手を繋ぐ、手を握る、それだけ
前を歩くカップルは10代〜20代前半に見え
ラブラブ繋ぎの手に違和感を覚え、よく見ると
女子の指は、男子の指に絡んでなかった
付き合いたてなのか、指が真っ直ぐだった
原因不明ではあるが、名を知らぬ老若男女から
「手を繋いで欲しい」「手を握って欲しい」
「手を握らせて欲しい」今でも声をかけられる
「どうぞ」 右手を差し出す
声を立てず、肩を震わせ泣いた男性
右手に両手を添えて俯いたままの老女
人差し指を握って「ママ」と言った幼女
どこにも、誰にも甘えられないから
丁度都合よく、いたのがわたしなのだろう
「なにか気の利いた言葉がかけられたら…」
背景を知らないので、思いつくものがなく
黙って手を差し出すだけしかできない
視線を宙に向けて沈黙を守っている
天気や気温など、わたしには印象がない
老若男女の事情を聞かなかった
わたしの手をなにかすれば御利益がある
そんなウマイ話はない
神通力だの、なんちゃらパワーもない
当然ながら、無名無職の身分
宗教家じゃない、宣伝をしてない
時間にすれば僅かなもの
明日へバトンを渡す記憶にすら刻まれなくとも
仮に、誰かの気が済んだなら
それでいいか、と思っている