娘は親をコピーしていく
ひとり娘が社会人となり
有休を使い、帰ってきた
娘は元旦さえも納期が迫り、家族が揃うことなく
平日と変わらぬ三が日を過ごした
でも、今は元旦と似た
浮いた気分で娘と買い物へ行く
「なにか、美味しいものを食べようか」
私が教えてない所作で、娘は食事する
「ここはアタシが払うね」
レジへ向かう娘の頼もしさに
親の役目が終わったような
安堵とは、少し違った寂しさを覚えた
二十数年前、春
入園式に娘の手を引き、教室へ入った
「奈々ちゃん、ここがお席だから座っててね」
娘は、小声で返事をしたが
その声より遥かに大きな声で
「ママがいい!」泣いて私へ飛びついた
娘が17歳の秋
「大学さ
ママと同じところへ行こうと思うんだけど…どう?」
もっと上を目指しなさい、とは言いつつ
私の後輩になるのも悪くないと思った
娘の大学入学式の帰り
何十年振りかにくぐる母校は古くて
校舎へ向かって深く礼をした
「どうか、娘をお願いします」
やがて娘は、主人の進路をコピーした
「出版社から内定をもらったよ」
主人は「地味で苦労がある業界だよ」
しかし、私達夫婦の話は娘の耳を素通りした
そして、現在
「パパママ、聞いて!アタシ、個人事業主になる」
ここまで主人を踏襲しなくても
次は、仏教の学校へ入学するのかしら
娘の人生を縛るのはやめよう
それだけを戒め、やってきた
しかし、娘を縛るどころかネコに似て
少しだけ甘えると、スルリと脇から抜けていった
エープリールフール
気の利いたウソが見当たらなかったので
身の回りと過去を下敷きに
創作ショートショートを書いてみた
ちなみに、うちの娘は今年16歳
ちゅーるが大好物で、長生きするのが仕事にゃ🐾