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図書館を350館訪問した僕がオススメする「この図書館があるからこそ住みたい街」ベスト10

350の図書館を訪ねる=350の街を歩く

僕は今、青森県津軽地方で発行されている新聞「陸奥新報」に「図書館ウォーカー」という旅エッセイを連載しています。これまでに訪問済みの図書館をエクセルでかんたんに記録しているのですが、どうやら350館に達した感じです。

日本図書館協会ホームページの「日本の図書館統計」によると2021年集計時点で日本の公共図書館の数は約3300館。だいたい10館につき1館のペースでクリア?できているようです。

もっとも、旅する時の僕の「図書館観」はかなりゆるくて、とりあえず旅人でも誰でも無料で利用(資料閲覧含む)できればいいという感じなので、350館の中にはこの統計に該当しない「勝手に図書館認定」の場所も含まれています。

さて350館訪ねたということはつまり、「350の街を歩いた」ということを意味します。滞在時間の違いはあれど、実際に自分で歩いて眺めて、その街の空気を吸ってきました。その街歩きの過程に図書館訪問がある、と考えています。

350の街を訪ねて、中には「この図書館があるなら、ここに移住しても毎日を楽しく暮らせそうだな」というところもありました。僕はたぶん、図書館ウォーカーという趣味を楽しむ時に、旅行者やライターとしてよりも、一人のふつうの生活者としての視点を大事にしているように思います。

たとえ短い時間内の、旅行者による一面的で上っ面だけ見たまなざしであったとしても、僕にとって訪問先の街の日常を想像することは欠かせないし、そのイマジネーションを生みたいためにたくさんの街や図書館に出かけるのかもしれません。

そして、図書館はある意味最も地元密着型の施設であるために、図書館を訪ねることでその街の日常に想いを馳せる手助けになってくれるのだとも思っています。だからこそ「この図書館があるからここに住みたい」なのです。

さて前置きはもういいですよね。いよいよ、僕が訪ね歩いた350の街から独断と偏見で選ぶ、この図書館があるからここに住みたい街ベスト10(順不同)です。繰り返しますが、あくまで独断と偏見ですよ♪

評価基準

基本的に下のような観点から評価しています。
1)図書館へのアクセスの良さ
2)図書館の蔵書の質量
3)図書館の居心地の良さ
4)街の雰囲気
5)景色、食べものに魅力があるか
6)スーパーや日用品を購入できる店が住宅地の徒歩圏内にあるか
7)周辺にどういう街があるか
8)子どもや子育て世代が元気そうに見える街かどうか

ちなみに僕はフリーランスのライターでどこでも仕事ができ(通勤の必要がない)、しかし運転免許がないのでいわゆる交通弱者(車がないと立ちゆかない場所では暮らせない)です。

また今の居住地は人口30万人弱の青森市なので、その規模のローカル都市の生活には慣れていますし、厳しい自然環境にもある程度共感を持っています。そういう個人的な条件も加わっているので、基本的に小都市が選ばれています

↓以下ベスト10です↓

豊富町(北海道)

JR宗谷本線豊富駅の周辺徒歩圏内にだいたいのものが揃っている究極のコンパクトシティ。図書室は「定住支援センターふらっときた」内にあり、閲覧だけなら朝早くから夜遅くまで開いています。壁で区切らないでオープンな空間に書架が並んでいる感じで、かなりくつろげます。
住宅街の味方で地元スーパーのフードインタイムリーイトウ、おしゃれカフェのフェルム、バスで少し行けば日本有数のオイルバス豊富温泉で健康維持、となかなか楽しそう。
JRの運行ダイヤのせいで稚内は1日がかりだし、旭川方面は日帰りでは無理という立地ですが、都会にほぼ用がなければこの小さな街でおいしいものを食べて、居心地の良い図書室で本を読んで毎日を楽しく過ごせるはず。

ふらっときた
JR豊富駅ホーム。なんか北海道の空

新ひだか町(北海道)

ここの街は古くからの商店街と、国道沿いのにぎやかな郊外型に分かれますが、旧JR日高本線静内駅からでもぎりぎり徒歩圏内。図書館は少し静かなあたりに建っています。
図書館はまだできて数年なので、蔵書はこれからもどんどん増えると思います。僕は2017年に訪問しましたが、中はとても広々して過ごしやすかったです。
日用品や食料は歩きで用が足せますし、海も山もあり自然は豊か。高速バスなどで苫小牧→札幌へのアクセスもOK。適度に若者も多くて、小さい街なりに活気があるという感じを受けました。

新ひだか町図書館本館
新ひだか町の街並み

鹿角市(秋田県)

つい最近訪ねたばかり。鹿角市立花輪図書館はJR花輪鹿角駅から徒歩で5分ほどの複合文化施設「鹿角市文化の杜交流館コモッセ」2階にあり。まず、この施設自体が1階にテーブルやイスがたくさんあって居心地の良い滞在型になっているんですね。図書館も蔵書の見せ方などいろんな工夫がしてあって量以上の質の高さがありました
JR花輪線は正直運行本数が多いとは言えませんがとりあえず直接盛岡に行けますし、大館→秋田と都市への日帰りアクセスもいちおう確保されています。
駅とコモッセの近くには長めの商店街があるのですが、いろんなお店があってここもまた町の立地や規模を思えばとても頑張ってる気がしました。市内バスもそこそこ本数あるようですし、住みやすいと思います。

花輪図書館があるコモッセ
商店街。けっこう長いんです。

甲府市(山梨県)

県庁所在地でありながら人口20万人弱と過不足ない規模。やっぱり地方都市はこれくらいがちょうどいい気がします。そして2012年新規開館、随所に工夫を凝らした名館の山梨県立図書館の存在が大きいですね。甲府駅からすぐの立地。市内に住めば豊かなライブラリーライフを送れるでしょう。未訪問ですが、繁華街のほうに市立図書館もあります。
街は朝と夜にそれぞれ1時間ずつくらい歩いた程度ですが、ちゃんと?都会感のあるギラギラエリアもありつつ、落ち着いたローカル感も味わえるという、なかなか稀少なハイブリッドシティかと。なかなか住みよさそうに感じました。東京方面にも長野県方面にもダイレクトに行けますし、JR身延線で静岡方面へのアクセスも確保されているという。
個人的な難点は夏にむちゃくちゃ暑いことですかね。

山梨県立図書館
甲府市街地

滑川市(富山県)

訪ねた市立図書館、子ども図書館ともにあいの風とやま鉄道&富山地方鉄道滑川駅から徒歩10分以内。市の図書館自体は蔵書どうこうではなくて(もちろんちゃんと充分な質量ですが)、2階に屋外テラスがあったりカウンターでコーヒーを販売していたり4階の自習室から立山連峰や海が見えたりと過ごしやすさポイント荒稼ぎなんですね。子ども図書館のある市民交流プラザには屋上展望コーナーどころか公衆浴場すらありますし。近くの平屋ショッピングモールには書店もあったり。文化度高い!
さらには富山市にかんたんにアクセスできるのも大きいですね。新幹線が開通したので、富山から首都圏にも行けますし。おまけに富山県って「オールシーズンうまいもの祭り」じゃないですか。うらやましい。

滑川市立図書館
子ども図書館のある市民交流プラザ屋上から見た滑川市街地

出雲市(島根県)

人口17万強規模の自治体なのに、なんと図書館7つ! 吸収合併で名図書館と評価が高かった旧斐川町のひかわ図書館が加わったのも大きいですね。
僕が訪ねたことがあるのは1館だけで、しかしそれは「海が見える図書館」の代表例の一つ、海辺の多伎図書館。この館自体も良かったですし、海・山・田園を含めた自然の豊かさなどなど暮らしやすそうな自治体です。松江や米子にもJR山陰本線でアクセス容易。ただ、山陽側に行くのはそんなにかんたんではありません。JR出雲市&一畑電車電鉄出雲市駅周辺は、都会ほどじゃなくてもそれなりに活気があります。
ちなみに同じ島根県では浜田市も図書館含め捨てがたい。

海辺の多伎図書館。もちろん館内からは海が見えます。
ご当地ショッピングモールのラピタ。駅からは離れています。

三次市(広島県)

図書館はJR三次駅から歩いて10数分くらいの場所にあります。馬洗川沿いで住宅街の端っこという感じです。訪ねたのは何年も前ですが、蔵書の見せ方や選書がいい感じで好印象だったんですよね。
三次ってJR三江線廃止のことがあったので街自体はさびれゆく感じなのかなと思っていたんですが、街なかにスーパーはいくつもあるし、夜歩いたら居酒屋とかちらほら盛り上がっていて、予想外に元気だなと思いました。創業20何年という中古レコ屋さんとかもあったり。
芸備線で広島市とも電車一本でつながっているので、都会の空気を味わいたくなってもまったく不自由しないでしょう。

三次市立図書館。シャープでかっけえ。
早朝散歩時のレトロ街

丸亀市(香川県)

中央図書館はJR丸亀駅すぐ近く。有名な猪熊弦一郎現代美術館と併設です。通りから丸見えのガラス張りの壁は、外を歩いている人のほうが恥ずかしくなりますが(笑)、利用者もたくさんいて良さげな図書館でした。
街は旧城下町の小都市という感じではあるのですが、城近くにでっかくて新しい商業施設が建って若者が集まっていたり、ローカルな感じの商店街も常連さんがちらほら歩いてて、いろいろ頑張ってるお店もちらほら見かけました。夕暮れ時の2時間くらいしかいなかったので何ともなんですが、住むのに良さそうだなと感じました。
また丸亀は岡山や高松といった都会にもアクセスしやすいのも大きいです。

丸亀市立図書館
駅近くの商店街

宇和島市(愛媛県)

中央図書館はJR宇和島駅すぐそばの複合施設「パフィオうわじま」内。2019年新規オープンのとても新しい図書館で、広々明るい過ごしやすい館内。
宇和島は観光に力を入れているだけあって、駅前周辺の街にはお店がとても多いです。電車・バスともに交通の要所なので本数も多い。個人的にはとても活気のある、かつガチャガチャしすぎないいい街に見えました。
何より、行った時に食べたものがどれもむちゃくちゃおいしかったんですよね。特に丸ずし(シャリのかわりにおからと青魚のネタを握った丸っこい形のお寿司)なんかハマって家でも作って食べてるくらい。図書館のみならず食の魅力で「住みたい」と思わせてくれる街でした。

宇和島市立図書館があるパフィオうわじま
長い長~い商店街。若者がけっこういました。

諫早市(長崎県)

僕が訪ねたのは2館で、中央図書館にあたる諫早図書館は島原鉄道本諫早駅から徒歩数分。「海が見える図書館」でもあり、すばらしいデザインで楽しませてくれるたらみ図書館はJR喜々津駅から徒歩20分以内。どちらも質量ともに充分な蔵書で、楽しい日常が送れそうですよ。
諫早は佐世保、佐賀、長崎、島原半島への鉄道路線がちょうど集結するハブシティというところがでかい。街自体はかなりローカルな感じですが、数年前に諫早駅もきれいになり、さびれ感はないです。またお隣の大村市にはJR大村駅前に市立と県立がドッキングしたミライon図書館もあるので、図書館使い的にはものすごく豊かな街だと言えるんじゃないでしょうか。
個人的には喜々津のあたりに住みたいかなあ。

諫早市立諫早図書館
たらみ図書館近くの喜々津の街並み

番外編

青森市(青森県)
身びいき。人口30万人都市なのでそれなりの規模の街です。県庁所在地ですし。青森駅からすぐの青森市民図書館は蔵書80万冊でかなりのものです。正直言って、蔵書の量的にはまったく問題なく豊かな日常を送れると思います。
僕はこの図書館を理由にこの街に移住を決めたわけではないのですが、この館があって良かったと思っていますし、一利用者としてはかなり満足しています。青森市暮らしを気に入ってる理由の一つです。食べ物もおいしいし。
市民図書館はビルの高層階にあるので「海が見える図書館」でもあります。館内からの景色の良さは日本有数だと思っています。

青森市民図書館がある複合ビル、AUGA(アウガ)
青森駅近くの海の眺め。図書館からもこの海が見えます。

いかがでしたか。まだまだ挙げたい街もありますし、実際に行ったところ限定なので少々地域が偏ってしまっていますが、いい図書館の存在が移住後の生活や事前の検討に良い影響を与える例が増えてくれればいいなと思って、記事を書いてみました。図書館で住む街を決める、断然ありですよ!

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この記事で書いてきたような「いい図書館があるので住みたい街」を含めた、全国各地のいろんな図書館をめぐる旅をエッセイの形でつづった書籍「図書館ウォーカー 旅のついでに図書館へ」(日外アソシエーツ)が発売中です。基本的にタブレットでしか読めませんが、電子版も配信開始されました。もしご興味があれば、ご購入など検討いただけると嬉しいです。

最後に。
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