誰得ドット絵『スイカ』(後編)
誰得ドット絵『スイカ』の後編です。今回は、前回作成した「スイカ(大玉)」を、食べられるように切っていきます。
まずはズバッっと、大きく2つに切りわけましょう!
真っ二つに
さて。ちょっと不思議に思われそうですが、ドット絵でスイカを「真っ二つ」にするとき最初にすべき準備は、玉のスイカを「寝かせる」ことです。
なぜ寝かせるのか? その理由はちょっとややこしいのですが……。
スイカは普通、ヘタのある上端からヘソのある下端へと縦に切ります。しかし、今回のように見下ろし視点では、そのまま縦に切っても断面・果肉部分を見せている構図にしにくいんです。
そんなわけで、普通のイラスト的に果肉をメインに見せる構図にするためには、スイカを横に寝かせたうえで"縦に切ったスイカ"の断面を見下ろす必要があるのです。ややこしいですね。
なお、このサイズのドット絵では気になりませんが、"縞々"の向きによってどちらの向きに切ったかわかってしまいます。イラストを描く場合は気を付けた方が良いかもしれませんね。
では、実際に"真っ二つ"に切っていきましょう。
手順①ではまず、ヘタからヘソへかけて切断する位置にアタリをつけます(水色のライン)。
手順②では、奥側のラインも引いて断面のアタリを円形にします。この円の内側が断面、果肉部分になります。
手順③では、フチドリ線の位置を断面にあわせます。
これに色をつけると、次の手順④のようになります。
暫定色ですが、皮の厚みを白、果肉を赤に塗り分けます。
これで、もうできたようなものですから、あとはディテールを詰めていくだけ。
手順⑤では種をぽちぽちと置き、手順⑥では皮の厚みに近い部分の果肉の色を白に近い薄ピンクにしました。
スイカは果肉をどこまで食べるか悩むんですよね~。皮の白い部分まで食べちゃうと美味しくないですから、赤いところだけにしたいのですが。でも、ついつい白いゾーンに手を出してしまうんです!
――という「あの時」の気持ちを思い起こしつつ、色を調整していきましょう。気持ち、大切です。
種は、直に剥き出しになって見えている黒いのと、果肉の中に埋まっているもので色をわけます。そういえば、皮をむいたり種をとったりするのが面倒なため、「若者のフルーツ離れ」なんて言われて久しいですが、なぜか種をぽちぽち置いていく作業は気分がいいです。不思議です。
あと、種の周囲はスカスカしていて果肉の色が薄いので、少し明るい赤色を散りばめていきます。
これで、『スイカ(真っ二つ)』のできあがり!
ただ、いくらスイカ大食モンスターのうちの母といえど、さすがにこの半球サイズのままでは食べません。お客さんが来てもお出しできるように、よくある「半月切り」にしておきましょう。もちろん、母がお客さんにスイカを出しているところを見たことは一度もありませんけどね!
半月切り!
さて、半月切りですが……
このように上半分を消去して「はい、半分に切って半月切り完成~!」と言えたら楽なのですが。これでは構図がおかしく、"謎の下から目線"のようにも見えてしまいます。
それに、まっすぐ見下ろすのではおもしろみがありません。「半月切り」は、ちょっと横から見た視点で描き直すことにしましょう。
というわけで。手順①では、ちょっと斜め横から見た構図のアタリをつけました。
ま、アタリさえつけられれば、あとは「真っ二つ」と同じ手順で進めていくだけです。余裕、余裕。サクサクいきますよ!
手順②で皮に近い部分の果肉を薄ピンク色に変え、手順③では種を散りばめてその周囲のスカスカ部分を明るい色に変え、そして……あれ!?!?
「これにて完成!」と言う間もなく、食べ尽くされてしまいました! しかも白い! 赤味ほとんど残ってない!
なんと、今回は「完成」をすっとばして"完食"されてしまいました……!
そういえば、母がモーレツな勢いでスイカを食べ進んでいる間、子どものころのぼくはまず種をひとつひとつ丁寧によけることに集中していました。今思い返すと、あの「種よけ」は1ドットずつドット絵を描いていく作業に通じるものがあるように思えます。
もしや、丁寧に「種よけ」しながらスイカを食べることでドット絵の修行になったりするのでしょうか!?
「食べてもうまい、ドット絵もうまくなる」なんてことがあるなら、この夏はスイカをモリモリ食べるしかありません!
ひと粒で、いえ「ひと玉で二度美味しい」のですから、ね。
(おしまい)