#1 谷川嘉浩『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)の紹介をしていきます
こんにちは、京都在住で職業哲学者をやっている谷川といいます。
この度、学位論文をもとにした『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)を上梓します。2021年2月19日、発売予定です。
この本について紹介していくマガジンをぼちぼち書いていこうと思います。
1. 本の基本情報
以下、基本情報と内容紹介です。
「過去を取り消せないが、未来には働きかけられる」。他者と状況から学びつつ思考したデューイは、保守的かつリベラルな未来志向の哲学を構想した。プラグマティストは近代化にどう応答したのか。心理学、神学、ロマン主義、自然主義、パース、ジェイムズ、ローティ、オルテガ、リップマンなどとの線を結び、アメリカ哲学の新しい星座を描く。
やや詳しく内容を紹介すると、大体こんな本です。
19世紀から20世紀の世紀転換期、アメリカには革新主義と呼ばれる知的運動が立ち上がりました。ある研究者は、革新主義が「社会」という領域を発見したと表現しました。かつての小規模で閉じられた共同体ではなく、人・物・情報が多角的にやりとりされる複雑かつ大規模な「社会」という領域をシリアスに捉えた知識人たちが、本書の主人公たちです。この領域で発生した様々な社会問題のために知的リソースを生かし、学識を再編成した人物たちの知的遺産を批判的に再構成することに、本書は取り組んでいます。彼らはどんな社会問題を抱え、それをどのように議論し、取り組んできたのでしょうか。様々な領域で活動し、多様な人物と協働した哲学者のジョン・デューイを中心に、アメリカの社会批評の系譜をたどっていきます。
人名索引に頻出したのは、ジョン・デューイに加えて、ジェイン・アダムズ、コーネル・ウェスト、ウォルター・リップマン、ダニエル・ブーアスティン、ウィリアム・ジェイムズ、オルテガ・イ・ガセット、C. S. パース、リチャード・ローティ、グレアム・ウォラス、H. G. ウェルズなどです。
彼らは本書でデューイと同じくらい主人公してます。こうして、分野を超えて色々な人物がたくさん登場することには、デューイ哲学的に言って重要な意味があるのですが、それについては序章と終章で論じています。
あと、ヤマシタトモコさん、最果タヒさんもなぜかちょいちょい出てきます。書店で「人名索引」をチェックしてみてくださいね。
2. ネット書店へのリンク
以下に、Amazonとhontoへのリンクを貼っておきます。
ちなみに、ヨドバシカメラでも本が買えるので、他のネット書店で見つからないときでも、割とここには在庫あるのでおすすめです。
ぶっちゃけ高い本ですが、たとえ読まなくても買っておいとくに足るものになるよう、表紙絵やカバーデザインなど、こちらが関われる限りはこだわりました。
特に表紙絵を描き下ろしてもらい、おうちに迎えたくなる学術書になったかと思います。ぜひぜひ!
3. 目次
目次は、以下の通り。導入、序章、終章については節タイトルも掲げました。
導入 ジョン・デューイはなぜ宗教哲学者なのか
1.彼の知的ポートレイト
2.宗教はなぜ哲学の問題になるのか
3.デューイはなぜ検討されなければならないか
4.議論の手順や構成について
序章 A Common Faithはなぜそう呼ばれるのか:共同性、想像力、歴史
1.宗教哲学の主要概念――信仰、共同性、敬虔
2.デューイ宗教哲学における「信仰」の構造
3.なぜ宗教は共同性の問題になるのか
4.どのようにして信仰の共同性は拡大するか
5.どこまで共同性が認められうるのか――機械や動物は「人類」か
第一部 近代アメリカにおける消費・政治・宗教
第一章 近代アメリカにおける大衆消費社会の生成と構造
第二章 「リベラリズムは豚を焼くために納屋を焼いてしまった」――リップマンとデューイの先入見論
第三章 不安定な覚醒者たちの連帯――憂鬱、科学的方法、レトリック
第四章 介入する部外者たちの重なり合う関心――二つの公私概念と公私の境界設定をめぐって
第二部 信仰と想像力の哲学
第五章 創造的想像力と自然化されたロマン主義――心理学から宗教学へ
第六章 消費者に自己超越は可能か――ブーアスティン、デューイ、ニーバー
第七章 画一性のディストピアを超えるための二つの戦略――A Common Faithを読むエーリッヒ・フロム
第八章 民主主義へのジェファーソン的「信仰」――政治的疎外、自然権、楽観性
終章 知を欲望する、地図を手にする、庭を耕す――図書館と現場を行き来する哲学
1.お上品な伝統と、変化を抑圧する哲学
2.形而上学の回避と、文化としての哲学
3.知への欲望としての哲学
4.地図、図書館、庭園
あとがき
参考文献一覧
人名索引
4. この本の読み筋など、その他のこと
その他の情報については、追々更新する予定です。
この本には、いくつかの読み筋があります。
①この社会にどう生きるかという読者の実存に引き寄せた読み方
②大衆社会論としての読み方
③アメリカ哲学・プラグマティズム研究としての読み方
④公共哲学(政治哲学)の本、そして、民主主義論としての読み方
⑤宗教哲学としての読み方
⑥消費社会論ないしアメリカ論としての読み方
⑦知識人論としての読み方
⑧文化産業論やメディア論としての読み方
パッと思いついたもので、これくらいあるのですが、もちろんこれに絞られるわけではありません。
この辺りについては余裕があれば、追々コラムなど書いていけたらと思っています。(podcastで解説する形になるかもしれません……)
読書会やイベントなどの依頼があれば、Twitterかメール(yshr.tngw/gmail)で連絡してください。
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