香りの記憶、新しいこと
暖かいと冷たいが混ざる空気に触れ
思い出すのが
新学期、新しく配られる教科書の匂い
インクより紙の甘い匂いが好きだった
恐らく、匂いは気のせいだったのだろうけど
1番に国語の教科書を開き
最初はどんな作品から始まるのか
興味津々で開く
見開きの詩が『当たり』だなって思ったら
この年は、きっと良いことがあると期待し
失礼ながら『はずれ』と感じたら
2学期に配布される、国語の下巻に願いを馳せる
当たりでも、はずれでも
他の教科書でも、新しい匂いは胸がすく
わたしは勉強が苦手で
好きなことだけしていたい子どもだった
新しい学期ごとに文房具も新調し
贅沢をさせてもらいながら、まともに勉強をせず
大人になって役立つものより
今ある好奇心を満たしたい、そんな感じだった
新しい教科書の匂いは
わたしには、おあつらえのアイテムで
今更ながら、税金で義務教育を終えたことに
本来とは違う、感謝を抱く春の彩り