優しさを向ける余白を持つこともできないと改めて気づかされました。
年末といえばふりかえりのチャンス
ということで、絶賛内省中の私から送る1冊は十二国記シリーズでした。
改めてみなさん「自分のこと大事に扱っていますか?」年末といえばふりかえりのチャンスですので、がんばった自分を労ってあげましょう!
明日4日目は、名物CETで私が大好きなしほっぺさんです!どんな話をするんでしょう?お楽しみに!