掌編: 非モテの逆襲と野菜事情
試作のパッケージには『逢いたい菜』
非モテの俺への当てつけかと思い、
「ベタ過ぎんか?」と口を突いて出た。
作り笑顔は作為的で挑戦的な鈴木が、
頬をぷくっと膨らませて言う。
「絶対、石川さんなら言うと思いました。
あの、お言葉ですが、
石川さんはすぐに恋愛とか女とか浮かべたでしょ?」
オフィスの賑やかな会話が聞こえてくる中、
鈴木の言葉は俺の心に刺さる。
「世の中、知ってます?
野菜が凄く凄く高いんです。
野菜に会いたい人がたくさんいるんです」
鈴木の言葉に、俺は思わず目を細めた。
心で「そんなこと言われても……」反発しつつ、どこか納得してしまう自分がいた。
「そう、そんなに野菜が高いの?」
「マジで知らないんですか?
ああ、これだから石川さんは非モテなんですよ」
鈴木はまだ力説を続ける。言葉は矢の如く、俺のソフトなハートを破壊に来る。
仕事じゃなければ、こんな女に会いたくないな。