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コラム:データとコミュニケーションで組織を変える

大知俊基(ぼす)

みなさんは、会社のアンケート調査にご回答された経験はお持ちでしょうか?「いまの仕事にやりがいはありますか?」「職場の人間関係は良好ですか?」等々、最近ではエンゲージメントサーベイとも呼ばれ、組織のコンディションを可視化するために多くの企業で実施されています。先日、ある企業からお仕事のオファーがありました。その仕事はなんと…!

『サーベイ(従業員意識調査)の設問を作ってほしい』

これが企業側からの依頼です。以前在籍していた会社で、10年ほどサーベイの業務を担当していました。数万人規模のサーベイ企画・実施・分析を担当した経験・実績があり、それがその企業様の目に止まったのでしょう。まさかこのキャリアに対してオファーが来るとは夢にも思っていませんでした。

オファーしていただいた企業の担当者とやり取りしていくいうちに、過去のことをいろいろ思い出しましたので、今回はサーベイの可能性について、私の私見と、私が常日頃から”バイブル”にしている名著「サーベイ・フィードバック入門」(中原淳著)の一部受け売りも含めて(笑)、書いてみたいと思います。

サーベイを実施した結果、膨大な統計データが集まることになります。他部門との比較や前年度からの推移が数値された集計結果は、会社や組織のトップのいわゆる“通信簿”となります。以前在籍していた会社では、その結果に一喜一憂するトップや、他部門との比較を一覧表にして競争意識を煽る人事部門を見てきました。そして、果たしてこのような対応に意味があるのか?とモヤモヤしていた感覚を思い出しました。

アンケートに回答する従業員の方はとても気まぐれです(悪い意味ではありません)。みなさんがアンケート調査に回答したとして、いつの調査の何問目の設問にどんな回答をしたのか具体的に覚えていますか?その時の組織の状況やご自身の置かれている環境で、どんな回答になるのかは非常に流動的だと思います。だとするならば、「前年度よりスコアが○○ポイント上昇した!」と単純に喜ぶのは少し短絡的な感じがしています(あくまで個人的な感想です)。

サーベイの結果は「その組織の状況や課題がうすぼんやりと見えてくる」程度に捉える方が、過剰な反応をして現場に混乱をきたさないという意味と、トップの精神衛生上にも良いと思われます。では、人事施策としてのサーベイは、これ以上の成果を期待できないのでしょうか?私は、データをもとにした対話によりマネジメントに変革を起こせる可能性を秘めていると思っています。

サーベイの結果に意味づけをしたり、深掘りしてより課題を明確にしたりするために必要なことは何でしょうか?私は組織の中での対話(コミュニケーション)だと考えます。例えば、こんな状況に陥っている組織を考えてみてください。

 上司「残業が多すぎる!」 ←→ 部下「指示が曖昧…」

それぞれの立場で思っていることが異なるこのような状況で、これらの問題を解決するために職場で対話をおこなったらどういうことになるでしょうか?責任の所在が「個人」になり個人を攻撃する、個人に責任を求める、ということが起こり得ます。そうすると個人の自己防衛本能が働き対話が進まなくなります。

そこで「データ」の登場です。データは客観的に見ることができます。データを活用して、職場で起こっている問題を個人の資質に起因する属人的な問題から切り離してしまう、という効果を期待します。例えば、「残業が多い部門では、コミュニケーションが希薄だという結果が出ているね」という上司の会話から議論が始まったらどうでしょうか?データが指し示す「自分たちの問題」を客観的に見ることにより、「お互いに責任を押しつけ合う後ろ向きの議論」から遠ざけることができます。

一旦、組織の課題を客観視し、その上で自分たちの問題に向き合う。こういった機運を組織内に発生させ、建設的な議論や対話を産むところにデータが介在する意義があります。人材が多様化する昨今、従来の勘と経験だけのマネジメントでは組織運営の限界が生じます。管理職やリーダーに「データ」という武器を持たせ、マネジメントに変革を起こすようなご提案をこの企業様におこなってみたいと考えています。

こんなことを考えると、「データ」と「コミュニケーション」をキーとした新たなサービスの形態も見えてきた気がします。思いもよらなかった企業様からのオファーから「データとコミュニケーションで組織を変える」という壮大なテーマのコラムになってしまいましたが、また新たな希望の灯が見えてきた瞬間でした。

_/_/_/_/ ホープワークニュースレター vol.32_/_/_/_/
<希望の便り from ホープワーク協会>2024.8.2