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多和田葉子「星に仄めかされて」〜“彼ら“の言葉と行手にあるものは

「地球にちりばめられて」いた、様々な“国“出身の人々が出会い、化学反応を起こす。そして、彼らの行手には何があるのか。

多和田葉子の三部作の二冊目が「星に仄めかされて」(講談社文庫)である。

明鏡国語辞典第二版
“仄めかす“:それとなくそぶりや言葉に表して示す。におわせる

彼らは“星“になにを仄めかされるのだろうか。

ヨーロッパ在住の彼らとは、(「星に仄めかされて」“登場人物“から抜粋)

Hiruko:中国大陸とポリネシアの間に浮かぶ列島から留学してきた女性。帰国直前に母国が消えてしまい〜
クヌート:デンマークに住む言語学者の卵
アカッシュ:ドイツに留学中のインド人男性
ナヌーク:グリーンランド出身のエキスモー
ノラ:トリアーの博物館に勤めるドイツ人
Susanoo:福井で生まれた日本人。ある時から歳を取らなくなった。

彼らが必然と偶然により出会うのが、前作「地球にちりばめられて」(講談社文庫)。そのドライバーの一つは、Hirukoが同郷人らしいSusanooと出会い、母国語での会話を行うこと。しかし、<Susanooには出会えたものの、彼は言葉を発さない。失語症に陥っているのでは〜>(「星に仄めかされて」より、以下同)

Susanooの失語症を解決すべく、彼らは一旦欧州のさまざまな場所に身を置くことになる。

前作同様、本書を読みながら“言葉“について考える。各章は<***は語る>というタイトルのもと、登場人物それぞれの一人称で書かれる。“彼ら“のみならず、そこには新たな人物なども登場する。それぞれの“言葉“である。

Susanooは言葉を発しない。アカッシュのこんな言葉がある。<「沈黙も商品になりうるのかな」>、<「彼(注:Susanoo)は沈黙を生産している。」>

<沈黙を生産している>Susanooは言葉を発するのか、彼らは再び出会うことになるのか。。。。

三部作をソナタに例えるならば、第二作の本作は緩徐楽章のようにも感じる。彼らは、最終作に向けて、グッと力をためている。そして、これからを“仄めかす“ような“言葉“もある。

<「君の国には上流階級は存在しなかったの?」>と問われたHirukoは、<「存在した。太陽、太陽の力。」と答える。HirukoはSusanooが反応したように感じる。さらにHirukoは<「天照大神(あまてらすおおみかみ)。」という“太陽の名前“を発する。

第三作は「太陽諸島」(講談社)である。早く、“彼ら“のこれからを読みたい


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