若手社員フォロー研修の決定版「3つの前提+4つの原則」
こんにちは。アンドア株式会社の堀井です。猛暑が続く8月ですが、多くの企業では年度後半に向けた準備の時期ではないでしょうか。特に人事部門の皆さまは、今年度末の階層別フォロー研修の検討を始めている頃かと思います。
採用面接ではプロの姿勢、採用してみるとお客さんの姿勢
先日、ある大手企業の人事部長とお話しする機会があり、こんな言葉を耳にしました。
この悩みは、多くの企業に共通するものではないでしょうか。
この悩みの本質は、学生の採用面接を完璧に演じ切るレベルが年々高まっていることです。ではまず初めに、採用と育成を取り巻く問題を2つの側面かた深掘りたいと思います。
1.学生の側面:採用面接で急増する、プロの仮面
10年前と比較して、採用のシーンは激変しました。最も変わったのは学生側が持つ情報の量でしょう。
就活SNSや、X、インスタグラムを開けば採用にまつわる情報が溢れています。個社別の対策指南、志望動機のテンプレート、質疑応答のマニュアル、元採用面接担当自身が動画で評価基準を暴露するなど、採用面接というロールプレイを切り抜けるノウハウが散在しています。
それに比較して、採用者側が持っている情報はこの10年でほぼ変化はありません。エントリーシートから人物像を把握し、面接の場で動機や思いを汲み取るのです。さらに学生側は鍵垢、裏垢(アカウント)によって、検索しても個人の素性がわからないよう工夫しています。
学生の情報量が100だとしたら、採用面接官が持っている情報量は10です。そう言っても過言ではないほど、情報格差が増え、プロの仮面をかぶった非の打ちどころの無い面接が増えました。
2.採用の側面:採用難だから増える、過剰サービス人事
そこに加えて売り手市場も採用の質を歪めています。年々減少する学生数に対して、労働力を確保したい企業側。どう考えても需要に対して供給が追いつかない市場です。
そこで増えているのが過剰サービスな採用プロセスです。
幼少期から現在までを誠心誠意傾聴して親心を印象づける
面接での印象を、他社に生かせるレベルで親切にフィードバックする
就活生の親に向けて会社の説明や質疑応答に応じる
必死な気持ちはわかります。しかし、もはや採用面接ではなく、
親子で考える入社プロモーション大会
と化しているわけです。
つまり、そのプロセスで入社をした当の本人は、
という、完全に待ちで客の姿勢になってしまいます。
若干20年生きてきた方が、大人の一大プロモーションに巻き込まれたらそう思うはずです。
なので、必要なケアをせず「いつまでも学生気分でいるな」と突き放す方が無理があります。
リスク提示:もし3年以上「お客さんの姿勢」で仕事をさせると…
ゆえに、若手社員がお客さんの姿勢で仕事を進めると以下のようなプロセスをたどります。
仕事上、難しい場面に直面する
「私は何も知らないお客さん」の姿勢で上司に相談する
上司は「自分なりに考えてみて」と自発性を促す
「わからないことを聞いたのに突き放された」と、ショックを受ける
これが俗にいう「パワハラ」だと気づく
LINEやSNSでことの顛末を話す
周囲からは「パワハラ」以外の指摘がないため、自分の中で「パワハラ」だとの解釈が固まる
権利や保護を主張する、【守られるべき存在】であることを盾にした【プロのお客社員】が完成する
プロのお客社員はマネジャーに過大な負荷をもたらします。
よって、人事の出番です。採用が難しい今だからこそ、採用後の育成に変革が求められているのです。
今日は、この問題に切り込むべく、「入社3年目までに学ぶべき3つの前提と4つの原則」というテーマでお話しします。
プロの仮面を剥がす、やり方、考え方、あり方の3層育成
多くの企業の研修プログラムは、「やり方」の伝授に終始しがちです。新入社員研修では、会社の歴史や組織構造、基本的な業務フロー、ビジネスマナーなどが中心となっています。
確かに、これらの基本的なスキルや知識を身につけることは重要です。しかし、それだけで本当にプロフェッショナルな人材は育つでしょうか?
プロを育てる3つの座組
私たちアンドア株式会社では、以下の3層で育成することが不可欠だと考えています。
やり方(スキルセット)
考え方(マインドセット)
あり方(スタンスセット)
「やり方」は具体的なスキルや手順、「考え方」はそのスキルを使う際の思考プロセスや判断基準、「あり方」はプロフェッショナルとしての姿勢や態度を指します。
実際の職場では、先輩社員が新人に対して、単にスライドの作り方(やり方)を指導するだけでなく、顧客志向の考え方や、プロフェッショナルとしての姿勢(あり方)も伝えることが重要です。
しかし、多くの現場では「やり方」の教育に偏重しがちです。「考え方」や「あり方」をフィードバックできるトレーナーはごくわずかです。これが、若手社員の成長が思うように進まない一因となっています。
考え方、あり方を語れない先輩が増えている
最近、「考え方」や「あり方」を語れない先輩社員が増えています。これは単なる印象ではありません。ある調査によると、管理職の約60%が「部下への指導に自信がない」と回答しています。
なぜこのような状況が生まれているのでしょうか?
一つの要因として、近年のハラスメントへの過敏な反応が挙げられます。厚生労働省の統計によると、職場におけるハラスメントの相談件数は年々増加傾向にあり、2020年度には約8万件に達しています。
その結果、「何を言っても嫌われるかもしれない」と萎縮してしまい、必要なフィードバックすら控えてしまう上司が増えているのです。
また、「ホワイト企業」を標榜するあまり、必要以上に「ゆるい」職場環境を作ってしまっているケースもあります。しかし、フィードバックのない「ゆるさ」は、却って若手社員の成長を阻害し、「ホワイト離職」の原因にもなりかねません。
プロフェッショナルとして成長するためには、時に厳しいフィードバックも必要です。それを適切に行える環境と、それを受け止められる心構えの両方が大切なのです。
3つの前提とは
ここからは本題の「3つの前提」について解説します。これらは、ビジネスの世界で普遍的に通用する原理原則です。
価値に正解はない
価値はアウトプット
価値を決めるのは相手
まず、「価値に正解はない」ということです。ビジネスの世界では、100点満点の答案はありません。同じ商品やサービスでも、顧客によって感じる価値は異なります。
次に、「価値はアウトプット」です。いくら素晴らしいアイデアを持っていても、それを形にして相手に届けなければ価値は生まれません。行動を起こし、結果を出すことが重要なのです。
最後に、「価値を決めるのは相手」です。自分が良いと思っても、相手が価値を感じなければそれは意味がありません。常に相手の立場に立って考え、価値を提供することが求められます。
これらの前提を理解することで、「正解を求めすぎない」「行動重視」「顧客視点」といった、プロフェッショナルとしての基本的なスタンスが身につきます。
4つの原則とは
3つの前提を踏まえた上で、次は4つの原則について説明します。これらは、自分で変えることができる行動指針です。
信頼は期待値+α
チームで相互補完する
資産は逆算して生かす
「そもそも」を考える
「信頼は期待値+α」とは、期待以上の価値を提供することで信頼を築くという原則です。ただ言われたことをこなすだけでなく、一歩先を行く行動が求められます。
「チームで相互補完する」は、個人の能力には限界があるという認識のもと、チームの力を最大限に活用するという考え方です。自分の強みを活かしつつ、弱みは他のメンバーに補ってもらう関係性を構築することが重要です。
「資産は逆算して生かす」は、目標から逆算して現在の資産(スキルや経験)を活用する方法を考えるという原則です。「今の自分には無理」と諦めるのではなく、「目標達成のために今の自分に何ができるか」を考えることが大切です。
最後の「『そもそも』を考える」は、目の前の課題に囚われすぎず、本質的な問題は何かを常に考える姿勢を指します。これにより、より効果的な解決策を見出すことができます。
これらの原則を日々の業務に適用することで、プロフェッショナルとしての成長を加速させることができるでしょう。
対面でしか伝わらない最後のコア
ここまで、3つの前提と4つの原則について説明してきました。しかし、これらを頭で理解するだけでは不十分です。実際の行動に落とし込むことが重要なのです。
そこで重要になるのが、「もらう側から与える側へ」というコアの部分です。これは、学生から社会人への最も大きな意識の転換点と言えるでしょう。
この「与える側」の姿勢は、言葉だけでなく、所作や態度にも現れます。例えば、相手の話を真剣に聞く姿勢、自ら率先して行動する積極性、困っている人を助ける思いやりなどです。
こういった細かな部分こそ、対面でなければ伝わりにくいのです。アンドア株式会社の研修では、講師が受講者の行動変容の度合いを細かく観察し、適切なフィードバックを行います。これにより、「与える側」としての姿勢を効果的に身につけることができるのです。
誰も傷つかないことで、みんなが傷つく矛盾を断とう
ここまで、入社3年目までに学ぶべき重要な要素について説明してきました。しかし、ここで一つ懸念があります。それは、「目に見えない意味や価値を重視する若手世代に対して、意味や価値を語れない上司が増えている」という現状です。
Z世代を中心とする若手社員は、単なる金銭的報酬だけでなく、仕事の意義や社会的価値を重視する傾向があります。しかし、前述したように、多くの上司は「考え方」や「あり方」を語ることに苦手意識を持っています。
この状況を改善するためには、若手社員の育成と同時に、中堅社員や管理職の「語る力」を向上させる必要があります。アンドア株式会社では、若手向けのプログラムだけでなく、管理職向けの「フィードバック力強化プログラム」も提供しています。
最後に、読者の皆さんにお伝えしたいことがあります。プロフェッショナルへの道のりは決して平坦ではありません。しかし、今回お伝えした3つの前提と4つの原則を意識し、日々の業務に取り組むことで、必ず成長を実感できるはずです。
「本来の力を思いのままに」これはアンドア株式会社の理念です。一人ひとりが持つ潜在能力を最大限に引き出し、個人としても組織としても成長を続けていく。そんな職場づくりのお手伝いを、私たちは今後も続けていきます。
皆さん一人ひとりには、固有の強みやブランドがあります。それを見つけ、磨き、進化させていくことは決して遅すぎることはありません。今日から、自分自身のリ・ブランディングを始めてみませんか?きっと、新たな可能性が開けるはずです。
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