Patriotism is the last refuge of a scoundrel.(愛国心はならず者の最後の逃げ場である)
Patriotism is the last refuge of a scoundrel.(愛国心はならず者の最後の逃げ場である)
イングランドの文学者、サミュエル・ジョンソンの言葉だ。ナショナリズムが政治信条として人気がないのは、ロジックとしてわりとすぐに限界が訪れるからだと聞いたことがある。
愛国主義に関する言説は、それがたとえどんなに立派な言葉で飾られていても論理破綻を起こす。独裁者による専制国家に陥る可能性が否めないからだ。
だから、まともな人は「愛国心」という言葉を聞くだけで警戒する。
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映画「教育と愛国」を観た。
「思想の強い映画ではないか」と思って敬遠していたのだが、監督を務める斉加尚代さんの舞台挨拶を聴けるという機会があったので、遅ればせながら鑑賞した。教育業界に関わる / 興味のある方は必見であろう。
現実に、愛国心の精神は、公教育の現場でじわじわと侵食している。時折、報道でも伝えられる教科書検定に関するニュースはその一端であり、2006年の教育基本法改定を皮切りに、ますますナショナリズム志向が強まっていることが作品の中で示されていた。
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例えば慰安婦問題。
通説に基づき、教科書ではこれまで「従軍慰安婦」「強制連行された」といった言葉が記されていた。それを「自虐史観」と批判するのが、新しい歴史教科書をつくる会に見られるような保守色の強い勢力だ。そういった一部の勢力は、そういった歴史観を保とうとする教科書を嫌悪する。なので教科書を採択している学校に対して、相当数の抗議葉書を送りつけるなどの嫌がらせをしてきたという。
そういった、ある意味で「目立たない」抗議活動にとどまらず、近年は教育現場における政府介入が露骨になってきた。2021年、菅政権は以下の通り、閣議決定する。
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慰安婦の研究をしている、大阪の公立中学校で教鞭を振るう平井美津子さんは、「歴史を教えるうえで「戦争」の被害と加害を学ぶことは、とても大切だと思うようになったという。
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このような教育への思いを持った平井さんは、心なき人たち(政治家を含む)によって、かなりのバッシングを受けたという。
平井さんは「慰安婦の問題は、いまの問題でもある」と語る。
戦争加害に対する認識を、どのように現代を生きる僕たちが捉えるのか。戦争加害を正しく認識するのか、真っ向から否定するのか。あるいは事実を知りつつも目を背け傍観者の立場をとるのか。
本作を観て、改めて自分の無知を思い知ると共に、思いを持つ人たちの熱意をそぐことに加担する傍観者であってはいけないと強く思った。
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憲法では、「学問の自由は、これを保障する」と定められている。
それを「国益のため」といって侵そうとする政治家が、いかに多いことか。「やらない善よりやる偽善」を堂々と唱える政治家が賞賛される今を、僕は非常に懸念している。
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ナレーションは井浦新さん。抑揚がないトーンながら、怒りと憤りが伝わるような素晴らしい朗読だった。
「教育業界に関わる / 興味のある方は必見」と書いたところで、タイトルの重さに敬遠して、たぶん観られることはないだろう。
じゃあ、あなたは何を観るのだろう?Yahoo!ニュース?政治家のツイッター?暴露系議員のYouTube?
なんだって構わないけれど、丁寧な取材に基づくソースを覗いてほしいと切に願っている。
(映画館で観ました)
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