パリへの憧憬、普通の女の子の心のうち(映画「ディリリとパリの時間旅行」を観て)
かつて訪ねたパリを再訪したような気持ちになれるファンタジー作品です。
「ディリリとパリの時間旅行」
(監督:ミッシェル・オスロ、2018年)
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20世紀頃のパリを舞台に、移民の少女ディリリが難事件を解決する物語。
当時、「男性支配団」を名乗る悪者たちが少年少女を誘拐するという事件がパリ内で多発、ディリリ自身もターゲットとして狙われつつも、当時のパリの著名人(ピカソやルノワール、ドビュッシー、サティなど)と協力しながら困難を乗り越えていく。
ユニークというか、ちょっと腑に落ちなかったのは、ディリリとオレルといったそれほど身分が高くない人たちが奮闘する物語であるということ。著名人に当たり前のように出会って協力を仰いでいく姿が、ややご都合主義のような気がしてモヤモヤした。(まあファンタジーなので、それはそれで良いのだけれど、だったらもっと別の設定があり得たのではないか)
色々なモヤモヤポイントはあるものの、それを上回る華やかなパリの雰囲気。それだけでアート好きにはたまらないだろう。ミッシェル・オスロ監督ならではの色彩感覚も本作が評価されている理由のひとつで、切り絵を数珠つなぎするかのような演出表現は終始楽しい。
「国ではよそ者のフランス人扱いをされてきた。ここ(フランス)でもよそ者扱いでカナックと呼ばれる。両方でいたいの。ほっといてほしい」
礼儀正しく、純粋な好奇心と健全な正義の心を併せ持ったディリリが終盤にこぼした一言。いっけんディリリは勇敢だが、ともすれば同じような立場の子どもたちには敷居の高い行動でもあって。でも彼女自身も実は心が折れることもあるんだ(=それが普通なんだ)というメッセージは、ミッシェル・オスロさんの温かさのようにも感じた。
いずれにせよ、映画の中で展開されるクリエイティブな表現は見応えあり。映画はプロットだけで構成されているわけではない。
無限の、無数の選択肢の中からクリエイターは映画づくりに臨めるんだという気概も感じる作品だ。
若きクリエイターにとっては、大いに刺激を受ける作品に違いない。
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2023年上映されたミッシェル・オスロ最新作「古の王子と3つの花』は、残念ながら鑑賞する機会を逸していました。
予告編を観る限り、映像のレベルはかなり上がっているので楽しみです。
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