忘れられないマンガ体験:『黄色い本』
高野文子さんの作品をはじめて読みました。
それが『黄色い本』というマンガ。
新作が出ると、それが大きな話題になるほど、寡作な大御所の一冊。
きっかけは、誰かがそのマンガ表現の新しさを力説していて、いつか読んでみたいと思っていたからです。
そして、ついに手に入れることができました。
今回は、本書から学んだ3つの視点をご紹介いたします。
詩的な表現で、マンガとしての新しさ
ページを開いたとき、正直なところ「読みづらいマンガだなぁ」と感じました。
極端にシンプルな背景、デフォルメされた人物描写、そして、凝ったアングルと細密な描写。
しかし、読み進むにつれて、その繊細な世界観に心を動かされました。
とくにカメラの位置・構図の面白さが斬新で、今まで経験したことがない興奮を覚えました。
ストーリーを楽しむというよりは、一言一言、ひとコマひとコマ、味わいながら読む漫画だと感じました。
(よって人を選ぶ作品だとも思うので、アマゾンレビューで星を1つしかつけていない人がいるのも納得)
マンガの新しい楽しみ方を教えてくれた作品です。
語り口をじっくりと楽しむ
本書の一番の特徴は、やはりその「語り口」でしょう。
物語の主張が前面に出てこない、ユニークな作風です。
では物語を支えているのは何かと言えば、徹底して「ニュアンス」だと思います。
それが、まさに唯一無二の魅力を醸し出しています。
この短編集には4つの話が収められれており、すべてに共通するのは、あくまでも日常の一コマを描いているということ。
物語の中で、大きな事件は起きません。
そんな日常の中でも、普通の人の心には、小さな革命ともいえる葛藤が存在しているのです。
そんな心情を短い言葉で、丁寧に描ききっています。
黄色い本は?『チボー家の人々』という本
高校三年生の実地子(みちこ)は、図書館で借りたロジェ・マルタン・デュガールの長編小説『チボー家の人々』(=黄色い本)を読み耽っています。
コミンテルンの革命運動に身を投じるジャック・チボーらの生き方に胸を熱くする実地子。
しかし、現実世界によって読書はたびたび中断させられます。
普通はストレスがたまっていくはずなのですが、賢明な実地子は、現実とうまく折り合いをつけて日々を過ごしています。
やがて黄色い本を読み終え、心の中でジャック・チボーらに別れを告げる実地子。
裕福ではない家庭の事情や、将来への不安など、さまざまな現実と向き合うなかで、実地子は地元の肌着メーカーへの就職を決めます。
最近読んだ『切り取れ、あの祈る手を』では、聖書を読み、「それ通りに生きる事しかできなくなった」ルターが描かれているのですが、実地子はルターとは別の道を選びました。
革命と、現実の折り合いのつけ方について考えさせられる作品。
また、少年時代の読書体験の鮮やかさと、若者たちの心の揺れ動きが見事に描かれています。
まとめ
一言でいうと、『黄色い本』は先鋭的な表現技法と、巧みな語りが両立した傑作です。
詩的マンガ、または、ニュアンスマンガとでもいうべきでしょうか。
ジワジワと胸を打たれる名作です。
また、「黄色い本」の他にも、本書には以下の3作の短編が収められており、きっとお気に入りが見つかるはず!
・Cloudy Wednesday:パパの帰りを待つママと二人の幼子
・マヨネーズ:OLの上島さんとスネウチ君の社内恋愛を描く「ラブコメ」
・二の二の六:高齢者介護ヘルパーの里山さんが訪問した、大沢家での出来事
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