【俳句】『チリヌルヲ』
薄曇り夕べに響く耕運機
鞦韆に影あり人の影は無し
春の暮街のチャイムを連れくる
春園パンジーの一山ありて
夕暮れの雲流れつくポプラの樹
葉桜や時の行方を探すこと
新緑や吊り橋白く谷を越え
春風の空に舞う鳥穏やかに
春の星すでに消え失せ失せチリヌルヲ
夜桜に語りをひとつ残しけり
そちらからこちらにくれば春の闇
てのひらでぎしぎし取れば溢れる実
鉄橋に春さしかかる信濃川
3月の時計は音も無く
春分や縁日の面はセルロイド
新年の夢追いかけて雪の果て
如月の海の藍色空の音
花冷の時に合わせてショール買う
大海のシロツメクサや夕日浴び
黄昏や菜の花明かりつきはじめ
菜の花に誘われる我事情あり
砲丸は春の空気に落ちにけり
春分の図書館にいて文字に酔う
シャボン玉ひらひらひらと軒下に
伝統のお堀流れる柳街
梅雨明けや窓全開し清浄機