私は名画の何を見ていたのか〜iPadで読むのが最適、高階秀爾著「カラー版 名画を観る眼 I」
西洋絵画の鑑賞を続けていると、西洋絵画史に興味をかき立てられる。当たり前だが、個々の画家は独立しているわけではない。過去の巨匠・名画、同時代のアートからさまざまな影響を受けながら作品が生み出される。
この世界の書物で、燦然と輝くのはゴンブリッチの「美術の物語」(河出書房新社)。私も読んだが、大書だけに気軽に人に勧めるという代物ではない。
そこで私が勧めていたのは、高階秀爾の「近代絵画史」(上・下巻 中公新書)。本書は、日本人に馴染みがあるロマン主義・印象派以降の絵画史をたどる。読みやすいし、目からウロコの解説が多々ある。
その高階秀爾氏(92歳の今もお元気である)が、1969年に岩波新書から上梓したのが「名画を見る眼」、そして本書は半世紀以上の時を経て、2023年に同じ岩波新書「カラー版 名画を見る眼 I」としてリニューアルされた。
最近、この本を1日1章と決めて楽しんできたのだが、本書も“眼からウロコ“どころか、自分は一体何を観てきたのかと思わされる。
本書は副題として“油彩画誕生からマネまで“とあるように、ファン・アイク「アルノルフィニ夫妻の肖像」(1434年)から始まり、マネの「オランピア」(1863年)まで、各時代の名画を1枚ずつ紹介・解説しながら、前述の「近代絵画史」に至るまでの流れを解説してくれる。
ロンドンに住んでいた利点を生かし、欧州各地の美術館を訪ねた。したがって、本書で取り上げられている殆どの作品は実際に観たことがる、あるいは観たはずである。しかし、どの機会においても、本書の解説ほどに深く作品を理解しようとはしていなかった。まさしく、“見る眼“がなかった。
例えば、前述のファン・アイクの作品は、ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されており、そのミステリアアスな雰囲気が大好きで、何度も観ている。しかし、高階氏の解説を読むと、作者の“企み“が散りばめられた、本当に深いものであることが分かる。
そして、ファン・アイクを皮切りに、フィレンチェのウフィツィ美術館にあるボッティチェルリ「春」、ルーブルにあるレオナルド(ダ・ヴィンチ)「聖アンナと聖母子」(なお、下絵素描はロンドンのナショナル・ギャラリーにある)と続く。
可能であれば、iPadなどのタブレットで電子書籍として読むことをお勧めする。
一つには絵が完全に平面で観ることができること。二つ目、拡大ができること。これは大きな利点。絵画の細かい点に言及されるし、拡大画像も収められているが、自分でピンチアウトできるのは便利である。
“西洋絵画史“という大上段に振りかぶったことは横に置いておき、ピュアに各作品を観てみよう。より絵画を理解することができ、興味が湧くこと間違いなしである
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