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わずか73分のハードボイルド・エスケープ(映画「真夜中の虹」を観て)

「真夜中の虹」
(監督:アキ・カウリスマキ、1988年)

フィンランドを代表する映画監督のアキ・カウリスマキさんによる、1988年製作の作品。わずか73分という短い尺の中で、淡々と物語が進んでいく。

失業、貧しく未来の展望が見えない暮らし、父の自殺、全財産を奪われる、その相手を殴ったら刑務所に収監される……。

「ついていない」というには過酷すぎる境遇なのだけど、主人公のカスリネンはちゃっかりパートナーを見つけ(両者、一瞬にして恋に落ちる)、なんだかんだ「ここではない、どこかへ」と逃亡に成功する。

正直なところ、主人公には全く感情移入できない。

また、現代映画に慣れている人にとっては、あまりの展開の速さ(拙速といってもいい)に興醒めしてしまうかもしれない。

それでも、ひとつひとつのシーンの切り方は見事としか言いようがなくて。たった73分間の中で、映画の外枠に染みているような情緒を感じることができる。何より、拳銃自殺した父が残したキャデラックは、車好きでなくとも「カッコいい!」と思えるだろう。ボーッとしてたって、この車が「特別」だってのは容易に理解できよう。

映画とは総合芸術で、クリエイティブの結晶である。そんな当たり前の事実が再確認できる、1980年代の名作だ。

映画史に残る、ひとつの映画のありようとして、カウリスマキの過去作品に触れてみるのも悪くない。

──

2023年9月から、Amazon Prime Videoにけっこうな数のカウリスマキ作品が配信開始になっている。

12月には5年ぶりの新作「枯れ葉(原題:Kuolleet lehdet)」が公開予定。それまで彼の過去作品もチェックしてみてはいかがだろうか。

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