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「侍タイムスリッパー」は時代劇を継承した〜とにかく観るべし

騙されたと思って、映画館に行ってください。「侍タイムスリッパー」を観るために。

すでに各所で話題になっている映画「侍タイムスリッパー」(2024年 未来映画社)、8月にインディーズ映画として池袋の単館で上映され、ジワジワと評判が広がり、今月から全国のシネコンが取り扱うようになりました。集客が予想できない中、パンフレットを作ることもできず、現在、急遽製作中とのことです。

これは見逃せない、私が観たのは新宿ピカデリー、キャパ500席以上のシアター1での上映でした。

終演後、ほぼ満席の客席から拍手が巻き起こりました。映画館では久しぶりの体験です。と言うことで、再度申し上げます。騙されたと思って、観に行って下さい。小学生以上であれば、子供でも多分OKです。若い人にぜひ観てほしいとも思います。

以上なのですが、折角なので公式サイトに出ている程度の紹介をまず。

時は幕末、主人公の会津藩士・高坂新左衛門は密命に従い、長州藩士を討とうと。両者の刃が交錯した時、雷鳴とともに落雷。雷にうたれた新左衛門はタイムスリップ、京都の時代劇撮影所で目を覚まします。新左衛門の運命やいかに。。。

監督の安田淳一は、実家でコメ農家を営みながら映画制作を続けて来ました。本作も私財を投じて制作され、安田は監督のほか、脚本・撮影・照明・編集など、一人何役もこなしています。紗倉ゆうのが演じる女性助監督が、映画の中で重要な存在なのですが、エンドロールでは本作の助監督などスタッフとしてもクレジットされています。

こうした自主制作的映画ですが、決してチープな作品にはなっていません。役者陣の素晴らしさはもちろんのこと、東映京都撮影所が全面サポートしたこともポイントです。

少し内容に踏み込みます。

監督始め、関係者の時代劇愛がスクリーンからビシビシと伝わってくる、これは本作の大きな魅力です。設定の妙がエンタメ作品として楽しめるという仕掛けとなっているのですが、作品に芯が通っています。

本作を見ながら、時代劇の魅力を考えていました。殺陣の迫力、独特の世界観、色々あると思うのですが、時空を超えて共通する人間の想いというものもあるのではないでしょうか。

私の好きなシーンの一つに新左衛門がショートケーキを食べる場面があります。美味しいものに感動する、今も昔も同じです。それと共に、こうした幸福がいかにありがたいか教えてくれる、つまり時代が流れることによって忘れられた大事なものを改めて提示してくれる、底辺に流れる価値観は同じなので、現代の観客は感動するのです。

これも多くの人が指摘していますが、「SHOGUN 将軍」とタイミングを一にしたのも何かの縁を感じます。

先日ご紹介した通り、エミー賞の授賞式で真田広之が「時代劇を継承し、支えてきた人たちに感謝したい」とスピーチしました。「侍タイムスリッパー」は、超大作ではありませんが、時代劇をしっかりと継承した作品です。

ということで、是非ご覧下さい。

まったくの余談ですが、撮影所の休憩室に、伊丹十三監督作品のビデオが並んでいました。伊丹万作の息子、伊丹十三が作る時代劇を観たかったと思ったのでした


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