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「デイヴィッド・ホックニー展」〜楽しむことがメインテーマ

久方ぶりに美術展に行きました。場所は清澄白河にある東京都現代美術館。前に行ったのはいつだろうと、調べてみましたが、おそらく2005年の「イサム・ノグチ展」のように記憶します。

20年近い歳月が流れ、今回見に来たのが「デイヴィッド・ホックニー展」

とても楽しく、面白く、印象に残る展覧会でした。

ホックニーは1937年イギリス生まれ。私が生まれた1961年にはロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートで学んでいて、その頃から画壇にデビューしたようです。今も現役で作品を制作しています。

ホックニーは1964年ロサンゼルスに居を移し制作活動を続けますが、そのせいか私の頭の中ではアメリカ人というイメージがありました。今回の展覧会を見て、イギリス人であることがよく分かりました。

展覧会は日本では1996年以来の大回顧展になっており、デイヴィッド・ホックニーの画家生活をたどることができると共に、大作も展示されています。

最初に展示されるのが、1969年の「花瓶と花」と2020年の「春の到来ノルマンディー2020年」ですが、どちらも水仙が描かれます。ロンドンに住んでいると、暗くて寒い冬の終わりを告げるのが、道端に咲く黄色い水仙です。こうした身近にあるものの本質を如何に描いてきたか、その象徴とも言える新旧二つの作品を提示し、展覧会はスタートしました。

ちなみに2020年の作品はiPadで作成されています。このように、新しいテクノロジーや写真を積極的に取り入れて、ホックニーは制作を続けたことがよく分かります。



この展覧会がなぜこんなに楽しいのかを少し考えてみました。上記の通り、デイヴィッド・ホックニーは革新的なアプローチで作品を生み出すのですが、その背後には偉大なる先駆者たちへのリスペクト、そしてその功績の吸収、そして自らの存在を通して再生産しているからのように思えます。

ホックニーの作品を見ていると、自分自身のこれまでのアート体験がよみがえり、素晴らしい作品に出会った時の喜びが脳中に戻ってくるのです。

ピカソやマチスといったアーチストのことは当然としても、ピエール・ボナールやゴッホ、「スタジオにて、2017年12月」という作品では、中央上部にフラ・アンジェリコの「受胎告知」が顔を出します。全長90メートルの「ノルマンディーの12ヶ月」は、日本の絵巻物にも触発されています。

さらに対象物の本質に迫ろうとするアプローチが、なにか自分が過去に見たもの・風景の記憶を呼び覚ましてくれるのです。


物を増やしたくないので、展覧会のカタログは買うまいと心に決めているのですが、今回は買ってしまいました。小ぶりでとても素敵な一冊です。(オンラインで購入可能です)

鑑賞後、“ホックニーさんからのメッセージ“という動画を観ました。

日本のみなさん、特に若い人へのメッセージとして、「Be yourself〜ありのままのあなたでいなさい」と話していました。そして、「楽しむことがメインテーマ」とも。

デヴィッド・ホックニーという人が、ありのままの自分でいて、楽しみながら描いた作品の数々、その人生のあり方が私の気持ちを高めてくれたのだと、改めて感じたのでした


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