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『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』映画感想文・単なる映画好きの話ではなかった
ただの青春物語ではないところがすごく良かったです。
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あらすじ
カナダの田舎町で暮らす高校生ローレンスは映画が生きがいで、ニューヨーク大学でトッド・ソロンズ監督から映画を学ぶことを夢見ている。社交性に乏しい彼は唯一の友人マットと毎日つるみながらも、そんな日常が大学で一変することを願っていた。高額な学費を貯めるために地元のビデオ店「Sequels」でアルバイトを始めたローレンスは、かつて女優を目指していた店長アラナらさまざまな人たちと出会い、奇妙な友情を育んでいく。そんなある日、ローレンスは自分の将来に対する不安から、大事な人を決定的に傷つけてしまう。
2022年製作/99分/G/
カナダ原題または英題:I Like Movies
配給:イーニッド・フィルム
劇場公開日:2024年12月27日
感想(ネタバレ含む)
主人公が映画オタクということで、そこに注目する方も多いと思いますが、テーマは少年が人間関係を紡ぐことを学び、成長していくというものでした。
こだわりが強くて周囲と合わせることができずにトラブルを招くローレンス。
元々の特性の上に、父親の死に傷つき、ストレスに合うと抜毛やパニックという身体症状も出ます。
この映画でのローレンスは、今だと発達なんとかで心療内科に行かされたり薬を飲まされたりするかもしれません。
2003年ということもあり、今よりもおおらかで、ちょっと変わってるけどこういう子もいるよね、というあたたかい目線を感じました。
母親、同級生、バイト仲間たちのキャラクター造形もそれぞれ良くて、脇役だからといって雑に扱わず、それぞれが丁寧に描かれていました。
特に、彼をアルバイトに雇ったレンタルビデオ店の店長アラナがとても素敵でした。
陽気で楽しい人ですが、過去に挫折や傷を抱えていて、それをローレンスに打ち明けるシーンには感動しました。
彼女も誰かから心の傷を受け止めてもらいたい、克服したいという気持ちで、4年間店を続けていたのです。
ローレンスには話の聞き役としての力もちゃんと備わっていて、アラナによって引き出されたのでしょう。
そして、アラナも彼との出会いでどこか吹っ切れて、新しく人生を切り開いていくことになり、やはり人って上下関係はあっても、一方が与えるだけではなく、お互いに何かを学ぶものなんだなと思いました。
大学の寮に入ったローレンスを描いたラストシーンが印象的で、とても良かったです。
監督・脚本は、本作が長編デビューとなるチャンドラー・レバックという女性だそうで、デビュー作にしてはものすごく巧いのでは!? と驚きました。
ご自身の経験を踏まえて製作されたそうで、なるほど映画愛があふれていてリアリティがありました。多分スタンリー・キューブリックがお好きなんでしょうね。
数々の映画タイトルが出てきて、各作品への愛情も感じました。
実は、ちょっとタランティーノを彷彿とさせるキャラクター造形なのかなと思ったのですが、映画好きって似てくるものなのかもしれません。
今後楽しみな監督さんのひとりになりました。なんとなくですが、この先全く違うタイプの映画を作るかもしれない、なんて期待しています。
2025年の一本目としていい映画が見られて幸せでした。