「デューン/砂の惑星」〜ヴィルヌーブ監督の挑戦は映画館を救うか
宇野維正著「ハリウッド映画の終焉」の最終章、“第四章 映画の向こう側へ“で紹介されている4本の映画は、「TENET テネット」「DUNE/デューン砂の惑星」(以下、「デューン」)、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」、そして「TAR/ター」だった。
「TAR/ター」は映画館で観ていたが、他は未見。「アバター」は前作も含め、あまり気が乗らない。残る2本は、気になっていた作品だったので観た。
クリストファー・ノーラン監督の「TENET テネット」は、私にはなんと表現していいのか、言葉がない。つまらなかったという訳ではないが、説明できない。
そして、「デューン」である。原作のフランク・ハーバート著「デューン砂の惑星」は1965年に出版されたSF小説。日本語訳は、ハヤカワSF文庫で1972年に出ており、私はその頃から気になっていたが未読のシリーズである。
映画の制作者は、劇場で観られることを前提に作品を作る。しかし、それがビジネス上の都合から、簡単にストリーミングサービスで公開される。こうした状況に、抗議の声を上げたのが「テネット」のクリストファー・ノーラン監督であり、「ハリウッド映画の終焉」によると、<次に声を上げた監督が、2021年に『DUNE/デューン砂の惑星』の公開が控えていた、ドゥニ・ヴィルヌーヴだった>(同書より、以下同)。
多くの映画制作者が<映画化に動きながらも頓挫>、ようやく映画化したデビッド・リンチ版は<「失敗作」の烙印をおされ>た。その「DUNE」にヴィルヌーヴは取り組んだ。ただし、ヴィルヌーブは抗議していたが、映画はワーナーとHBOマックスの取り決め通り、劇場公開と配信が同時スタートした。
「デューン」は、<作品の関係者たちの憂慮を吹き飛ばすような結果を出した>。配信で見られるにも関わらず、多くの人が映画館に詰めかけたのだった。
私も、今さらながら「映画館で見ておけばよかった」と思った。あの“砂の惑星“は大スクリーンで体験すべきものだった。
もちろん、配信(Amazon Primeほか)で観ても映画自体が面白いので十分満足できる。
アトレイデス家の公爵と、その息子ポール(ディモシー・シャラメ〜売れっ子の一人)は、宇宙皇帝の命を受け、“デューン砂の惑星“へ派遣される。そして、そこで彼らを待ち受けていたものとは。。。。
グッドニュースは、この映画は“始まり過ぎない“。Part 2が、来年1月に公開予定である。少なくとも、「DUNE/デューン砂の惑星:Part 2」は劇場で、IMAXで観ることができる。
Part 2は、必ず映画館で観ることにしよう。それで、ようやく“作品“として評価することができる。本作は、まだ“始まりに過ぎない“から。
こう考えている映画ファンは世界にどの程度いるのだろうか。そして、「デューン」とヴィルヌーブは、資本家の手から映画を取り戻すことができるだろうか