まとめ 『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』
コロナ時代に不安はつきません。
不安が尽きない時代でも確かなのは、不安をなくすための土台が必要で、以下の記事で紹介した橘玲さんの本の内容を借りると、「経済的に独立するための投資(金融資本)」、「自己実現をするための仕事(人的資産)」、「きずなを大切にする共同体(社会資産)」が必要になります。
そのなかの「経済的に独立するための投資(金融資本)」について、本書は一見難しい投資の世界を簡単に説明し、具体的な投資先やその理由までも教えてくれました。
働かなくても生きていくためには、一体どれぐらいのお金が必要なのかや、具体的にどこに投資をすればいいのか知りたい人にもおすすめです。
借金があり、将来に不安を抱えている人の役にも立つでしょう。
アメリカの本ですが、日本に住むぼくたちにも多くの示唆を与えてくれます。
経済的自由に必要なお金
結論からいうと、「投資額の4%で1年を暮らせれば、経済的に自立している」といえます。
これは、トリニティ大学の教授達の論文で発表された「4%ルール(トリニティ・スタディ)」が元になっており、「どのくらいの株と債券の割合で、どのくらいお金を引き出せば、どのくらいの期間お金がつきないのか」の成功の確率(%)が明かされました。
この研究を元に著者が勧めているのは「ポートフォリオの75%を株式、25%を債券にし、毎年資産から引き出す額を総資産の4%以下にする」することで、そうすれば、30年間、資産を減らさずに残すことができる可能性が高い、としています。
以下が具体的です。
・引退する時に1500万円の金融資産(株式75%・債券25%)を保有する場合、その4%、つまり年間60万円の支出に抑えることができれば、ずっと資産を減らさずにすむ可能性が高い。
・引退時に1億円の金融資産(株式75%・債券25%)を保有する場合は、その4%、つまり年間400万円の支出に抑えることができれば、資産が減らない可能性が高い。
当然といえば当然ですが、毎年の支出が少ない人だと、それだけ引退時に必要な金額が少なくて済みます。
これを見て、老後は田舎への移住もありだと思い始めました。
本書では、具体的にどこに投資すればいいのかも教えてくれています。
2つの投資先
具体的にいうと、以下の2つを著者はすすめています。
① バンガード社のインデックス投資ファンドVTSAX (日本だと、近い銘柄は「VTI」)
② バンガード社の債券ファンドVBTLX (日本だと、近い銘柄は「BND」)
①、②に共通するバンガード社は、世界最大規模の資産運用会社で、世界初のインデックス型投資信託(インデックスファンド)を個人投資家に提供した会社として知られています。
バンガード社の投資信託は「取引手数料が安い」ことで有名で、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェットも個人投資家に推奨している会社。
運用の費用は経費率で示され、バンガードの平均経費率は0.8%、業界の平均は1.01%。
この差は一見小さく見えるかも知れませんが、長期的な視点に立つと大きな違いを生み出します。
①について、アメリカの株式市場に上場しているほぼ「全て」の会社に投資をしており、「アメリカ株式市場との連動」を目指しています。
この「アメリカ株式市場との連動」が重要で、その理由は「アメリカ株式市場の年率平均利回り(配当金を再投資した場合)」が「11.9%」と、平均的な投資家よりもよっぽど優秀だから。
具体的には、1975年1月から2015年1月までの40年間で、アメリカ株式市場は年平均11.9%の利回りを生み出しており、将来の平均利回りが11.9%である保証はありませんが、過去40年という長い期間(ニューヨーク株式市場の大暴落・ブラックマンデーや、リーマンショックを含む)での平均値なので、一つの基準として使える数字です。
②は、米国の債券市場全体と同じ値動きを目指す債券ファンド。
この①と②でポートフォリオを構成するわけですが、それぞれの割合は個人が「資産を築く段階」か「資産を維持する段階」なのかによって変わってきます。
「資産を築く段階」では、株式のほうが債券よりも利回りが高いので、著者がオススメしているのは①に100%投資。
「資産を維持する段階」では、上記で見てきた「①に75%、②に25%」が推奨されています。
ぼくは50代になったら、債券の割合を少しずつ増やしていこうと考えています。
ちなみに著者自身のポートフォリオは「75%を株式(VTSAX)、20%を債券(VBTLX)、5%を預金」とのこと。
預金は、生活の突発的な出費に対応できますし、株式や債券が値下がりした時に「買い増す」ときに使えるお金となるからです。
借金はしない!が大前提。
そもそも借金をしないことが第一ですが、欲しい車や家があった時には借金をしてしまいがち。
しかし本書では借金をしてはいけないと断言しています。
その理由は以下となります。
・借金があると、収入の大きな部分が利息の支払いに使われてしまう
・現在の収入源に依存することになり、長期的視野で物事が考えられなくなる
・ストレスが増える
本書では借金の危険性だけでなく、すでに借金がある人にもどうすれば良いかの基準が示されています。
・金利が3%未満 →焦らずに余裕資金を投資に回す
・金利が3〜5% →余裕資金と投資に回しても、返済に回してもOK
・金利が5%以上 →何をおいてもまずは余裕資金を返済に回す
借金は、「返せるならどんな借金でも早めに返すべし」とぼくは漠然と考えていたので、3%未満の金利であれば急いで返済する必要はないという本書の主張はとても新鮮でした。
先述した投資にお金を回し、年11.9%の利回りで運用すれば、借金の金利の支払い分よりも利回りのほうが多くなるので、確かに返済を急ぐ必要はありません。
本書で紹介されている以下の「借金の返済方法」はいたってシンプルです。
・借金のリストアップ
・生きていくのに必要のないお金はすべてカットする(例えばコーヒー代)
・金利が一番高い借金から集中して返済(金利が5%以上なら)
・1つ返済が完了したら、次に金利の高い借金の返済に集中
おまけ:お金のガイドライン
本書に紹介されいているお金のガイドラインを、特に重要と思われる箇所を抜き出し要約します。
【お金についてのガイドライン】
・収入の範囲で消費し、借金はしない
・お金で買えるものよりも貴重なものは自由
・健全な投資とはシンプルなもので、複雑ではない
・収入の半分を投資に回すことにより、控えめに暮らす方法も身につく
・株式市場は投資する有力な市場だが、激しく上昇、下降するもの
・株式市場が下がったら、パニックに陥った人々が「売れ」と叫ぶがそういう時こそ「買う」べし
・将来を予想できるという人は無視。先のことは誰にもわからない
・投資額の4%で1年を暮らせれば、経済的に自立している
おわりに
著者のジェイエル・コリンズさんは、ファイナンシャル・ブロガー(ブログ「jlcollinsnh.com」を主催)で、1975年から投資を行っている個人投資家。
2011年に、娘宛てに「お金と投資」についての手紙をしたため、その内容をブログに発表すると、世界中から注目されるようになりました。
その内容を書籍化したのが本書であり、コロナで不安になるばかりではなく、積極的に自分から学び、状況に対応するための金融リテラシーを高めることができます。
本書の内容を実行し、経済的に自由になるまでが楽しみです。