あやとり家族17
夫婦喧嘩の内容が、寝たふりをしても聞こえてしまう。指しゃぶりで我慢。それもまた怒られる。
当時のももちゃんにはわからないことだったが、お父さんとお母さんの夫婦喧嘩を聞いて”そうなんだ”と理解してしまっていたことがある。
私は敏感な子どもだったから、夜中でも大きな声で喧嘩していると起きてしまっていた。だけど怖くてお布団から出られずに寝たふりをしていたが、どうしても話は聞こえてしまう。
私が聞いていたことなんてきっと両親は知らない。
原因は、私たち双子の育て方についてだ。
ばーちゃんはすずちゃんをとても可愛がり、あちこち連れ回す。もしどこかに連れていくなら、ももちゃんのことも一緒に連れていってもらいとお父さんに訴えるお母さん。
お父さんはマザコンだから、ばーちゃんのやることに基本口出しはしない=お母さんの味方ではない。「お義母さんに伝えてよ」「わかったよ」
返事だけのお父さん。お父さんはばーちゃんに何か言うことができなかったのだ。
私は、ばーちゃんとすずちゃんんだけで出かけるということが自分の中では当たり前になっていた。たまに誘われて一緒に行けるのは嬉しかったけど、その分じーちゃんと仲良くなっていたから家で遊んでいるだけで充分だった。
こんな内容の夫婦喧嘩をしょっちゅう聞いていたから、喧嘩や争いごとがとても嫌になっていた。喧嘩がエスカレートすると怖くなって「おしっこ」って言って起きることにしていた。私が起きると一旦喧嘩はおさまるし、私が眠りにつくまでこの喧嘩は止まっている。
それだけの仕事を小さい頃からしていたんだ。
お母さんはヒステリーだったから声も大きくなる。ももちゃんのことを思って言ってくれていたんだと思うけど、結局は自分で双子を育てられていないジレンマの方が強かった。
だからかな、そのジレンマを時折ふらっと私にぶつけてくる。
ももちゃんは、いつも指をしゃぶっていた。それをお母さんに怒られていた。だからお母さんに見つからないようにしゃぶり続けていた。でも子どもだからわかりやすいよね、すぐに見つかっては怒られる。
あなただよ、原因は。
私たち双子は母乳で育った。双子だからかお乳が欲しいときは同時に泣くけど1人ずつしかあげることができない。初めのうちは、交互に飲ませていたらしいが、すずちゃんの泣く声が非常に大きくうるさいからすずちゃんから飲ませるようになっていったと。
そのうちももちゃんが指をしゃぶることを自然に覚えたらしく、すずちゃんがお乳を飲んでいる間指をしゃぶって待つようになったって。
それからは、必ずすずちゃんを先に飲ませてその後ももちゃんにお乳を飲ませるようにしたと。
「助かったわ、ももちゃんは指をしゃぶって待っていてくれたから」
こう言っていたのに、時が経つと「また、指しゃぶって!いくつだと思っているの」って怒られる。
都合のいい時だけ褒められて、成長するにつれ世間体を気にしていたのか「恥ずかしいからやめなさい」だって。今度は怒られる。「ごめんなさい」
また我慢だ。夫婦喧嘩の最中も指をしゃぶって寝よう寝ようって工夫していたんだよ。指をしゃぶるとなぜか落ち着いたから。
怒られ続けて、指しゃぶりを卒業できたのは小6の時だった。