【日本神話⑨】天孫降臨 灰にまみれて
天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫・邇邇芸命(ニニギニミコト)が高天原から地上の中津国に降り立った候補地は二つ。前回は宮崎県北部の高千穂峡を紹介しました。今回はもうひとつの候補地、宮崎県南部と鹿児島県北部の県境に位置する高千穂峰へ行ってみたいと思います。
まず霧島神宮でお参り。ニニギを祀り、関連する神事も行われているそうです。赤色の建物と彩り豊かな装飾が印象的です。江戸中期に島津家が建てたものだそうです。神宮の背後というか北に位置するのが高千穂峰です。
写真の背後の山が、今回の旅で目指すゴールです。駐車場の先に鳥居が見えました。これは「霧島神宮古宮址」の鳥居です。記録では6世紀の欽明天皇の時代に社殿がこの辺りにあったのですが、火山噴火により一度焼失したようです。10世紀になって再建されましたが、その後にまた火山の消失。離れた仮宮に移された後、江戸時代になって先に紹介した赤い社殿が現在地に移動して建設され、今に至るそうです。
駐車場の最初の鳥居をくぐると、もうひとつ鳥居が見えてきました。神籬斎場(ひもろぎさいじょう)という祭事を行う場所だそうです。
正月早々に登山しているわけですが季節柄、木々に緑はなく、岩と火山灰、砂だらけの山肌と相まって、中々の迫力を醸し出していました。そうそう、火山ですから足場は土ではなく灰混じりの砂。急斜面でズボズボと足が沈んだり、ズルズルと滑ったりして、とても登りづらかったです。登山靴より長靴が最適かもしれません。私も車に常時積んでいた長靴が役立ちました。
高千穂峰は標高1574mのコニーデ火山。コニーデ火山というのは円錐形で火口を持つ山の形式だそうです。二子山のような形をしており、ひとつ目の山頂に火口が現れます。さらにそこからもうひとつ山を登っていきます。木々に囲まれた参道のような道は最初だけ。急斜面を登り始めると植物は皆無でした。
火口を横目にぐるりと馬の背を歩いて行きます。ここで終わりならよかったのですが・・・木々がないため山頂がよく見えます。そして、よく見えるがゆえに絶望感に襲われますね。ゴールはまだ、あんなに先なのか・・・と。
この登山の見どころでもある火口と馬の背を終えると、少し下って最後のアタック。ここら辺ではもう、黙々と歩いています・・・ジグザクとゆるやかなに斜め道で勾配をクリアするでもなく、山頂までほぼ真っすぐ登り続けます。
疲れていたので、これが霧島神宮の元宮だと知るのは後になってからでした。よくある「山の神様の社」ぐらいの感覚でしたね。もちろん、ここまでのお力添えのお礼と、これからのお助けをお祈りしました。ようやく小休憩。そして登ります。
最後の急勾配が辛いです。ここから足が止まりかけてきました。正月なので気温は問題ないのですが、やはり火山灰の山は足が疲れます。よく晴れたおかげで景色は中々良いのですけれども。写真撮りながらってのも疲れを助長します。
ようやく山頂へ到着しました。駐車場から写真を撮りしながら約1時間30分。この規模の山でこれが速いのか遅いのかは分かりませんが、無事にゴールできました。私は登山趣味はないのですが、こうした歴史の物語がある場所なら喜んで登ります。山城とかね。
山頂のこれは何かというと「天逆鉾(あまのさかほこ)」。一説には大国主命(オオクニヌシノミコト)が国譲りの際に差し出した聖なる矛。一説には伊弉諾命(イザナギノミコト)と伊弉冉命(イザナミノミコト)が天から地上の様子を探った「天沼矛(あまのぬまほこ)」とも。また、ニニギ(またはアマテラス)が降臨地に突き刺した矛・・・などなど。
現在刺さっている鉾はレプリカだそうです。元々あったものが火山で破損し、作り直されたそうです。柄は地中に残っているそうです。刃の部分は神社に奉納されましたが、人の手を転々として行方不明だそうです。そもそも矛はいつからあるのか・・・不明だそうです。ただし、幕末に坂本竜馬が妻・お竜と「新婚旅行」で訪れた際、竜馬はふざけてこの矛を引き抜いたりしたそうです。その様子を綴った本人の手紙も現存しています。今はもちろん、触ったり抜いてはいけませんよ。
でも、デザインは異様ですね。地中に突き刺さっているのに、柄の部分から3本の刃が天に向かって伸びています。NHK大河ドラマ「龍馬伝」で竜馬(福山雅治)が矛を引き抜くシーンを撮影した際の小道具の矛を飾っていた資料館で聞いたのですが「いつぞや、どこぞの宗教団体が勝手にくっつけた」と言っていたのを記憶しています。ウソかホントか???
山頂で撮影を済ませたら、おにぎり食べたり水飲んだり。ぐるっと360度のパノラマを眺めたり。最初は登るかどうか迷いましたし、どれほどの規模で、どれだけ時間がかかるかも分かりませんでしたが、迷わず行けば道は開けました。
登山時間は写真の記録の通りです。坂本龍馬の妻・お竜も幕末当時の和装で登れたのだから、行けるだろという根拠もありましたけどね。こうして詳細に記事をかけたことも含め、今振り返ってもよい正月登山となりました。合掌。
霧島神宮と高千穂峰↓
表紙の写真=高千穂峰山頂の「天逆鉾」(2014年1月2日撮影)
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