就職氷河期、手書きの履歴書
「デジタル化の恩恵で嬉しい」
最初に思い浮かんだのは、『履歴書』
履歴書マナーでどれだけ紙の無駄遣いをしたか、
精神的プレッシャーが大きかったか。
わたしの就活時代は氷河期。
OB訪問、就職セミナー、ペーパー試験、面接は二度三度ある多忙な日々、
家やファストフード店では履歴書職人だった。
履歴書マナーとは、
1字間違えると、真っ新の履歴書に書き直し、
鉛筆の下書きをペンでなぞり、インクが乾いたと消しゴムで下書きを消している最中にインクが滲むと
一からやり直し。
10枚入りの履歴書で足りるだろうと思ったら、急遽コンビニへ買い足しに出た、あの頃。
間違いを修正ペンで直す、二重線で訂正するなどもっての外だという履歴書マナー、資源の無駄遣い。
わたしは面接官をやっていた経験がある。
面接に来た方々の履歴書を預かり、修正ペンを使ったから無礼な人と思ったことがなかった。
修正ペンや二重線の使用は、わたしより歳上のバブル期世代が当たり前にやっていた。
わたしの性格が寛容や鷹揚だからではなく、
重要なことは面接時を占め、
付属で「この人の経歴や志望動機」など、分かればそれで良かった。
修正ペンを使う、二重線で訂正したから、
「この人は雑な人」
一言一句間違いのない履歴書だから、
「この人は素晴らしい人」など「関係ない」
「手書きの履歴書は温かみがある」
企業の求人募集へ、まったりを求めてない。
そういう意図ではないのだろうが、
就職活動中の履歴書タイムと紙の無駄遣いは、製紙会社や印刷業者と厚労省が結託したもの、
既得権益でも発生しているのかと勘繰った。
履歴書は正式な書類、メモ書きではない重要性が高いので修正ペンを使うのは企業としては不信感を抱くであろうのは分かるつもりだ。
分かっていても、氷河期世代は何十社、百十社とエントリーしていく。
履歴書の作成を思うとうんざりした。
デジタル化にして、セキュリティの問題があるのも否めない。
1991年、男女雇用均等法が成立したにも関わらず、女子は女子というだけで面接でもあからさまな差別を受け、
単刀直入に枕営業するよう、企業側から電話があったのも事実だ。
雇う側は無秩序で、反面、
厳格な履歴書の意味ってなんだったんだろうな。
何社、何人のオッサンから一夜を過ごしたら内定を出すと言われたか、それも大企業様。
令和の今なら大問題になる。
履歴書が返送されても日付が入っているので、よその企業には使い回しできない。
精々、履歴書に貼った写真を剥いで使うのみ。
右手が腱鞘炎になるかと思うほど履歴書は書いた。
わたしが優秀な学生ではなかったので、高望みした責任を自分が回収しているのかもしれない。
履歴書の中身は、基本、
書くことが増えても減るなどない。
デジタル化でPDFに作成した履歴書へ最新の情報を加えるだけの気楽さ。
新たな写真や日付を入れて、時間や紙を無駄にしなくなった。
履歴書は端末に打ち込み、応募期間内に出せばなんとか取っ掛かりになる。
就職氷河期を経たわたしには、今が心身を休める時間が与えられた、とても良い時代に思える。