問題解決力の底上げ:『ビジネス・ウェポン』大前研一
ひさしぶりに実家にかえってきました。
いつもゴールデンウィーク前の、オフシーズンを狙って帰省するのが個人的な流儀。
そんな実家には、ぼくの本がいくつか残っているのですが、帰省するたびに少しずつ持ち帰っています。
今回持って帰ったのが、大学生のときに買った大前研一さんの『ビジネス・ウェポン』という本。
2002年出版と、20年以上も前の本ですが、色あせない部分がおおく驚きました。
副題には「生き残りたいサラリーマンのための発想術」とあるように、本書はサラリーマンを対象にしていますが、クリエイターにも参考になる点が多くありました。
今回は本書から学んだ、ーにも役立つユニークな視点を3つほど紹介します。
問題解決は、左脳と右脳の往復運動
問題の解決は、左脳(ロジカル)と右(想像)脳の往復によって達成できます。
まずは「問題を定義する」ために、仮説をたてます。(左脳)
仮説とは「もし問題が~ならば、原因は~ではないのか?」ということ。
仮説をたてることで、やみくもにデータをあつめることを防ぐことができます。
仮説をたてる際には、アリストテレス論理学の「二律背反」を使用。
二律背反とは「相互に矛盾する2つの命題が同等の妥当性をもって主張されること」を指しています。
具体的には、以下の流れで仮説をたてます。
・問題はAかBのどちらかに違いない
・まずはAを証明するデータをあつめる
・それを検証した結果、AではなければBが答え
問題が定義できたあとは「どうやってその問題を解決するのか?」を考える段階。(右脳)
ここでは、直観や想像力をつかい、改善のための「方向性」を列挙し、誰も予想しなかった答えを抽出します。
そこからさらに、事実にもとづいて検証・評価し、ビジネスとしてなりたつか、実行可能かどうかを検討。(左脳)
そうして答えの幅をせばめていき、最終的にひとつの案にまとめます。
さいごに、解決策に対して行動計画をたてて実行段階にうつり、「その気にならない人」を「その気にさせる」ための説得や交渉をします。(右脳)
1位しか勝てないコンテンツ業界
本書を読んで一番興味深かったのが「コンテンツのマイケル・ジョーダン化」という概念。
それは何かというと、なんでも「1位」のものでないと、人からは見向きもされないということです。
さらに残酷なのが、「1位」しかお金を稼げなくなってしまう可能性があること。
たとえば、カリスマ料理人の料理番組ならば、お客はお金を払ってでも見たいと思います。
しかしそれ以外だと、お客は無料のサイトに流れてしまいます。
「1位」になること以外で、生き残るのが難しくなってきた残酷な世界を先取りしています。
視座をあげてシミュレーション
大前研一さんが、世界レベルで知的パフォーマンスを高く保ちつづけれた秘密を明かしています。
それはズバリ「自分を、他の人の立場に置き換えて考える」こと。
具体的には「自分が日本の首相だったらどうするか?」や、他の国にいっても「自分がこの国のこういう立場の人間だったら、どういうことを言うのか?」を常に考えていたそう。
「経営コンサルタント」という、国家と大企業を相手にしていた大前さんだからともいえますが、クリエイターにも役にたつ力だと思いました。
身近なところだと「お客」になりきって、その人が本当に欲しいモノやサービスを考えること。
そして、自分が尊敬しているメンターや師になりきって、この人ならこう考える、という思考訓練ができます。
このように、今の自分の立場から別の人の立場に視座をあげて、シミュレーションをしてみることで、多面的に物事をみることができるようになり多くのことを学べます。
おまけ:ビジネスウェポン一覧
この本で挙げられている、その他のビジネスウェポン一覧を、以下に列挙します。
・三種の神器(英語・IT・財務)
・質問力(なぜ?を問う)
・ビジネス上の実行力
・大胆な改革案を提案する力
・自分なりの問題解決法
・SONY盛田さんの徹底力
・識者の解説に満足しない知的探求力
・ニュースという素材をあつめ、全体像についての判断する力
・「なぜそうなるのか?」「おかしいじゃないか」「本当はこうあるべきじゃないか」
・何回かのオンラインでのやりとりで、相手の人々のおかれている状況を把握する力
・世界で活躍する自分を描き、世界地図をにらみながらビジネスプランを練る
とくに「三種の神器」については、チェック方法があります。
「ドイツの3大科学企業のうち、まだ日本メーカーの手のついていないところを見つけ、要らなくなった九州工場をかいとってもらいたい。インターネットだけで相手をみつけ、交渉のテーブルにつかせることができるか?そして、適正な売却価格を算出せよ。そして、交渉でどのような算出根拠を、どの順番で出すのかを述べよ。」
これが40歳になって実行できなければ、いままでサボっていたということになり、ゼネラリストの管理職とは言えないとのこと。
個人的には、「適正な売却価格を算出」する「財務」の部分がとくに弱いと感じています。
(だからといって、管理職になりたいとは思っていないので、本腰をいれて身に着けようとは思いませんが…)
まとめ
『ビジネス・ウェポン』は会社でリーダーを目指すサラリーマンを対象にしていますが、クリエイターにも参考になる点ばかり。
とくに「問題解決法」は汎用性がたかく、人生のさまざまな場面で活躍します。
また、「1位になる」の重要性を学び、「視座をあげる」ことによって多様な視点を獲得できることを学びました。
「知的なハングリーさ」を高めるのにピッタリの一冊で、自分で道なき道をみつけたい人にオススメです。