レビュー 『不条理な会社人生から自由になる方法 働き方2.0vs4.0』
サラリーマンとして8年間過ごした会社を辞めたとき、「このままではマズイ!」と思い会社を辞めたのですが、その理由をうまく言葉にあらわせませんでした。
しかし、その時に漠然と考えていた「会社勤めをしていると幸せにはなれない理由」が、この本にはすべて言語化されており、読んだあとには胸がすくおもいでした。
残念ながら、日本企業の職場環境では、サラリーマンは決して幸せになることはありません。
日本企業の非合理さや、そこからくる経済的な弱さや低い生産性。
それらの原因となる新卒一括採用、ゼネラリスト育成、終身雇用をはじめとするサラリーマンの流動性の低さ。
本書は日本企業の不都合な真実を暴いており、読んでいてますます他の国へ移住したくなりました。
日本の会社から離れるのが一番ですが、安心を担保に会社から離れることができないサラリーマンがいるのも事実。
では一体どうすればいいのかを教えてくれるのが本書で、「働き方」というくくりで著者の主張がまとめられています。
働き甲斐が感じられず、働き方やキャリアについてモヤモヤを感じてる方の役に立つはず。
本書の題名にもなっている2.0や4.0は何なのかというと、働き方の進化の系譜となります。
働き方1.0:年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行
働き方2.0:成果主義に基づいたグローバルスタンダード
働き方3.0:プロジェクト単位でスペシャリストが離合集散するシリコンバレー型
働き方4.0:フリーエージェント(ギクエコノミー)
働き方5.0:機械がすべての仕事を行うユートピア/ディストピア
安倍政権がすすめた「働き方改革」は、働き方1.0を強引に2.0に変えようとするもので、世界の潮流はすでに3.0から4.0へ。
日本は、企業だけだなく行政も働き方1.0なので、全体として変化を嫌う状態にあり、正社員・非正規・女性労働者・専業主婦・外国人労働者という階級が存在します。
以下の例がその不条理性を物語っています。
・大卒女性よりも、高卒男性の方が出世する。
・正社員でも、評価基準が労働時間のため、サービス残業や有給未取得で時給単価はアルバイト以下。
・日本のジェンダーギャップ指数は110位。
・単純な女性差別ではなく、就業時間を揃えると、大卒女性は男性社員と同じように昇進しているので、残業時間で昇進が決まる。
・非正規公務員は、給与面でも雇用の安定性において非人道的な待遇を受けている。
・共同親権と戸籍制度は両立することができず、別れた夫が養育費を払わなくても罰則がない。
・戦後問答無用で日本国籍を剥奪された在日外国人。
・従軍慰安婦問題について、世界では、性差別している日本の意見が通用しない。
・家庭生活に満足な妻の割合は、イギリスが7割、アメリカが6割、日本が5割。
印象的だったのが、うつ病の原因が「自分の能力以上か、興味がないことや嫌なことをえんえんとやらされること」であること。
嫌なことにはは大きく3つに分けられます。
1、何の意味があるのかわからない仕事。すなわちブルシット・ジョブ。
2、人間関係。会社にいったら顔も見たくない同僚や上司がおり、怒られに会社に行っているようなもの。
3、自分の能力を超えた仕事をすること。同僚と営業成績を競争。
こられのすべてが、ぼくのサラリーマン時代に当てはまり、ぞっとしました。
老後の金銭問題は、定年をすぎても働くことで解決できますが、定年になると個人と会社は切り離されてしまいます。
独立する準備が必要ですが、残念ながら日本の会社では、独立に必要なスキルを磨くことができないので、自分で価値を作り上げ、いかにアピールしていくかが重要。
長い人生、好きなことしか長く続けることができないので、「自分の好きなこと」と「仕事」の交点を探し続けることも大切です。
資本となるのは個人の知識と人脈で、これらを積み上げ、惜しげもなく与えることで評判を獲得することが最適な戦略となります。
本書で指摘された閉塞した日本の現実をつうじて、日本社会に安住するリスクを感じました。
わずらわしい人間関係や組織から抜け出し、何を実行するか、自分の働き方を考えるきっかけになる良い本です。
なんとなく会社が嫌いという人も、本書を読めば、なぜ会社が嫌いなのかを論理的に説明できるようになるでしょう。
自分が何者であり、何ができて、何ができないかを公言し、相手がそれを評価し、信頼してくれれば、どこでも誰とでも働くことができる、と背中を押してくれました。