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ECMO⑰|管の交換


翌9月10日。

仕事のため朝から外に出ていた私は、12時頃に仕事を終え、自宅に帰るため駅のホームで電車を待っていた。


しかし、待っていた電車がホームに入ってこようかというまさにその瞬間、聴いていた「Voicy」の音量が下がりだす…

(んん…?)

と違和感に気づいたその直後、私の耳に「黒電話」の音が鳴り響く…

「ジリリリリリリリーン♪」

黒電話の音が鳴るということは、LINE電話ではなく “携帯電話” の方にかかってきているということ。

私の生活スタイル的に、携帯電話の方が鳴ることはあまりないため、真っ先によぎったのは「大学病院」であった。


そして、ポケットからスマホを取り出すのとほぼ同じタイミングで、「○○大学.…」とsiriが読み上げる…


やはり「病院」からであった。


(・・・!)

この日も特に連絡が来ることにはなっていない。
“想像したくない未来” が私の頭を駆け巡る…

だが、わざわざ電話をかけてくるということは、緊急を要する可能性が高い。


緊張しながらも、乗る予定だった電車を見送り、覚悟を決めて通話ボタンを押した。


電話の相手は、医療チームのもう一人の外科医であった。


だが、開口一番、

「お父さん、突然のお電話すみません。まず、“凰理くんに何かあったというわけではありません” のでご安心下さい」

と伝えてくれた。

この配慮のおかげで、私は一気に落ち着きを取り戻し、冷静に外科医の言葉を聞く態勢が出来た。


息子の容態は、その後も安定しており、循環をサポートするための薬も量を減らすことが出来ているようだった。

しかしながら、ECMOの管に「血栓」が出来てしまい、うまく循環しづらくなってきている状態だという。


これは元々リスクの一つとして、言及されていたことではある。

極力そうならないように “血液をサラサラにする薬” の投与を断続的に行っていたものの、徐々に詰まってきてしまっているとのこと。


そして対応としては、「ECMOの管を新しいものに交換する」ということだった。

交換することで、血栓もなく改めてクリーンな状態で循環が出来るようになるが、それに伴うリスクもあった。


それは、「管の交換中のリスク」である。


今の息子は、 “ECMOによって生命維持” をしている状態。

管の交換をするということは、一時的だとしても “生命維持のサポートが無い” 時間が出来てしまうことを意味する。

時間にして「数十秒~数分」という短い時間ではあるが、ただでさえ満身創痍の身体。当然リスクは0ではない。


特に立ち会いや同意書が必要なわけではなかったが、必要な処置として私たちの面会前に行うことになったため、事前に私たちの耳に入れておくために電話をくれたようだった。


正直、急な電話は本当に心臓に悪いが、こうした処置に関してもこまめに報告してくれることは、共に闘っている感じだけでなく、精神的にもありがたいアプローチだった。


人間は「わからない」ということに極端に恐怖や不安を感じやすい。

だがそれは、わかる領域が増えればそれだけ恐怖も不安も減っていくことを意味する。

息子の闘病中、私たち夫婦もわかる領域が増えることで、地に足をつけて行動することが出来やすくなったのは間違いない。

改めて、医療チームには感謝である。


そして、交換は13時ごろから行うことになったが、処置中は私たちはICUに入れないため、15時30分にICUへ伺い、そこで処置の報告をしてもらう流れとなった。

改めて、医療チームに想いを託し、通話は終了した。


つづく



本日12月14日は、3回目の月命日。
幼馴染が手を合わせに来てくれました。

「鳳凰」をイメージしたお花もいただきました^ ^

この幼馴染もひと足先に娘ちゃんが生まれ、息子とは同級生。
娘ちゃんには、凰理の分も人生楽しく謳歌していって欲しいですね👶

友よ、ありがとう!

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