排泄障害&下半身麻痺のある猫とご機嫌に暮らすための工夫
私は都内で猫2匹と一緒に暮らしています。そのうちの一匹は下半身に一部麻痺があり、それが排泄障害に転じて、飼いはじめたときは少し苦労をしました。
今回はそんな猫との暮らしについて綴ることで、同じような猫と運命を共にするどなたかの役に立てると嬉しいなと思います。
保護猫「ぼたん」さんとの出会い
まずは猫のご紹介を。名前は「ぼたん」さん。今年で5歳になる長毛種のメスです。グレーの毛に、淡いグリーンの瞳が美しく、思わず「さん」付けで呼んでしまうどこか優美な雰囲気がある我が家自慢の猫です。
彼女との出会いは、私が栃木に暮らしているときのことでした。当時の同居人の友人から「家の駐車場に子猫が住み着いた」という連絡を受け、近所なのもあり、見にいったことがきっかけです。
実際に友人宅を訪ねてみると、たしかに駐車場には小さな猫が転がっていました。まだ生後3〜4週間といった様子で、そんなに小さな猫が一匹でいるのは不自然です。
母猫に置き去りにされたのか、捨て猫なのか詳しいことはわかりませんでしたが、友人は猫アレルギーなのもあり、「そろそろ保健所に連絡しようと思っている」と聞いて、「じゃあ、とりあえず…」と我が家で預かることになりました。
とはいえ、何か病気や怪我があってはいけないと考え、すぐに病院に連れていき、健康状態を確認してみると、獣医さんからはかねがね良好と伝えられ、一安心。
しかし、その日の晩に早くも異変が起こりました。ぼたんさんが何度もおしっこを漏らしてしまったんです。
最初は「初めての家に緊張しているだけかな?」と思っていたものの、私自身が実家で2匹猫を飼っていた経験から、猫という生き物がここまで漏らすのはおかしいと感じ、「あの獣医さんの診断が間違っていたのかもしれない」と考え、後日すぐに別の病院に連れていきました。
「馬尾症候群」と診断を受け、排泄障害と折り合いをつける日々が始まった
改めて、別の病院で診察をしてもらうと獣医さんはすぐに違和感を覚えたのか、レントゲン写真を撮ってくれることに。
診断の結果、尻尾の付け根が折れていることが発覚しました。しかも、折れたのは2週間以上も前で、すでに骨はくっついてしまっている。
それも、くっつき方が歪で、神経に異常をきたしていることから、神経障害に伴う排泄障害があることがわかりました。
骨の折れ方がよくなかったため、交通事故か人間や別の生き物にいじめられた可能性が高いと伝えられました。
診断名は「馬尾症候群」。獣医さんからは「これは病気と違って治すことができない。なんとか折り合いをつけて頑張ってください」と言われ、その日からぼたんさんの排泄障害に向き合う日々が始まりました。
尻尾の麻痺や排泄障害、併発する病気の症状について
ぼたんさんの馬尾症候群の症状は主に次のような感じです。
尻尾の麻痺
尻尾の付け根の神経に障害があるため、尻尾の感覚がまったくありません。また、下半身を動かすのもあまり得意ではないので、高いところにジャンプをするのも難しく、イスに座る飼い主の膝に飛び乗るのがやっとといった状況です。
幸いにも痛みや重度の下半身麻痺はなかったため、日常生活にはそれほど支障はきたしません。
排泄障害
下半身の感覚が薄いらしく、さらに括約筋などの筋肉も弱いため、尿や便は垂れ流しになってしまう状態です。
本人(本猫?)はトイレで用を足したいという意識や習慣があるので、一応トイレは用意しているものの、ほとんど意味をなしていません。
慢性的な膀胱炎&便秘
尿や便を押し出す力が弱く、菌も溜まりやすいので常に膀胱炎と便秘になる危険と隣合わせです。
特に尿が出なくなると、「尿毒症」や「慢性腎炎」など命に関わる病気になりやすく、常に尿や便の排泄量や状態をチェックしています。(血が混じったり、色が濃すぎたりするときは、すぐに病院へ。)
ぼたんさんの排泄障害への対策方法について
そんなぼたんさん二人三脚で、排泄障害があってもいい感じに暮らしつつ、併発しやすい病気を防ぐために、さまざまな工夫をしています。なるべくすべてご紹介するので、参考になると嬉しいです。
ケージとオムツの併用した生活スタイル
ぼたんさんと暮らしはじめて最初に困ったのが、排泄障害とどのように折り合いをつけるかです。
そのままにしておくと、部屋が汚れ放題だし、運動不足になるからケージだけで暮らしてもらうわけにもいかない。
オムツをずっと付けていると、菌が繁殖して膀胱炎を発症する確率が高まる。最初はそんなジレンマで苦労しました。
そこで、現在は1日の半分はケージで暮らしてもらい、もう半分はオムツを付けて、部屋で自由に過ごしてもらうという生活スタイルが定着しました。
いろいろと実験を重ねたところ、オムツは1日5〜8時間程度の着用であれば、病気のなることもなく、快適に過ごせるようです。
猫用のオムツは高価なので、人間用のオムツに尻尾の出す穴を作って履いてもらっています。(切り方など興味のある方がいたらコメントください)
▼ちなみに、オムツはメリーズの新生児用のテープタイプがオススメ。あらゆるメーカーの製品を試してきましたが、こちらが一番ニオイも抑えられて、尿もれもしにくく、サイズも成猫用にピッタリです。オムツ開発をしてくれている企業に感謝。
▼ケージは上下に運動ができるよう2〜3段のものを使っていて、中にペットシーツと猫用のベッドを設置。猫用のベッドはすぐに汚れてしまうので、1〜2日おきくらいに洗濯しています。
▼快適に過ごせるよう、ケージには爪とぎを設置しています。案外ちゃんと使ってくれるので、気に入ってもらっているようです。
エサは「下部尿路配慮」と「便を柔らかくする」製品を選ぶ
エサは基本的にドライタイプのフードのみを与えています。ウェットタイプは水分量が多いので水分補給には繋がるものの、尿のpH値のコントロールが難しく、身体も冷えるので、膀胱炎の原因になるため控えています。おやつも1ヶ月に1回与えるか与えないかというくらいの感じです。
エサを選ぶときの基準は、「下部尿路配慮」の商品であること。尿のpH値のコントロールができることが必須条件です。
▼我が家の猫のお気に入りはこちら。こちらを与えるようになってから、膀胱炎の発症が格段に減りました。
▼さらに、便秘が気になるときは消化器をサポートする療養食をいつものエサに混ぜて与えることもあります。ロイヤルカナンは獣医さんからも勧められ、信頼性が高いのでオススメです。
システムトイレを使って、尿と便の状態をチェック
とにかく膀胱炎と便秘にだけはなってほしくないので、尿と便のチェックは欠かせません。
最初は普通の猫砂トイレを使っていたのですが、鉱物系の砂だと色の変化などがわかりずらいので、最近はシステムトイレを使っています。
▼こちらはケージの中にも置きやすいコンパクトサイズなので、オススメ。
消臭グッズを活用
尿や便を垂れ流しだと、どうしても気になってくるのがニオイ問題。消臭にもかなり気を使っているので、いくつかオススメの製品をご紹介します。(PRとかは1ミリもなく、本当に使ってよかったもののみです)
▼消臭といえば、ハル・インダストリ!このスプレーは空気ごと?消臭ができるので、ニオイが気になった瞬間に吹きかけています。本当にすぐニオイを除去できるので、「どういう仕組みなん?」とビビるレベル。
▼置き型の消臭ビーズもハル・インダストリのものを使っています。正直効果はよくわかりませんが、持ちもいいし、気休めにはちょうどいいです。
▼トイレや猫ベッドに直接スプレーするときは、ニオイノンノの消臭スプレーを使っています。
香料が入っているものや刺激性の強い薬品は猫の身体に負担をかける場合があるので、なるべく避けていますがこちらのスプレーは純植物性消臭液なので、安心かな〜という感じです。消臭効果も謎に高いので、ふつうにオススメです。
冬の寒さ対策
膀胱炎の大敵は寒さ!猫の身体が冷えるとすぐに体調を崩すので、冬の間はペット用のホットカーペットを使っています。
とはいえ、付けつづけると低温やけどを起こしてしまうので注意。ほどよい暖かさをキープできるよう、毛布を挟むなど工夫しています。
▼私はこのホットカーペットを使っていますが、正直どれを使っても大して変わらないので、なんでもいいです。
月1〜2回のシャンプー
排泄障害によってどうしても被毛が汚れてしまうので、月1〜2回はシャンプーをしています。長毛種なのもあり、汚れが絡まりやすいのも困りどころです。
シャンプーは、低刺激で被毛の潤いを保てるリンスインのものを使っています。これも正直なんでもいいのでは?と思っています。
定期的な通院と投薬
日ごろから猫の体調を気にかけて暮らしていますが、とはいえ何があるかわからないので、2〜3ヶ月に1回は通院して検査をしてもらっています。
特に尿や便の状態が気になるので、重点的に検査をしてもらったり、便秘気味のときは座薬をもらったりもします。障害のあるなしに関わらず、かかりつけの獣医さんがいると安心です。
何かあったときのために医療貯金
動物と暮らすうえで避けて通れないのが、「お金」の問題です。日々の飼育費はもちろんのこと、ぼたんさんの場合、もともとの障害があるのでペット保険には加入しずらく、個人的に貯金をしていくしかありません。
一度ぼたんさんが尿毒症になりかけたことがあったのですが、1回1万円以上する点滴を3日1回は受けなければならず、胃が痛い日が続きました…(笑)。
泣き言を言っていても仕方がないので、「コツコツと堅実に貯金!」と考え、毎月猫の医療用貯金をしています。
排泄障害でも暮らせるのは、ぼたんさんの「聞き分けの良さ」のおかげ
ここまでの工夫をしていることを知り合いや家族に話すと、「頑張っていて、えらい」と褒めてもらうことがあるのですが、個人的には「えらいのはぼたんさんのほうだな」と思っています。
窮屈なケージでもご機嫌で、鬱陶しいオムツも文句を言わずに付けてくれて、定期的にやってくる不快なシャンプーや通院にも耐えて、元気に暮らしてくれている姿を見ると、自分がえらいなんて思えない。
嫌がったり嫌がらなかったりしながら、こちらの歩調に合わせて一緒に暮らしてくれるぼたんさんには感謝しかありません。
聞き分けのいい猫で助かっていますが、だからこそ無理をさせすぎないように工夫を重ねていきたいと思っています。
猫とコミュニケーションを取りながら、無理のない暮らし方を模索することが大切
さて、長々と書いてしまいましたが、やはり障害のあるなしに関わらず、生き物と暮らすうえで大切なのは「コミュニケーション」だと感じます。
猫は気まぐれな生き物だと思われがちですが、話せばそれなりにこちらの事情をわかってくれますし、こちらのお願いにもちゃんと答えてもくれる(こともある)。
個体差はあるけれど、こちらの言語コミュニケーションに対応してくれる優しい生き物です。
だからこそ、猫の様子をよく観察して、諦めずにコミュニケーションを取り、猫にとっても人間にとっても無理のない範囲で暮らしを組み立てることが大事なのだと考えています。
ぼたんさんは常に病気の危機に晒されており、獣医さんからも「他の猫に比べて、長くは生きられないかもしれない」と言われています。
でも、我が家に来てくれたのも何かの縁。彼女の最後の1秒まで、一緒に幸せに暮らせるよう、できる限りのことをできたらいいな〜と思っています。
最後になりますが、我が家のようにもし排泄障害のある猫ちゃんや何か事情を抱えている猫ちゃんと一緒に暮らしている方がいらっしゃたら、ぜひコメントをいただけると嬉しいです。
保険や国の制度では守られない存在だからこそ、飼い主同士の連携や情報交換がとても大事だと考えています。一緒に頑張っていきましょう。