【助産師監修】母乳が足りない?と感じるあなたへ
赤ちゃんが一生懸命母乳を飲んでいる様子は、いつまでも見ていられるほどかわいいですよね。その一方で、授乳は産後のお母さんたちを悩ませる大きな理由の1つです。
母乳をあげているお母さんの中で、「母乳が足りていないかもしれない…」と感じたことのある方は少なくないのではないでしょうか。
今回は、母乳不足感についてお話ししていきます。
母乳とは
お母さんの体内では、妊娠中から母乳をつくる準備がされており、出産するとホルモンの働きで、血液から母乳がつくられるようになります。その母乳分泌のメインとなるのが、プロラクチンとオキシトシンというホルモンです。この2つのホルモンが頑張って母乳分泌をしてくれますが、母乳を分泌するのに1番大切なのは赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激です。
まず、赤ちゃんがおっぱいを吸うと、その刺激でプロラクチンが分泌され、母乳がつくられていきます。母乳がたまってくると、今度はオキシトシンの力で母乳が外に放出しようとします。つまり、プロラクチンは「母乳をつくるホルモン」、オキシトシンは「母乳を外へ出すホルモン」といえます。
これらのホルモンは赤ちゃんがおっぱいを吸ったときに1番分泌され、時間が経つと減ってきます。そのため、頻回に授乳をすることでホルモンの分泌量を維持することができます。赤ちゃんの授乳が3時間おきなのは、赤ちゃんが1回に飲める量が少ないからといった理由もありますが、ホルモンの量が減らないうちにどんどんホルモンを分泌させて母乳を増やそうとしてくれているのです。
母乳が足りているときのサイン
新生児期の赤ちゃんは、十分に母乳が飲めているとき、次のようなサインを出してくれています。
・1日に8~10回母乳を飲んでいる
・ごくごくと飲みこむ音が聞こえる
・母乳を飲んだ後、3時間しっかり寝る
・1日に色のうすい尿が6~8回ある
・1日に便が3~8回出ている
・機嫌が良い
・生後2ヶ月以内であれば、1日25〜30g増えている
新生児期を過ぎると、母乳や排便の回数はだんだん減っていきます。また、体重も成長曲線にそって増えていけば何も問題ありません。
分泌不足と分泌不足感の違い
赤ちゃんに上記のようなサインがみられず、授乳後1時間ですぐ起きて泣いてしまったり、体重が増えなかったりする場合、母乳不足であることが考えられます。その場合は、ミルクを足して補うようにしましょう。
そしてよく間違われるものとして、「母乳不足」と「母乳不足感」という言葉があります。この2つはとても似ていますが、実は全く意味が違います。
母乳不足 ・・・赤ちゃんにとって必要な量に足りていないこと
母乳不足感・・・母乳が足りているのに、足りていないと感じていること
分泌不足の原因として、乳腺への刺激不足、出産の疲労、水分不足、冷えなどがあげられます。これらの要因を解消することで、母乳分泌がアップする可能性もありますので、この後解説していきます。
また、「母乳が足りていないかもしれない…」と思っても、先ほどお話しした母乳が足りているサインを満たしていれば、本当に母乳が不足しているのではなく、母乳不足感があるだけ、という可能性が高いです。定義上は母乳不足という言葉がありますが、ミルクを足している=母乳不足、ということではありません。ミルクを使いながら混合栄養で育てていきたい場合など、自分の希望する量の母乳が出ていれば母乳不足とはいえないのではないでしょうか。
母乳の量を増やす方法
もっと母乳の量を増やしたい、と希望するのであれば、様々な方法があります。それぞれ分泌不足の原因は異なるため、全てが当てはまるわけではありませんが、ぜひ参考にしてみてください。
①マッサージや搾乳をして、刺激を増やす
乳頭への刺激によって母乳分泌ホルモンが増えるため、刺激はとても大切です。本来は赤ちゃんにしっかり吸ってもらうことが刺激になりますが、まだまだ赤ちゃんも授乳初心者です。赤ちゃんが上手に吸えないうちはマッサージや搾乳を行うことで、赤ちゃんに吸われているのと同じような刺激になります。先ほどお話ししたように、刺激は頻回に行うのが大切であるため、1回に時間をかけるのではなく、数分の刺激を頻回(約3時間ごと)に行うようにしてみてください。
②身体をしっかり休める
産後は、育児手技を身に着けるのに必死になってしまいがちですが、身体が疲れていては母乳の量は増えていきません。メリハリをつけてしっかり刺激をすること、その合間に休むこと、がとても大切です。授乳をパートナーに代わってもらうことはできませんが、沐浴やおむつ交換など、出来ることをどんどんしてもらって、その間に身体をしっかり休めましょう。
③栄養バランスの良い食事と十分な水分摂取
産後におかゆしか食べてはいけないという時代もあったようですが、母乳は血液であるため、十分な栄養が必要です。バランスの良い食事を、3食しっかりと摂るようにしてください。産後の栄養を補うためにおやつや夜食を取り入れても良いでしょう。
また、母乳の量を増やすには餅が良い、ケーキは詰まりやすい、など様々なことが言われています。もちろん人によって詰まることもありますが、妊娠中もたくさん我慢してきたのですから、全く食べずに我慢し続ける必要はありません。詰まりやすいと言われているものは一口、半分といったようにトライしてみても良いと思います。
食事と同時に大切なのが、十分な水分摂取です。母乳の元である血液の循環を促すためには、十分な水分が必要です。1日2Lを目安に摂取するようにしましょう。授乳後には必ず水分補給をするようにしてくださいね。
④足を温める
産後は入浴することが出来ません。しかし、出産後の身体は疲れ切っており、冷えています。血液の循環を良くするためには、身体を温めることが大切です。浴槽に少しだけお湯を張ったり、赤ちゃんのベビーバスを借りたりして、お湯に足首までしっかり温めましょう。足を温めるだけでぽたぽた母乳が出てくる方もいるほど効果的です。血流が良くなるので、浴室で転んだり気分が悪くなったりしないよう気を付けてくださいね。
終わりに
今回は、分泌不足感や母乳の分泌を増やす方法について解説しました。
母乳や授乳は個人差が大きく、また、赤ちゃんの健康や成長に直結することであるため、迷ったり悩んだりすることも多いと思います。赤ちゃんにとって大切なのは、その時期のその子に必要な栄養をしっかり与えられていることです。母乳でもミルクでも赤ちゃんが元気に成長してくれることが1番ですし、授乳の時間が赤ちゃんに愛情を注ぎ、絆を育む時間であることに変わりはありません。母乳もミルクもそれぞれ良いところがありますので、ライフスタイルに合った授乳方法を選択してくださいね。
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