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【読書日記】『津山三十人殺し最終報告書』
岡山県出身です。と言うと、たいてい次に聞かれるのは「どこ?」このどこが果たして日本地図上で岡山県の場所がわからないと言う意味なのか、岡山県の中のどこという意味なのか、ニ択になるだろうと思う。
それでもまあ、どこと尋ねらると、私はあまり深く考えず津山市ですと言う。
津山市ですと言うと、聞いてみたもののどこなのか分からなくて押し黙る人がほとんど。そんな中でも「ああ津山ね」と言う人は親しい知人に津山に縁がある場合以外はここから大体ニつに分かれる。
B'zの稲葉浩志さんの出身地ですね?
あぁ津山三十人殺しの?
こんな極端な二択になる。
八つ墓村の撮影が津山周辺で行われていたことなどもあり、津山三十人殺しに関してはふんわりとした情報は知っていた。
20代の時に友人にある漫画を紹介された。それが山岸凉子先生の『負の暗示』津山三十人殺しを題材にしている漫画だ。ああ、このせいで「夜這いってまだあるの?」とか言われるわけかあ、と苦笑した。
『負の暗示』で何よりも強烈だったのは三十人殺しに向かうその出立ちだ。
詰襟にゲートル、頭の左右に懐中電灯、胸にライトを下げ、猟銃に日本刀。
衝動的に殺人を犯したという言い訳が一切できない。鬼気迫るものがある。
この漫画とウィキペディアの情報が私の津山三十人殺しの認識だったのだけれど、TLに『津山三十人殺し最終報告書』なるものが流れてきて、これは読んでおこうとすかさず予約をした。
読んでみて当たり前のように知ってる地名がちらほらと出てきて、なんとも言えない臨場感に手に汗を握る。
まず驚いたのは三十人殺しの殺人犯である都井睦雄が残した三通の遺書が読めてしまうこと。
そして、その遺書の長さ。三通もありその内容がすごく具体的なのだ。もしかしたら、この遺書を残すことこそが都井睦雄の一番の目的だったのではないかと疑ってしまうほどの長さ。
そして、その遺書からは、彼が非常に知的な人物であることが伺える。
その彼がどうしてこのような兇行及んだか、そのそれまでに、そこに至るまでの経過が詳細に描かれており、また、都井睦雄は事件に至る兆候は前々から見せていたようだったこと、銃の腕前が確かだったことなども分かり、より事件が生々しく伝わってくる。
司法省刑事局が作成した「津山事件報告書」がアメリカのスタンフォード大学の図書館にあることや、これまで刊行されたものの中にフィクションが織り交ぜられていたことなど、大変興味深く読んだ。何より著者の石川清さんのこの事件に関する取材量に舌を巻いた。
86年前の事件だけれど、抱えている闇や人間というものは現代にも通じている。そう強く感じた。
おすすめです。