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童話: 勘違いした北風
北風と積雪を避けるように動物たちは冬籠りをしています。
強い風は山の頂上から吹き下ろし、森を冷気で包み込んでいました。
木々はしなり、雪が舞い散る中、北風は力を誇示するかのように鋭く冷たい風を吹き荒らします。
「俺様の力を見ろ」
叫ぶ北風の声は、誰にも届きませんでした。
彼は冷たく、強い風を吹かせることに誇りを持っていましたが、心の孤独は消えません。
誰も北風に近づこうとはせず、話しかける者もいません。北風は気にしないふりをしていましたが、内心では寂しさが募っていました。
森の中でうさぎとねずみが出会いました。
うさぎは震えながら言いました。
「北風が強すぎて外に出られないよ」
ねずみも心配そうに耳を伏せ
「今年の冬は特に寒いね。
どうやって乗り越えよう」不安を口にしました。
北風はその様子を見て、自分の力を見せつけることへ夢中になっていました。
しかし、夜が明けると、
うさぎがふと思いつきました。
「ねずみさん、一緒に温かい場所を探そう」
そんな元気な言葉に、ねずみも勇気を得ました。「そうだね、きみと一緒ならきっと見つかる」
二匹は手を取り合い、森の奥へと進みました。
北風が冷たく吹き荒れると、うさぎの耳が凍りそうになりましたが、ねずみの存在が大きな支えになりました。
「私たち、大丈夫だよね」うさぎの問いかけに
ねずみは力強く頷きました。
「うん、大丈夫だよ」
北風は低空から二匹の姿を見かけました。
「あいつら、また俺様を無視するなんて」
憤りを感じながら、
これまでにない強い風を吹かせましたが、
うさぎとねずみは温かい洞窟へと逃げ込みました。
洞窟の中には他の動物たちが集まり、暖を取っていました。うさぎはその光景を見て生きた心地になり、「私たちも仲間に入れて」話しかけます。
ねずみも嬉しそうに目を輝かせました。
動物たちと過ごすうさぎは安心感を覚えました。北風の影響を受けていた自分たちが、今は温かい場所で笑い合っているのです。
ねずみも動物たちとおしゃべりする中で不安が薄れていくのを感じました。
やがて動物たちは洞窟から出て、雪合戦や雪だるまを作って遊び始めました。北風が意地悪く風を吹かせると、うさぎは
「ちょうどいい風だね」目を細めて喜びました。
それを見た北風は驚きました。
「動物たちは俺様の力に微笑んでいる」
北風に混乱が生まれました。
「動物たちは俺様が嫌いなのに、どうしてこんなに穏やかな顔で風を受けているんだよ」
北風は自分の存在が動物たちとの関係を損なうものではなく、実は嫌われていなかったのではないかと振り返ります。
「俺様は思い違いをしていたんじゃないか」
試しに、北風は生ぬるい風を吹かせてみました。すると、温かい日差しと共に動物たちが待っていたかように両手を広げ
「春が来たみたい」と歓声を上げ
「暖かいね」と空を見上げます。
独りよがりで動物たちの心を分かった気になっていた北風は、自分を恥ずかしく思い
「俺様も仲間になりたい」と心から思いました。
北風は力を使って動物たちを守り、安全を届ける存在になりたいと願うようになりました。