忙しくしてしまうのは何故だろう(ジュリエット・ファント『WHITE SPACE ホワイトスペース〜仕事も人生もうまくいく空白時間術〜』を読んで)
タスク管理ツール「Todoist」には、いつだって「期限切れ」のタスクがたっぷり詰まっている。一生終わらないタスク量、首が回らない日々がデフォルトになっている。
そんなとき、「いかに効率的にタスクを処理するか」といった発想になりがちなのは何故だろう。
少し落ち着けば、やるべきタスクとそうでないタスクに整理して……といった健全な仕事のやり方が頭に浮かぶのだが、油断すると、すき間時間さえも大小のタスクを詰め込んでしまう。
忙しくしてしまうのでなく、本当は、忙しくなりたいのではないか。
知人が薦めていた『WHITE SPACE』が、直近の悩みを解決してくれるかもしれない。藁にもすがる思いで、頼ることにした。
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(そもそも)忙しさはいたるところにある、らしい。
社会はいつだって「激変期」であるように、人間はいつだって「忙しい」生き物であるらしい。
確かに最近の小学生は習い事だらけだと言われているし、社会人は本業に副業に忙しい。還暦を過ぎた僕の両親も何かと「忙しい」と語っている。
「来年は、もうちょっと忙しさが和らぐと良いな」というのは、あまりに楽観的な希望に過ぎない。「忙しい」ということを前提とした上で、どう働くか / どう生きるかについて考えるべきだと著者は訴えている。
ホワイトスペースとは何か
前項の通り、あまりに忙しく、誰もがマルチタスクでオーバーロードになっている現在。著者が見出した解決策が「ホワイトスペース」だ。
戦略的に休むことで得られる効果は、①回復、②削減、③内省、④構築の4点だという。
そのうち内省と構築のふたつは、クリエイティブな仕事をする上でとても重要な要素だと感じた。
思い出すのは、かなり昔の情熱大陸で爆笑問題が取り上げられていたとき。ボケの太田光さんが、楽屋のソファで横になりながら、焦点の定まらない目でタバコを吸っていたシーンだ。今も昔も多忙を極めている爆笑問題、特にネタを作っている太田さんの忙しさはなかなか想像もつかないほど大変なものだろう。そんな彼が、カメラを全く無視してタバコを吸っている「絵」は、「何もしない」ことで、自身のクリエイティビティをチューニングしていることを示唆していた。
仕組みだけじゃ、変えられない。
比喩として挙げられていた、「レンガとモルタル」の話が面白かった。
現代のビジネスパーソンは、決まって「仕組み」という言葉を口にする。「ホワイトスペースが重要ならば、いかに組織として『戦略的小休止』を取り入れる仕組みを作ろうか」といった発想になるのは、まあ自然のことだとも思う。仕組みのことを、著者は「レンガ」であると考えている。
建築するにあたって、レンガだけをガンガン積み上げていても、何も作り上げることはできない。レンガの目地を埋める素材である「モルタル」が欠かせない。著者は、個人の行動変容のことを「モルタル」であると考えている。
要するに、「サボっていたくない」という強迫観念が、モルタルとしての行動変容を妨げてしまう。「サボっていたら、周りから白い眼で見られるのではないか」と無意識で考えてしまうことで、気付けば「忙しさ」から逃れられなくなっているのだ。
いかに仕組みを考えても、個人やチームの意識が変わらなければ意味がない。そういった意味で、「サボっても良いじゃないか」といった雰囲気作りが大切だし、それこそが人間らしい生き方だよなあと改めて気付くことができた。
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*Podcast*
ジュリエット・ファント『WHITE SPACE ホワイトスペース〜仕事も人生もうまくいく空白時間術〜』の感想を、読書ラジオ「本屋になれなかった僕が」で配信しています。お時間あれば聴いてみてください。
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