問いを、拡大していく。

99回目の読書ラジオでは『社員をサーフィンに行かせよう』を紹介した。

パタゴニア創業者のイヴォン・シュイナードさんの著書で、パタゴニアという会社の哲学が込められた素晴らしい本である。

ビジネスとしての文脈だけでなく、なぜ僕たちは生きるのか / 生きているのかを問うような人生観を揺さぶられる内容だ。社会人の始めの頃に出会った本だが、おそらくこの本を読まなければ、僕の仕事やキャリアというのは大きく変わったものになっていただろう。

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読書ラジオでは想いが先行し過ぎて、いつにも増して支離滅裂で、本の内容についてしっかりと伝えられることができなかった。

そんな後悔を感じていた中で、偶然読んでいた本でパタゴニアのことが紹介されていて。すごく的を射た表現をされていたので、少し長いが下記に紹介したい。

物質主義の世界に背を向けたサーファーでロッククライマーだったイヴォン・シュイナードが(中略)実業家となった彼の胸に浮かんだのは次の問いだった。魂を売り渡さずに生計を立てるにはどうすればいいか。
(ハル・グレガーセン『問いこそが答えだ〜正しく問う力が仕事と人生の視界を開く〜』P239より引用、太字は私)
シュイナードの会社はもともとアウトドアライフに対する自身の愛にもとづいて創業された会社だった。それが急速な生産や流通の拡大に伴って、環境を破壊していいのか。環境への影響を最小限に抑えるにはどうすればいいのか。パタゴニアはこの問いに奮起し、それから何年もかけて、オーガニック素材への移行というむずかしい取り組みを大きく進展させた。
(ハル・グレガーセン『問いこそが答えだ〜正しく問う力が仕事と人生の視界を開く〜』P240より引用、太字は私)
その後、パタゴニアの野心(と問い)は次のように拡大した。地球への悪影響を減らすだけに留まらず、地球への悪影響をゼロにするにはどうしたらいいか。それも、環境だけではなく、社会への悪影響も出ないようにするには、どうしたらいいか。さらには環境によい影響を与えるにはどうすればいいか。そこまで来ると、経済的な繁栄のためには代償を払わなくてはならないという社会の通念に対しても、問いを投げかけることになった。
(ハル・グレガーセン『問いこそが答えだ〜正しく問う力が仕事と人生の視界を開く〜』P240より引用、太字は私)
その問いは社内でさらに次のようにひっくり返された。「もし他社が追随しなかったら?」「もしわれわれが本気で環境を守りたいのなら、他社にまねされることはむしろ歓迎すべきではないだろうか。それどころか、パタゴニアには環境対策についてのノウハウを公開する義務があるのではないか。われわれと同じことをしようとする企業を積極的に助けるべきではないのか
(ハル・グレガーセン『問いこそが答えだ〜正しく問う力が仕事と人生の視界を開く〜』P241より引用、太字は私)
企業が問う姿勢を持つことには、問題を解決できる優秀な人材を引きつけるという利点もある。マーカリオは今、CEOとしてそういう問う姿勢を推し進め、問いをさらに次のように拡大させている。「他社にまねされないことが不快に感じられるようにするにはどうしたらいいか
(ハル・グレガーセン『問いこそが答えだ〜正しく問う力が仕事と人生の視界を開く〜』P241より引用、太字は私)

不易流行という言葉がある。

変わらないこと、変わっていくこと。パタゴニアという会社の本質は「変わらないこと」だと思い込んでいた。実際、イヴォン・シュイナードさんの哲学はずっと受け継がれていくだろう。

しかし、パタゴニアが成長し、社会に影響力を与える存在になったとき、彼らが抱える「問い」は変わっていく。この本の言葉を借りるなら「拡大して」いく。

同じ問いを持ち続けていくのも、場合によっては大切なことだろう。

しかし状況に応じて、適切な問いを発見し、答えを探そうとするアプローチもまた大切なことだ。こだわり過ぎて、古い問いに向き合っていては進化がないし、場合によっては原理主義的なアプローチに留まってしまう。

パタゴニアから学ぶことは多い。何度も読み返したい本です。

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ほりそう / 堀 聡太
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