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明暗のコントラスト(映画「地面師たち」を観て)

「一気に観てしまった」という声が大多数だった「地面師たち」。僕も一気に駆け抜けました。目を瞑りたくなるシーンも多かったけれど、スリリングでタイトで面白かったです。

綾野剛さんの憂いを帯びた演技も良かったけれど、お笑い芸人マテンロウのアントニーさんの明るさに救われた感があります。予想だけど、撮影進めていくうちに役が増えていったんじゃないかな。これからドラマ(なんとなく映画じゃなくてドラマな気がする)の仕事が増えていきそうな気がします。

「地面師たち」
(監督:大根仁、2024年)

アントニーさんの名前を冒頭に出したけれど、このドラマの面白さは、明暗のコントラストによるものでしょつ。

基本的に綾野剛さんや豊川悦司さんの抑制された「暗」の演技が目立つのですが、アントニーさんや染谷将太さんのような明るいキャラクターもいる。またディールが成功して(したと思い込んで)、酒宴やセックスに励む人たちの天にも登るような嬉しさ。明暗、あるいは天国と地獄。そのコントラストがジェットコースターのようにバリバリに勃発していました。脚本に定評のある、大根仁監督の手腕によるものといえます。

そしてこの作品が異質だなと思うのは、どのキャラクターにも感情移入ができないことだ。普通は、地面師に騙されて家族が破滅した綾野剛演じる巧海に感情移入するものですが、地面師という犯罪に手を染める巧海に肩入れすることは、どうしてもできない。実際彼が犯罪に手を染めたことで、多くの騙された人たちが命を落としている。かといって家族を放置してきたリリー・フランキーさん演じる刑事や、地面師たちに騙されたデベロッパーに同情することもできない。「こいつら、なに茶番をやってるんだ」と冷めてみてしまったりします。

【人間は、土地の所有を主張したことで不毛な争いが始まってしまった】

豊川悦司さん演じるハリソン山中の言葉で、ここに土地を巡るやりとりの不毛さを物語っているように思えてしまいます。それでも面白く感じてしまうのは、人間の滑稽さが物語で溢れんばかりに描かれていたからでしょう。

希少性の高いウイスキーに関する、ハリソン山中の批評も面白かったです。どんな言葉を口にさせるのか、原作があるとはいえ、編集の妙が満載だったドラマでした。夏休みのエンタメにオススメです。

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テレビプロデューサーの佐久間宣行さんがホストを務めたYouTubeも面白い。

大根監督自ら原作の出版元である集英社に出向いたというエピソード。坂元裕二さんもポッドキャストで話していたけど、一流のクリエイターこそ、大事なことは人任せにせず足を使うんだなあと感じました。

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ほりそう / 堀 聡太
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