![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/107693192/rectangle_large_type_2_0675709ad730545f7c01cb8c114cbf80.jpeg?width=1200)
なりすます言葉
「お互いさま」という言葉がある。
こちらに対して相手が遠慮したとき、「お互いさまですから」とひと声かける。
誰かが失敗したことを悔やんでいるとき、「お互いさまです」と言って手を差し出す。
そんな「お互いさま」にはきっと、相手を安心させたいと思う気持ちが入っている。
誰かと言い争ったときの「お互いさま」。
自分が正しいと思っているときの「お互いさま」。
これはよくない。
はたして本当にお互いさまなのか。
相手の不快と自分の不快が、釣り合っていると言い切れるのか。
もしかしたら、その中身は大きく違うかもしれないのに。
相手の真意もわからぬうちに、責めていることもあるかもしれないのに。
一見、中性的な言葉に思える。
けれど実際はそうでもない。
同じ言葉でも、ほんのすこし語気が変わるだけで、まるで別の言葉になってしまう。
線路のポイントのように、一気に進路が切り替わってしまうこともある。
紙の上にある言葉。
口から出た言葉。
同じ形をしていても、伝わる温度は異なる。
「お互いさま」は、互いのことを大切に思うときに使うもの。
ただ自分を守るためだけに使ってはいけない。
「お互いさま」の殻を被った凶器になってしまうから。
![](https://assets.st-note.com/img/1686210969140-rXEB0MgjEm.jpg?width=1200)