#2 谷川嘉浩『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)の表紙の話

こんにちは、京都在住で職業哲学者をやっている谷川といいます。

1.内容について

学位論文(博士論文)をもとにした書籍、『信仰と想像力の哲学:ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)が刊行されます。2021年2月19日発売です。

学部から数えて10年分の成果が形になったもので、みなさんのお力添えで、いいものになったと思います。

ヤマシタトモコさんの『違国日記』がちょいちょい登場することで知られる本書ですが、これまでとは違う仕方で紹介すれば、ざっと以下のような内容です。

いわゆる「宗教」を信じていなかったとしても、「宗教的」といいたくなるような姿を見せることはないだろうか。ジョン・デューイという哲学者はそう問いました。その中で組み立てられたのが、彼の宗教哲学です。「あっ」と思う経験には、ビビッとくる経験ってありますよね。そういう経験には理想の芽があり、その理想が形になるように行為する中で、理想の実現のために持続的に環境も自分も変えられる自己になることへのコミットを、デューイは「信仰」と呼びました。たとえ、自分は故人を好ましく思っておらず、人と一緒にいるとしんどくなる気質があるとしても、それでも子どもが親戚をたらいまわしにされるとき、「これはおかしい」と思うときなんかが、そういう経験の具体例と言えるかもしれません(『違国日記』1巻より事例を借りています)。本書は、デューイの「信仰」と「想像力」概念をベースに、こうした倫理について考察しています。

ちなみに、先日、無事書籍は完成しました。なので、今回は表紙絵などについてお話します。

本書をぼちぼち紹介していくマガジンを書いています。よければ他の回もぜひ。


2.表紙絵は後藤史春さんに描いてもらいました

表紙は、後藤史春さんに描いていただきました。

画像1

前々からファンだった後藤史春さんにカバー絵を描き下ろしていただいたのは、とても光栄なことでした。

キャラクター絵は学術書向きではないと思ったのですが、元々後藤さんの描く静物や部屋の雰囲気が好きだったので、「雑貨や図書、食べ物など、静物ベースで」とお願いしました。予想以上の出来ですし、本書の雰囲気を的確に表していると思います。

簡単に内容を伝え、導入やあとがきを共有し、大まかな要望を出して上がってきたラフの一つが、上の写真にあるものです。実は、本書の自然や文化に対する姿勢をうまく捉えたものになっていて、カバーに掲げるにふさわしいと感じました。

頼むきっかけになったのは、以下のような絵です。

むっちゃいいですよね。

チェンソーマンのファンアートを描いてはったりもします。これも好き。


3.カバーデザインについて

カバーデザインについても、デザイン科実技科目担当の教員として、かなり込み入って対応や修正をお願いしました。印象的な絵がいきるようにしたかったので。

実際の表紙は手に取ってご覧いただきたいのですが、上からモビール、絵画、テーブル、植物と水平なラインが印象的な秩序を構成しているので、文字の並びも、そのリズムを活かしたものにとお願いしました。

また一方で、後藤さんの絵は「つ」の字のように、モチーフが配置されているので、上半分の真ん中から左にかけて空白があり、バランスをとるために左方にタイトル等を配置してもらいました。タイトルを含めて、大まかに「円」を描くような形で配置したということです。

全体として、うまく絵の秩序を活かしたデザインになったのではないかと思います。

帯を外したバージョンもとても好きなのですが、白地に大人しめの赤字の帯が入ると締まった印象があり、付けたままなのもとても好きです。

表紙も内容もこだわり、読者の分野や属性を問わず長く読まれる、息の長い本になるよう作りました。みなさんの手に触れる瞬間を想像すると、不思議な心地です。ぜひご覧ください。

ちゃんと売っていきたいので、引き続き関心を持ってもらえれば幸いです。

▼前回の記事▼

ちなみに、Podcastやっています。こちらでは、書籍紹介はもちろん、他の話題についてもぼちぼち話しています。併せてどうぞ。

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