村上春樹も、マティスもミロも。(メイソン・カリー『天才たちの日課』を読んで)
なかなか2023年の目標が定まらない中ですが、数年前に読んだ『天才たちの日課』という本が目に入ってきました。
作家、科学者、音楽家、哲学者、科学者など、クリエイティブな仕事に携わってきた161人の「DAILY RITUALS(日課)」を紹介した一冊です。
──
クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々
副題の通り、本書で紹介されている人々の多く(本書に倣い「天才」といいます)が、クリエイティブな仕事をするために「日常的な習慣」を大切にしていました。(例外もいます)
だいたいの特徴は、
・朝、仕事をする(夜型もいる)
・コーヒーなど、仕事に取り掛かるためのスイッチになるものがある
・仕事場が決まっている(多くが机だが、ベッドという天才も)
といった感じ。
本書の「はじめに」でも、こんなふうに紹介されています。
この本を読むと、多くの天才が、日々の仕事を淡々とこなしているようにみえます。それは現代のSNSで、著名人やインフルエンサーがアップしているような華やかな生活とはまるで正反対です。
習慣化に執念を燃やした村上春樹
本書で唯一紹介されている日本人は、村上春樹さんです。
有名な話ですが、村上春樹さんは小説を執筆する際、毎朝早く起き、コーヒーを飲んで長時間の執筆に励むそうです。午後はランニングや水泳をしたり、翻訳書を手掛けたり、音楽を聴いたり。そういったリズムを崩さず、デビューから40年以上、一貫した態度で仕事に取り組んでいるのです。
本書では、2004年に文学誌で紹介された村上さんのインタビューが引用されています。
村上さんはデビュー前、ジャズ喫茶を運営していました。そこでは、1日60本もタバコを吸うヘビー・スモーカーだったそうです。
専業作家になり、安定したクオリティの仕事を実現するために生活習慣を変える決断をしました。習慣化することの大切さを知るだけでなく、「習慣化が大切だ」と思い込むレベルまでいくような執念さえ感じます。
マティスとミロ
近代作家として重要な画家である、アンリ・マティスとジョアン・ミロ。本書では偶然なのか、隣同士でエピソードが紹介されています。30歳差とはいえ、近い時代を生きたふたりですが、仕事に対する考え方は対照的です。
「基本的に、僕はなんでも楽しむんだ。退屈することがない」というマティスは、50年以上、休まずに変わらぬ生活を営んできました。そこにはルーティンの跡もありますが、絵を描くのが好きで好きでたまらない様子が浮かんできます。
一方でミロは、「画家のみろは、決まった日課をかたくなに守った。その理由のひとつは仕事に集中したかったからであり、もうひとつはうつ病がぶりかえすのが怖かったからだ」と紹介されています。
自由なクリエイティビティを感じる、ふたりの絵が僕はとても好きです。なのに、絵に対するアプローチの仕方はこんなにも異なっています。それもまた興味深いといいますか、言ってしまえば三者三様です。
正解なんてどこにもないことを窺わせるエピソードだと、改めて感じることができました。
──
2023年が始まり、早くも10日が経とうとしています。
「新しい年だから、これを習慣化したい!」と思っていた方も、仕事やら何やらで上手くいかないこともあるのではないでしょうか。
「ルーティンを作る」というのは、簡単そうで難しいもの。でも長い目でみれば、必ず当人にとってメリットになることは間違いなくて。
僕も何度も挫折していますが、今年こそ。良い習慣化、ぜひ一緒に頑張りましょう!
*Podcast*
細々とPodcast「本屋になれなかった僕が」を更新しています。
配信開始から間もなく3年。200回を超えて、今後も「世界一敷居の低い読書ラジオ」として、色々な本を紹介していくラジオを目指していきます。リモートワークの合間などに、ぜひ聴いてもらえたらと思います。
■Spotify
■Apple Podcast
■Google Podcast
#読書
#読書日記
#読書記録
#読書感想文
#メイソン・カリー
#天才たちの日課
#クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々
#読書ラジオ
#Podcast
#本屋になれなかった僕が