あやとり家族37〜じーちゃんが死んだ〜
家には帰ってこなかった
じーちゃんが死んだ。
中学2年生だった。足を骨折して手術して帰ってくるはずだった。
入院中に精密検査をしたところ、心臓にも悪いところが見つかった。
骨折の手術は成功したものの、入院を機に小児喘息だったじーちゃんは喘息を再燃させた。
日に日に悪くなる一方だったようだが、親からはそんな知らせはなかった。
本当のじーちゃんではないことから、じーちゃんの世話はじーちゃんの本家の方と一緒に行っていたらしい。
だから面会もあまり行かせてもらえなかった。
私もすぐに帰ってくると思っていたし、中学生で授業や部活で忙しくもあった。
ある日、校内放送が流れた。
「3年3組上田くん、2年3組上田さん、2年4組上田さん、至急職員室に来てください」
絶対にじーちゃんだと思った。
すぐに行くと先生からお金を渡され、タクシーに乗ってすぐに病院に行くようにと言われた。
タクシーは既に来ていて病院に向かう。
すずちゃんはすぐに泣き始めた。
また、これだ。
病院に着くと危篤状態で、病室の中に入ると酸素マスクをしていた。
状況がうまくつかめなかったが、かなり危ない状態ということはなんとなくわかった。
だから夜家族が付き添うことになった。私は付き添いたいと言ったが、無理だった。
それはじーちゃんの本当の家族が付き添うためだ。
何かあれば連絡が来る。それ以上のことはできない。
家に帰って考えていた。
骨折れて手術して帰ってくるはずだったのに、なんでこんな状態になっているのか。小さい頃の記憶から目まぐるしく蘇ってきて脳内多動の状態だった。
そしてその夜じーちゃんは亡くなった。
聞いたのは朝になってからだ。
私の大好きなじーちゃん。
なんですぐに教えてくれなかったのか、お母さんに聞くと、
本当の家の方に戻るからその準備があるから行っても邪魔になるからと。
じーちゃんの洋服も、お箸も、何回も乾かしては使っているティッシュも家にあった。
だけどじーちゃんは帰ってこなかった。
数日後、じーちゃんが焼かれ骨になっている姿をみた。
しかも遠くから。
じーちゃんの本家で葬儀を執り行っていた。
参列者の中には、家に住んでいたことを知らない人もいるから
おおっぴらに参加することができなかった。
みんなが骨を骨壷に入れ終わると、よしえおばちゃんが
「待たせてしまってごめんなさいね、どうぞ」って声をかけてくれた
初めてのお葬式。最後の小さい骨を拾う。
そのためだけに来た。だから入れ終わるとそそくさとその場を立ち去るしかなかった。
遺影の写真ではじーちゃんが笑っていた。
じーちゃんは写真を撮る時、いつも笑わない。ただ一枚だけ笑っている写真があって、それを私が見つけてじーちゃんに渡していたんだ。
じーちゃんも気に入っていたようで、それが遺影の写真となっていた。