住宅の空調システム(3) 「全館空調+第一種換気+電子式集塵機」
この記事は注文住宅を建てるにあたって調べた情報をMemo的に書いているものです。
高断熱高気密と呼ばれているような住宅 (筆者的にはHEAT 20 G2~G3、C値<0.5くらいのイメージ) ではエアコン1~2台で全館空調ができるとよく言われています。
前々回の記事では空調システムの種類を、前回の記事では全館空調+第一種換気の構成について記載しました。
本ページでは前回の記事で取り扱った全館空調+第一種換気の構成に加えて電子式集塵機を組み合わせたシステムについて記載します。
全館空調システム+第一種換気システムの概要
前回の記事で取り扱ったこのシステムの構成は外気を第一種換気システムに取り込み、第一種換気システムからの給気をそのままアメニティエアコンへ流し、冷暖房を行った上で各部屋へ供給します。また、廊下等から室内の汚れた空気を回収し、第一種換気システム内でその空気に含まれる室温と湿度(全熱交換タイプの場合)を戻してあげつつ、汚れた空気は外へ排出します。
全館空調+第一種換気+電子式集塵機システムの概要
本記事で取り扱う構成は以下のようなイメージになります。前述した全館空調+第一種換気システムに電子式集塵機を加えたものになります。
第一種換気システムの外気給気口に電子式集塵機を接続することで、外気に含まれるほこり、砂、花粉等の粉塵を除去した上で換気システムに供給する形になります。
構成要素の概要
第一種換気システム、アメニティエアコン
本ページで取り扱うのはダクト式の全熱型第一種換気システムとしています。第一種換気システムとは、外からの給気と外への排気のどちらも電動ファンで行うものです。
アメニティエアコンとは通常の壁付けタイプと異なり、天井裏に隠蔽されて設置され、ダクトで各部屋へ暖房・冷房された空気を送り込む形を想定しています。
詳細は前回記事を参照ください。
電子式集塵機
本ページで取り扱うのは住宅用ビルトイン空気清浄機です。通常第一種換気システムにはフィルタが備わっています。
私も調べていて驚いたのですが、下図のように通常フィルタの能力はフィルタリングできた粒子の重さで評価されていて、細かい粒子は実質的に無視しても高い数字を出すことができるようです。
高性能フィルタについては計数法で計測されており、イメージ通り粒子サイズによらず、粒子数に基づいて評価されるようになりますが、目詰まりしやすく換気量自体の低下を招きやすいという課題があります。
スティーベル社の第一種熱交換換気システム LWZ-280向けのフィルタを例に上げると、標準フィルタはG3クラスということですので、質量法での計測で捕集率 80-90%ということがわかります。
高性能フィルタはF7クラスということですので、計数法での計測で捕集率80-90%となります。前者の標準フィルタと比較して、よりサイズの小さい粒子も捕集されていると推測できます。
なお、このクラスを定めているEN779の試験の場合は試験体にDEHS液体の粒子サイズ0.3-3μmを用いるそうです。
そこで電子式集塵機を用いることで捕集率とフィルタの目詰まりという問題の双方を解決できます。金属の極板を数ミリ間隔で積み重ねた構造で、その間に高電圧をかけて粉塵を吸着するため、フィルタの目詰まり等はなく、徐々に換気量が下がっていくという弊害はないそうです。
メリット
前回記事で取り扱ったメリットに加えて以下の項目があります。
憎き花粉共微細な粉塵を第一種換気システムのフィルタより前で捕集することでフィルタの目詰まり交換周期が長くなることが期待できる。
※スティーベル社 LWZ-280の場合、一年周期の交換が推奨されている。
G7クラスのフィルタの場合、1回の交換分(2枚)で7,700円程度。
また、フィルタの目詰まりによる換気量の低下もある程度抑えられる。フィルタリングされる粉塵の捕集率が高まり、室内空気に含まれる粉塵の低減や花粉症対策になると考えられる。
またビルトインエアコン内へのホコリの堆積を防ぐことができる。
(もしかすると)ビルトインエアコン内のカビ繁殖への対策にもなるのでしょうか?
デメリット
前回記事で取り扱ったデメリットに加えて以下の項目があります。
システムが20万円と高額である。
定期的なメンテナンスを必要とするシステムが増える。
電子式集塵フィルタは水洗いができるものの、乾くまで集塵機が稼働できず、換気・空調システムを全て停止することになってしまう。そのため、集塵フィルタをもう一つ購入しておくか、定期交換サービスを契約する必要がある。
プロダクト詳細
トルネックス社 ビルトイン型電子式集塵機 G12/18
最後に
ここまで、全館空調システム+第一種換気システム+電子式集塵機の構成について記載してきました。様々な機器を組み合わせることで予期しない問題が発生する可能性も高まります。慎重に検討しましょう。
見出し画像はUnsplashのAshkan Forouzaniが撮影した写真