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反抗的な道化のパワー:『道化の民俗学』レビュー

みなさんは、「道化」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

サーカスやお祭りで笑いを誘うピエロ?

それとも、ちょっといたずら好きな妖精?

じつは道化は、世界中の文化に共通して存在する、とても奥深い存在なんです。

そして、さまざまな国や地域での「道化」の役割について詳しくおしえてくれるのが、『道化の民俗学』という本。文化人類学の巨匠・山口昌男さんが書いた本です。

ぼくは、この本を読んで、「道化」がとても大切な存在なのだと知りました。

今回は、ざっくりと本書の内容を紹介したいと思います。


現代社会には「道化」が必要

現代社会では、つねに真面目でいることが求められがち。

しかし、この本が教えてくれたのは、「機知(きち)と笑い」、そして「アクロバティックな身体」を持つ道化のような存在が、ぼくたちの生活に潤いを与えてくれるということです。

道化は、日常生活の中の変わった行動や言葉で、ぼくたちに新鮮な驚きを与えてくれます。

でも、道化の役割はそれだけではありません。

権力者をからかったり、常識をひっくり返したりすることで、私たちに新たな視点を与えてくれる存在でもあるんです。

祭りの場を沸かせるエネルギーを持っているのが道化なのです。

太宰治の『人間失格』にも、「お道化」というキーワードが登場。

主人公は、他の人の前でうまく振舞えないがために、あえて「道化役」になっていたと、あくまでもネガティブに語られています。

しかし、そのとき彼は文化的ヒーローでもあったのだと、道化の民俗を読んで感じました。

カーニバル:ロシアの哲学者ミハイル・バフチン

この本では、ロシアの哲学者ミハイル・バフチンの考え方が重要な役割を果たしています。

バフチンは「カーニバル的」という言葉を使い、笑いと身体性に富んだ文化を分析しました。

カーニバルとは、日常の秩序が一時的に解き放たれ、誰もが平等に笑い楽しむ祭りです。

道化は、カーニバルの精神を体現する存在であり、権威や固定観念を笑い飛ばし、社会に活力を与えます。

この本でもよくバフチンの言葉が引用されており、道化の存在を理解する上で重要なキーワードとなっています。

構成

本書は、世界各地の道化文化を5つの章に分けて考察しています。

第一章では、イタリアの民話の登場人物であるアルレッキーノについて考察されています。
第二章では、アルレッキーノとギリシア神話のヘルメスの関係が述べられています。
第三章では、アフリカ諸民族における道化の役割が紹介されています。
第四章では、インドの神クリシュナが道化的存在として解説されています。
第五章では、アメリカ・インディアン社会における道化の位置づけが分析されています。

それぞれの章では、道化の衣装や行動、役割などが詳しく解説されています。

豊富な資料にもとづいた分析は、道化に対する理解を深めてくれます。

まとめ

本書は、道化の歴史や文化を幅広く学べる一冊。

この本を読んで、世界中のさまざまな文化に「道化」的存在がいて、人々の日常に彩りを与えていることがよくわかりました。

たんに笑いを提供するだけでなく、権威に対する反抗心や、祭りを盛り上げるエネルギーを生み出す存在として、道化は大切な役割を果たしています。

そして、道化の持つユーモアと反抗精神は、現代社会を生きるぼくたちに多くの示唆を与えてくれます。

世界の道化について知りたい人、そして、ユーモアや笑いの力を知り、もっと自由にもっと自分らしく生きたい人にオススメです。

この本を読んで、道化の持つパワーをぜひ感じてみてください。

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