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お稽古場探訪⑫【澤田宏司 先生】江古田舞台

宝生流能楽師の先生とお弟子さんに
能を「習うこと」の魅力をお話いただきます。

「能を習ってみたいけど、誰に習ったら良いか分からない。
先生の雰囲気を知りたい。
稽古場の情報を教えてほしい。」

という方はぜひご参考にどうぞ!

第12回目は
澤田宏司(さわだ こうじ)先生です。
江古田舞台でのお稽古についてお話を伺いました。

▪️澤田宏司 Sawada Koji
シテ方宝生流能楽師
昭和44(1969)年、三重県出身。2005年入門。
19代宗家宝生英照、20代宗家宝生和英に師事。
初舞台「敦盛」ツレ(1998年)。初シテ「忠信」(2005年)。「石橋」(2012年)、「道成寺」(2013年)、「乱」(2014年)を披演。


──澤田先生の稽古場情報を教えてください。

東京の江古田駅から徒歩5分くらいにあるマンションの一室をお稽古場として使っています。もともとは3LDKの部屋で、十数年前に壁を全部取り払って、稽古舞台に改装しました。
田町の公民館でもお稽古していたのですが、今は閉鎖されてしまっていて、最近、神保町駅近くの「ひまわり館」という公民館で始めました。
他には、長野の松本で月2回、京都でも月2回お稽古しています。

──稽古場の特徴を教えてください。
私と母は以前、渡辺三郎先生に習っていたのですが、この鏡板には渡辺三郎先生のお宅の松と同じものが描かれています。江古田舞台を造るにあたって、渡辺先生のお宅の松に似せて武蔵野美術大学の学生と卒業生の2人が一週間泊まり込んで描いてくれました。

白梅は学生たちのこだわりで追加されたそうです。

残念ながら渡辺先生の舞台は今では残っていないのですが、取り壊す前にお宅にお邪魔して、鏡板を外してトラックで京大生と一緒に運びました。今は京都大学の部室で大切に使わせていただいております。私にとってこの松はとても思い入れ深いですね。

2022年のドバイ万博日本館のパビリオンの映像には全国の鏡板がいくつか映っていたのですが、実はこの江古田舞台の松も入っています。光栄なことに、この松を使いたいとお声がけいただきまして、撮影に来られました。

──お稽古で大切にされていることは何ですか。
私は能楽師の家柄ではなく、京都大学の能楽部宝生会に入部したことがきっかけで、謡と仕舞の稽古を始めました。
現在、私は母校で大学生に能を教えていまして、私自身もそうでしたが、論理的に理解したい学生も多く、わりと何を質問されても答えられるようにしています。「言う通りやればいいんだ!」という頭ごなしの指導は、今の時代では通用しないような気もしますので。

能は他の習い事と比べて敷居が高いと言われていますが、敷居を下げるために能に付随するいろいろな面白い雑談をよく言うようにしています。
例えば、能は京都が舞台になっていることが多いので、その背景となる知識や観光情報を伝えています。能「敦盛」でしたら、熊谷直実が出発する場所は謡本には載っていないですが、調べてみると実際には黒谷という京都のお寺から出発していて、敦盛のお墓もあるんです。


──先生の今後の公演情報を教えてください。
12月五雲能では「土蜘」の頼光を勤めます。「土蜘」を初めてご覧になる方でも、内容がとても分かりやすいので、楽しんで観ていただけるのではないでしょうか。

⭐️12月五雲能のチケット

また、1月宝生会特別公演では「翁」を披かせていただきます。私にとってはおそらく一生に一度になると思います。
「翁」の場合は、うまく勤めることは望まれていないらしく、それよりも平穏無事に勤めることによって世の中の平穏無事を祈ることの方が重要だそうです。間違いのないように、言われたことをきちんとやっていきたいと思っております。

ちなみに12月で頼光の従者をやる鶴田航己は、私がずっと教えていまして、1月の「翁」で彼は千歳を勤めます。両方の公演で一緒の舞台に立たせていただきます。

鶴田航己さん

⭐️2024年1月宝生会特別公演のチケット


──これから能を習ってみたいと考えている方にメッセージをお願いします。

やってみたらすごく面白いです。私は、絵を描いたり、ハイキングやダンスをしたり、能も他の習い事と同じような土俵になってほしいと思っています。誰でも絶対気軽にできるように教えますので、難しく思わずに来てくださったらいいですね。

⭐️ 澤田先生の稽古体験やお問い合わせはこちら

メールアドレス:
sawadak0515@yahoo.co.jp


■澤田先生のお弟子さんにインタビュー

──お稽古を始められたきっかけを教えてください。
私の姉がとても熱心に能の稽古をしていて、その姉と一緒に、初めは宝生流の堤由美子先生のもとで習っていました。
堤先生が亡くなられた後、姉はどの先生につかせていただこうかと非常に悩んでいました。入院中の堤先生に何度かご相談にもあがりましたし、私は堤先生でお稽古は退いておこうと思っておりました。いろいろな先生方を拝見しましたが、最終的には姉が「澤田先生が素晴らしい!」と惚れ込んで、姉妹で澤田先生につかせていただくことになったんです。

姉は1年ほど前に他界してしまったのですが、姉は小さな能楽教室を営んでおりまして、そのときに通っていた学生さんたちを私が引き継ぎ、澤田先生の会に入門させていただきました。
今は謡を正しく学べればと思って精進しております。

──先生のお稽古の雰囲気はどのような感じですか。
仕舞、謡、非常に秩序感のある、論理的な教え方をしてくださいます。ご親切なのはもちろんですけど、正しく、その方たちの個人の良さというのが出るように先生が指導なさっているように感じます。
澤田先生に出会って、能ってこんなに素晴らしいものなんだと思い知りました。

──発表会には参加されていますか。
澤田先生が主宰されている澤風会や郁雲会(澤田先生のお母さまの会)での発表の他に、先生がメンバーの一人の七葉会にも出させていただいております。
次の発表会で私は「敦盛」を舞うのですが、ツレは私が能楽教室で教えている学生が勤めることになりました。先生に配役をお気遣いいただき大変ありがたいです。
その他に、年に1度、11月に私の能楽教室に澤田先生が来てくださって、姉が残した「子どものためのおさらい会」というものを先生が率いてくださっています。今年で4回目になりました。

──周りで能を習ってみようかと悩まれている方がいたらどのようにお声がけされますか。
古い芸能が残っている日本で、能を習うことはとても価値のあることだと、普段から能楽教室の子どもたちに伝えています。高校生の教え子に最初、「能を学んでみない?」と聞いてみたら、「やってみるよ!」とすぐ返事をくれました。次にその親御さんにどのように説明したらいいかなと考えて、率直に「月に1度でも澤田先生にお会いすれば、澤田先生の人格を吸収することになるから、それが素晴らしいことだと思う。」と言ってお母さまを口説いたんです。
子どもたちは謡を通して、国語に目覚めていく感じが見ていて分かります。勉強ができるようになりましたし、運動が得意じゃない子も自然と体幹が鍛えられて、姿勢が良くなってきました。子どもたちは能のお稽古からいろいろなものを吸収している感じがしますので、ぜひお子様の習い事としてもおすすめしたいです。


■学生さんにインタビュー

能楽教室や澤田先生のもとで習っている学生さんが2名来てくださっていたのでお話を伺ってみました。

──学校で能を習っている同級生はいますか。
小学生:実際に能を習っている同級生は周りにいないんですけど、友達のおじいさんが能の先生だったり、舞踊をやっている子はいるので、情報共有することもあります。

中学生:僕は能楽教室に同級生がいます。能の話はあまり学校ではしていないですが、大学での展示に学校の行事として行ったことがあって、日本古典芸能のコーナーに能の面などいろいろ展示されていました。面をつけさせてもらったんですけど、僕はそれまで面をかけたことがなくて、だけど先生たちから面をかけたら視野が狭いとか、下が見えづらいとか聞いていたことを覚えていたので、すごく役立ちました。自分で触れたことがなかったので良い経験になりました。

──発表会での思い出を教えてください。
小学生:前回の発表会では失敗してしまったんですけど、地謡の方がカバーしてくださって良かったです。
中学生:七葉会ではいろいろな先生方がいるので、声をかけられることもあれば、声をかけることもあります。最初は緊張しましたが、話してみると先生方はみなさん気さくでやさしいです。




インタビューにご協力いただきありがとうございました!


⭐️澤田先生の「推し面」についての記事も併せてどうぞ!


インタビュー日時:11月21日(火)、江古田舞台にて。

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