あやとり家族38〜明るく振る舞うのが当たり前になって〜
夫婦喧嘩は私が高校生になっても続いていた
喧嘩が始まると
「お父さんはいつもそうやって逃げるからずるい」とお母さんが言う
「帰ってきてすぐワーワー言うなよ、可哀想だろお父さん。なあ、ももちゃん」
そうしてお父さんは私を逃げ場にする
どっちの味方にもなれない、両親の気持ちがわかってしまうから
そんな時は”アイーン”とかいきなりやってみたり
この間部活でね、、、と話を変えるように徹する
お母さんは私を味方につけるように、わざと私の前で喧嘩していたようにも思う
喧嘩をしている状態を見るのが嫌でしょうがなかった
お父さんが出かければ、その愚痴は私に向かってくることもわかっていて
お母さんは「ももちゃんは明るい子」と他人にいつも言っていた
明るいんじゃない
そうしていなければどうしようもなかった
無理やり明るくすることが当たり前になって
自分で無理しているということに気づいていなかった
お父さんは”ももちゃんは天真爛漫な子”
”わかっていないようでわかっている不思議な子”
と言っていた
とにかく家の中では、明るく振る舞った
部活をやっていたおかげで、家にいる時間があまりなかったのは幸いなことだった
心の拠り所、安心できるところは部活だけだった
そんな部活も引退の時が来る
引退した後は何をして良いのかわからず、ただ周りの友達はどんどん垢抜けていった
部活に入っているとまともなオシャレができない。だからみんなこぞってオシャレを始める
”えっ!この子が?”という子が当時流行っていたルーズソックスを履いている
正直羨ましかった
私も履きたくて勇気を持って履いて行ったことがあった
男友達が多かった私は早速からかい始められる
「ももがルーズソックス履いてる」
言われた瞬間、顔が真っ赤になり恥ずかしくなる
”私だってオシャレしたい”心の中ではそう思う
中学生の頃、双子のあだ名が白黒と言われ
私は男っぽいというレッテルを貼られたから
それをまた思い出してしまう
自分を表現することがこんなに難しいなんて
そして双子で同じ高校に通っていたものだから
「すずちゃんは可愛いけど、ももは男っぽいからな」
って比較されることも多かった
男っぽいのは良いけれど、女だから
そういう一面もあるんだ
すずちゃんは可愛くしている
だけど、私が同じことをすると外野が何かしら言う
本当はオシャレしたかったけど、ジャージを着て過ごすことにした
それだったら何も言われない
人のためにはできても自分のためにはできなくなっていた
表現することさえ、してはいけないとしか思えなくなっていた
家に帰れば、明るいももちゃんを演じて
去年、生きづらくなって病院を受診した
そう。受診するまで、こんなに無理していたことを、何十年もわからなかったんだ