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2022年本屋大賞投票コメント公開

こーんにちわー!
あっという間に1年が経過し、今年も本屋大賞が発表されました。

まずは逢坂冬馬さん、本屋大賞おめでとうございます!
独ソ戦という題材で、くしくもこの時期の受賞となってしまいましたが、ふたを開けてみれば一次投票(締め切り2022年1月3日)の時点から『同志少女よ、敵を撃て』は一位でした。
『同志少女~』の発売日は、2021年11月17日です。
本屋大賞2022年の選考対象作品は、2020年12月1日~2021年11月30日発売のもの。そう考えると『同志少女~』は対象期間の割とギリギリに発売された作品ではあるのですが、早川書房が発売前から「こいつぁーとんでもない作品なんすよ!みんな読んで下さいよ!」とゲラやプルーフ(発売前の業界向けに配布される見本版のようなもの)を効果的かつじゃんじゃんに配布し、発売をめちゃくちゃに盛り上げていました。あのお祭り感はすごかった。
「『同志』読んだ?」「読んだ読んだ!」「「すごかったねー!」」
なんてやり取りがあちこちでありましたし、読んだ私は「同志ハルカチェフ(私の名前をもじったモノ)」と呼ばれたりもしました。(ごくごく一部で)
書店員の間では発売前にピークを迎えていたと言っても過言ではない作品で、だからこそ全国の書店員が発売前からいそいそと売り場を準備をし、満を持して発売日を迎えました。この結果には納得しかありません。

一般読者である皆様にとっては、4月6日に発表となった「たった一日の」本屋大賞ですが、書店員である私にとっては、2020年12月から1年以上悩みに悩んでいるコンテンツです。幸せにも、こんなに迷うことないってくらい迷っています。
『同志少女~』おめでとう!と心から思いつつも、そりゃあ色々と思うところはありますよ。

昨年と同様に、私が一次投票で選んだ三作品を、投票コメント付きで紹介します!

ちなみに2021年はこちらです。三作品投票したうち、一作が10位以内となり、本屋大賞ノミネート作品となりました。

■1位投票
タイトル : やさしい猫 (単行本)
著者名 : 中島 京子
出版社 : 中央公論新社
ISBN : 9784120054556

『やさ猫』はいいぞっ!!

コメント : 入管に収容されてしまったスリランカ人男性と、日本人の家族たち。悲劇を悲劇に終わらせない中島京子さんの、フィクションにしか出来ないことの力を存分に感じた作品だった。裁判のラストシーンにおけるマヤのセリフは鳥肌モノ。一生心に留めておきたい。知らないことを知り、私達の明日を作るのは、"本”かも知れない。

言わずと知れた(?)、第4回ほんま大賞受賞作です。
いやーこれ、マジで本当にいいんです……よ……。
(第56回吉川英治文学賞を受賞されました!おめでとうございます!)
この順位は正気なのか?と疑いたくなる作品です。何様だと言われてしまうかも知れないけど、私が、もう少し、もう少し早くほんま大賞だと発表していたら、もしかしてもう少し出会って、そして投票してくれる書店員がいたのではと、悔やんでも悔やみきれません。実際に私の紹介を受けて、同じくバラ書であるゆきき()は、この作品を【山中賞】に選出してくれたわけだし、そのくらいの作品なんですよ。すごいんですよ。読んで欲しいです、多くの人に。
入管行政を問う作品。
今ウクライナからの移民がどうのこうのとニュースでやっていますが、『やさしい猫』を読んだ後では、そのニュースさえ複雑に受け止めてしまいます。

■2位投票
タイトル : ブラザーズ・ブラジャー
著者名 : 佐原ひかり
出版社 : 河出書房新社
ISBN : 9784309029641

コメント : 「弟がブラジャーを付けているシーンを目撃する」という圧倒的パワーフレーズ(というか状況?)に、強烈に胸を撃ち抜かれた。
姉と義弟、父親と娘、恋人、友人……それぞれに模索される距離のとり方は、探り探りでありつつも時に激しく、あぁこんなふうに誰かとぶつかったのはいつだったろうと、思わず目を眇めてしまう眩しさに包まれていた。何かに名前を付ける作業に少し疲れている、すべての人へ!

お気づきだろうか。
長文のコメントは採用される確率が低いのでは?と、二年間不採用だった理由を勝手にでっち上げた私が、短めのコメントを書こうとしている姑息さに。
私は姑息なコメント書いていますけど、『ブラブラ』は私にとって2021年を象徴する作品でもありました。
2021年、色々な角度で、色々な題材で、色々なやり方で”多様性”を訴えかける作品が出版されましたが、私はこの作品が単純に面白かったし、読む楽しさと、知る新しさ、そしてこちらに考えさせるメッセージ性のバランスがちょうどよいように感じました。
ちなみにコメントを読み返してみて、「眇めて」って何て読むのかわからなかったけど、「すがめて」です。難しい言葉を使おうとすな。ひーとみぃぃーすがめなァいでー…(ちがう

■3位投票
タイトル : 君の顔では泣けない
著者名 : 君嶋 彼方
出版社 : KADOKAWA
ISBN : 9784041117965

コメント : 男女入れ替わりモノに付随するいろんなイメージを、鮮やかに、新しい色に塗り替える。
ドフィクションの上に構築された物語でありながら、こちらの魂を震わせるのは主人公たちが直面する"リアル”。自分がどう生きればいいのかなんて、たとえ誰かと入れ替わらなくたって、そんなものはとっくにわからないのだ!生きるってなんだという命題を突きつけてくる作品。

これは10位以内に入るのではと思っていたので、17位で、うーん……。でも11位~16位の作品の層の厚さを目の当たりにして、仕方ないのかと思ったりもしました。11位以下を見るのが本当に面白いんだよ、本屋大賞は!!
ちなみにこちらは、出演しているテレビ番組でもあっつぃプレゼンをして紹介しましたが、あらすじのヒキの強さがすんごいんで、みんながみんな「めっちゃ読みたい!」って言います。本当です。うそじゃないです。

先日、投票者特典である、『本の雑誌増刊』が届きました。
2020年、2021年と、コメント採用率ゼロパーセントだった私ですが、なんと『やさしい猫』にて、コメントを掲載していただくことができました!!!!!!!!!!(情緒がおかしい)

これまでのほんま大賞を思うに、『そして、バトンは渡された』でも『熱源』でも『滅びの前のシャングリラ』でも、私のコメントが掲載されることはありませんでした。長くて、必要以上に個人の思い入れを語るようなコメントはそぐわないのだろうと理解しながらも、それでも「私はここにいるよ…!」と主張する自我との戦いでもありました。(何と戦っているのか)
今回『やさしい猫』でコメントが掲載されたことにより、書店員の皆さんから「ほんまさん載ってたよ!」「やさしい猫でコメント採用されてたよ!」とDMをいただいたりして、なんかもう、

みんなありがとう!

来年も投票します。もっちろん!


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